アートの字幕に挑戦 恵比寿映像祭が開幕
映像翻訳者の活躍の場は映画やドラマだけではありません。ときにはアート作品の字幕翻訳やナレーション翻訳を手がけることもあります。例えば東京都写真美術館が毎年開催している恵比寿映像祭もその一つ。このイベントでは映像作品の上映だけでなく、インスタレーションやライブパフォーマンス、トークセッションなどさまざまなアプローチでアートの可能性を探ります。今年は「惑星で会いましょう」というテーマのもと、未知の惑星を訪れるように新しい視点で映像と向き合うことを促す作品がラインナップ。JVTAでは、展示作品のうち、6点の字幕を担当しました。中にはセリフの脈略のなさによって不条理で不気味な印象を生み出すことを目的とする作品もあり、その雰囲気をいかに字幕でも伝えるかについて工夫が求められました。また、ヘッドセットを付けたり、マウスを操作することで字幕付きのドキュメンタリーを楽しむプレゼンテーション作品など、アートならではのスタイルも満載でした。
26日に恵比寿ガーデンプレイスで行われた特別鑑賞会には、展示作品の作家陣や関係者が訪れ、JVTAも一足先に会場の様子を見てきました。
JVTAが字幕翻訳を担当した『クラウズ』のブースには多くの人が集まっていました。この作品はデジタル文化に関わる40人以上のアーティストやデザイナー、ハッカー、思想家たちにインタビューした様子を、ヴァーチャル3D映像フォーマット(RGBD)で撮影しグラフィックアートと共に楽しむことができます。
ブースにはマウスで操作しながら鑑賞する2つの映像画面と、ヘッドセットとヘッドフォンを付けて楽しめるコーナーがありました。
ヘッドセットを付けるコーナーでは、頭を動かしながら映像上のサークルに視線を合わせることでクリックして映像を再生します。このインタラクティブなドキュメンタリー作品を一目見ようと列が途切れることはありませんでした。
実は本作でJVTAが翻訳した素材は238本もの膨大な音声データ。これに8名の修了生が2週間で字幕をつけました。会場に来ていたこの作品の作家のお二人ジョナサン・ミナードさん(写真右)とジェームズ・ジョージ(写真左)さんからは、翻訳を担当した皆さんへ「大量のデータを翻訳する作業は本当に大変だったと思います。字幕のタイミングがパーフェクトでした。Just thank you! 」というメッセージを頂きました。音声データのみで翻訳していた時は誰もこの完成形を想像できなかったはず。皆さんもぜひ会場で体感してみてください。
恵比寿映像祭は本日27日から恵比寿ガーデンプレイスほかで開催されます。
恵比寿映像祭 公式サイト
http://www.yebizo.com/
会場の様子を写真でご紹介します。