5つのキーワードからひも解く “難民映画祭”注目のラインナップ
今年で10周年を迎える「難民映画祭」が10月2日(金)の東京での上映を皮切りに、札幌・仙台の計3都市で順次開催されます。“難民”と呼ばれる、困難を生き抜こうとする人々に焦点をあてた映画祭では計10本の作品を上映。私たちの想像を超えるようなテーマが、続々と登場します。
そこで、5つのキーワードから同映画祭の作品内容にフォーカス。あなたが気になる作品はどれですか?
キーワード1「強い絆」
人と人の繋がりが、苦境を乗り越える助けとなる
『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』
「スーダン内戦」で両親や家を失った子どもたち“ロストボーイズ”を全米各地へ移住させるという、実際に行われたプロジェクトを基にしたドラマ作品。●米・ミズーリ州の職業安定所で働くキャリー(リース)の新しい任務は、スーダンから来た青年・マメールら3人に仕事をあっせんすること。電話機を見るのが初めてで、マクドナルドもピザも知らない彼らに驚くキャリーだったが、次第に友情が芽生え、自身の生き方にも変化が現れる。
監督/フィリップ・ファルドー 出演/リース・ウィザースプーンほか
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=ShoiDrycTq8
『アントノフのビート』
北アフリカ・スーダンの“青ナイル州”と“ヌバ山脈”の地域で暮らす人々の視点から内戦の全容を映し出すドキュメンタリー。
監督/ハジュージュ・クカ トロント国際映画祭2014観客賞受賞
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=fi3ronTd3xg
キーワード2「真実の愛」
愛を信じるがゆえに、“難民”となる人々がいる
『ホープ』
サハラ砂漠をさまようカメルーン人青年と性暴力から逃げてきたナイジェリア人女性の過酷な愛を描くドラマ作品。●ヨーロッパを目指して砂漠を進む青年・レオナールは、警察に性的暴行を受けたナイジェリア人女性・ホープを救出する。暴力が支配する世界から逃げ出すため行動を共にする二人はやがて惹かれ合い、スペインの近くまでたどり着く。だが、彼らを待っていたのは過酷な運命だった。
監督/ボリス・ロジュキーヌ カンヌ国際映画祭2014批評家週間SACD賞受賞
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=Fycw0Q0ahlo
『忌まわしき罪』
同性の性行為を違法とするジャマイカが舞台のドキュメンタリー。レズビアンのシモーヌとゲイの活動家・モーリス。二人は祖国にとどまるか、外国に逃れるかという選択を迫られる。
監督/マイカ・フィンク
予告編:https://vimeo.com/58133687
キーワード3「運命と闘う女性たち」
国の伝統や父権主義に対峙する女たちの物語
『ボクシング・フォー・フリーダム』
アフガニスタンの女性ボクサー、サダフ・ラヒミに密着するドキュメンタリー。●幼い頃に家族と共にイランに逃れ、9年間の避難生活を送っていたサダフはそこでボクシングに出合う。帰国後、本格的にボクシングを始めた彼女を待っていたのは冷たい視線や暴言、鳴り続ける脅迫電話だった。伝統的に女性の地位が低いアフガニスタン社会の中で、スポーツと学業を両立させようとするサダフの“拳闘”を追う。
監督/ホアン・アントニオ・モレノ・アマドール、シルビア・ベネガス・ベネガス
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=rMqUxFYWupM
『三つの窓と首吊り』
紛争終結から1年後のコソボの女性たちを描くドラマ作品。ある女性の告白をきっかけに、バルカン半島の小さな村で波紋が起き始める。
監督/イサ・チョシャ
予告編:https://vimeo.com/101957640
キーワード4「静かな戦い」
銃ではなく、カメラや言葉を武器に不条理と戦う
『ヤング・シリアン・レンズ』
シリア北部の都市・アレッポの悲惨な日常を、同国の“メディア・アクティビスト”たちの視点から切り出すドキュメンタリー。●シリアの反体制抵抗運動の一端を担うようになった、ある若者たち。彼らが武器として選んだのは自動小銃「AK-47」ではなく、カメラと情熱だけだった。映画取材班は「市民メディア」の活動に情熱をそそぐ青年たちに密着。苛烈を極めるシリアの現実を共に体験する。
監督/フィリッポ・ビアジャンティ、ルーベン・ラガットッラ
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=SbYr9q0Jl8o
『トランキランディア‐穏やかなる土地』
南米・コロンビア北部の農民たちの苦難に迫るドキュメンタリー。彼らはある理由から、断続的な暴力の標的とされていた。
監督/ジョエル・スタングル
予告編:https://vimeo.com/88749587
キーワード5「日本人監督の難民映画」
決して他人事ではない、“難民”というテーマ
『人の望みの喜びよ』
震災で両親を失ったある姉弟の揺れ動く心を描くドラマ作品。●突然、街を襲った大地震。須藤家は倒壊し、春奈の両親は他界。幼い弟の翔太はけがを負いながらも運よく助け出された。ほどなく、二人は親戚の家に引き取られ新たな生活を始めるが、春奈は両親の死を知らない弟に真実を伝えることができなかった。日に日に両親への思いを募らせる翔太に罪の意識を感じる春奈は…。
監督/杉田真一 出演/大森絢音 大石稜久 吉本菜穂子 西興一朗 大塲駿平ほか
第64回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門スペシャルメンション受賞
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=wX45CgNvpas
『目を閉じれば、いつもそこに~故郷(ふるさと)・私が愛したシリア~』
終わりのない紛争によって帰る場所を無くしたシリアの人々を追うドキュメンタリー。紛争の裏側にある現実と、彼らの思いを伝える。
監督/藤井沙織
作品詳細:http://unhcr.refugeefilm.org/2015/film_info_syria/
トークイベント:http://unhcr.refugeefilm.org/2015/guest_director_fujii/
JVTAではこれら作品の字幕制作をサポート。10周年という節目を迎える今回も、およそ40人の修了生が字幕制作ソフト「Babel」を使って、作品の言葉の壁を取り払っています。映画を観て、“難民”という言葉に対する心の壁も取り払えれば、より豊かな未来が私たちを待っているのかもしれません。詳細な上映日時は公式サイトを参照してください。
第10回UNHCR難民映画祭
http://unhcr.refugeefilm.org/2015/