浅野忠信さんロングインタビュー 海外での活動と日本映画の魅力を語る!
映画『私の男』でモスクワ国際映画祭・コンペティション部門の最優秀作品賞と最優秀男優賞を受賞し、国内のみならず、世界でも高い評価を得ている浅野忠信さん。浅野さんはこれまで、ロシアのセルゲイ・ボドロフ監督作品『モンゴル』をはじめ、ハリウッド映画『マイティ・ソー』『バトルシップ』など多数の海外作品に出演しています。2015年は、ドイツの日本映画の祭典、ニッポン・コネクションや米・サンフランシスコの日本カルチャーの見本市、J-POP SUMMITに招かれました。そんな浅野さんに、J-POP SUMMITの会場でMTCのジェシー・ナスディレクターが独占インタビュー。海外での撮影秘話や日本映画ならではの魅力、海外の映画祭でのエピソードなどについてお話を伺いました。
ジェシー:浅野さんは、海外の合作映画などに数多く出演されていますが、初めて海外で撮影したのはいつでしたか? もともと海外の作品に出たいという気持ちはあったのでしょうか?
浅野さん:一番初めは僕が21歳くらいの時でした。その時は日本の映画で海外との合作ではなかったのですが、撮影がオーストラリアで。日本人は監督と助監督、カメラマン一人と俳優陣だけ、後はオーストラリアのクルーだったんです。この経験がとても楽しくて「映画のスタッフはどこの国の人でもいいわけで、こうやって海外の人と一緒に仕事をすることもできるんだな。またこんな経験をしたい」と思いました。
その後、香港のウォン・カーウァイ監督から日本のある洋服ブランドの短編を撮るというオファーを頂き、それはもう完全に香港のクルーだったんです。この撮影もまたすごく面白くて。僕の場合、自分が海外でやってみたいと思っていたというよりは、こういう機会をいろいろ頂けて、やっていくうちにその魅力を知り、どんどん海外での仕事が増えたという感じです。自分でも不思議でしたね。
ジェシー:具体的にどんなことが楽しかったのですか?
浅野さん:同じ日本人の中でもさまざまな人がいますが、やはり日本人ならではの気持ちの持ち方というか意識は似ている部分がありますよね。でも一歩海外に行ってみると、その感覚とは全然違う意識で映画の現場にいるわけです。同じ映画作りでもこんなにも違うアプローチがあると分かった時に、気持ちが自由になったというか。こんな考え方を持ってもいいんだなと。
ジェシー:JVTAでは多くの日本映画に英語の字幕をつけて海外に発信していますが、浅野さんが思う日本映画の魅力は何でしょうか?
浅野さん:日本映画の持ついいところ…。何ですかね…。僕は日本人だからそういうところは客観的に見ていなかったのかもしれません。僕が好きな80年代、90年代に作られた日本映画で言わせてもらえば、日本には4つの季節が分かりやすくあることだと思います。季節の風や匂い、音、風景といった心地よさが映画に詰め込まれていると、とても日本の情緒がでてくる。これは日本ならではかもしれません。映画館の中では感じることができない風や匂いを映像から感じることができますよね。例えば日本の夏なら、風鈴の音やセミの声とか。
僕が思うには、日本は島国ですから、陸が続いている国と違い、一歩外にでたら海しかないので、どうしても孤立してしまう。孤立した状態にいると外に向かうよりも自分の中に広がっていくんですよね、何かが…。その奥行きを感じてほしいですね。僕らは外に向かって手を伸ばさずに自分の中を深く掘り下げていく。そこが本当に面白いと思います。
ジェシー:ご自身の映画を海外で上映した時、観客の反応は日本と違いますか?
浅野さん:そうですね、違うと思います。日本の文化を知らないとよく分からないシーンがあるはずなのに、なぜか日本人以上に楽しんでいると感じることがあります。例えば日本人とは、笑う場所が全然違うことがある。「なんでこのシーンで笑ったんだろう?」と(笑)。
例えば昨日も、外国人の方が僕の『SURVIVE STYLE5+』という映画がとっても好きだと言ってくれて…。あの映画が持つ独特でユニークなポイントを気に入ってくれたのかなと思いました。あの作品は本当に海外の人に評判がいいんですね。日本だったら他の作品のほうが注目されるのに。『SURVIVE STYLE5+』が海外の人たちに本当に伝わっているということは、やはり日本人とは受け取り方が違うのかなと感じます。
ジェシー:海外のファンとのエピソードがあれば教えてください。
浅野さん:スペインのシッチェスという町の映画祭に行った時、僕はスペインが初めてだったので、僕のことは誰も知らないと思っていました。そこで映画祭会場から少し離れた駅から電車に乗ってバルセロナに遊びに出かけました。しかし、シッチェスに帰ってきて駅を出たら、いきなり高校生くらいの若者たちに囲まれてしまったんです。「やばい! お金取られるのかな」と思ったら、彼らがみんなして僕の映画『殺し屋1』のパンフレットを差し出して「サインをくれ!」と言われて…。「え~っ。こんなスペインの田舎町に僕のファンがいるんだ!」とすごく驚きました。(笑)。しかも若者で、1人じゃなくてグループで来てくれたのが嬉しかったですね。
ジェシー:今までさまざまな役を演じていらっしゃいますが、今後、挑戦してみたい役はありますか?
浅野さん:アメリカやヨーロッパの映画には作品の中にユーモアが込められていますよね。ちょっとしたところでクスっと笑えるなど、なんかこう共感できるような人間の滑稽な部分が描かれていますが、日本の映画ってわりとそれが少ないかなと僕は思っています。だから日本人も持っているユーモアや人間の独特なおかしさというものをちゃんと描いた日本の映画をやってみたい。僕は今年42歳なんですが、40代の男がちょっとおかしなところもあって生きている瞬間が描かれている役を演じてみたいですね。
ジェシー:J-POP SUMMITの会場で何か気になるイベントはありましたか?
浅野さん:今回は、本当に沢山の方とお会いしました。お笑いのコントを観たり、僕が昔から見てきたアニメソングを歌っているJAM Projectのライブを聞いたり…。また、イラストレーターの中村佑介さんにもお会いして絵を描いてもらいました。面白い方が沢山いらしたので、日本に帰ったら、皆さんのことをまたチェックしなおしたいと思っています。
ジェシー:最後に海外のファンの方にメッセージをお願いします。
浅野さん:海外の方が、こうして日本の文化に興味を持ってくださることはとてもありがたいです。僕らも沢山の方に届いているということを自覚して、より面白いものを作れるように努力したいと思います。どうかこれからも注目してほしいですね。
ジェシー:ありがとうございました!
浅野さん:ありがとうございました。
★浅野さんが登壇したオープニング上映『ELECTRIC DRAGON 80000V』の様子はこちら
https://www.facebook.com/JvtaTokyoLa/posts/978604565512496
★浅野忠信さん 公式サイト
http://www.anore.co.jp/artist/actor/asano/
★J-POP SUMMIT 公式サイト
http://www.j-pop.com/