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ハリウッドの映画製作現場でプロデューサーとして活躍! 【LA校修了生】キム・クデさんインタビュー

ハリウッドの映画製作現場でプロデューサーとして活躍! 【LA校修了生】キム・クデさんインタビュー

ロサンゼルス校の修了生、キム・クデさんは、現在ハリウッドの映画製作現場でプロデューサーとして活躍中。7月30日(月)からは、キムさんが製作に参加したホラー映画『ゲヘナ〜死の生ける場所〜』が東京で上映されます! この作品の日本語字幕をJVTAの修了生5名が担当しています。高校とカレッジで映画製作に携わったキムさんですが、アメリカで初めて就職したのは会計事務所。監査業務でキャリアを積むなかで、JVTAのロサンゼルス校に通い始めました。その後、キムさんはJVTAで何を学び、誰と出会い、今のキャリアにたどり着いたのでしょうか? 「JVTAがなければ今の私はいない」というキムさんにお話を伺いました。

 
JVTA 高校、大学と映画製作に取り組んでこられましたが、就職は会計事務所。映画とは接点がなかったんですね。

 
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キム・クデさん 映画製作に初めて携わったのは、高校2年の時です。交換留学生として初めて渡米し、ラスベガスの高校に1年通っていた時期でした。帰国から1年後、再びロサンゼルス郊外のコミュニティカレッジに入学。映画製作を学びながら多くの仲間と出会い、お互いにインスパイアを受けました。ところが、コミュニティカレッジの2年目、AFIやUSCなどの米国のトップフィルムスクールで学び、あこがれていた先輩たちがビザの関係で次々に帰国。そこで私はまずアメリカで仕事をしていく土台を作りたいと考え、外国人でもアメリカで認められる特殊技能を身につける必要性を強く感じるようになりました。

 
大学卒業
※大学を卒業した頃のクデさん

 
移民専門の弁護士の先生に相談したところ、「H-1Bビザを取得するには、専門職、特に会計士等がいい」とアドバイスされたことをきっかけに、残りの2年は専攻を会計学に変えて、とりあえず、アメリカに残るための学位取得を目指しました。結果、卒業後は会計事務所に就職したんです。主に監査業務を担当し、そこでH-1Bビザも取得できました。結果的に監査の仕事は6年弱続けて、マネージャーにもなりました。

 
JVTA まずはアメリカで生活の拠点を確保し、仕事でキャリアを積んだんですね。このころ、JVTAを見つけたとか?

 
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JVTAロサンゼルス校の相原拓ディレクター
ゲヘナの日本語字幕を担当した修了生のイング翼さんと福田祈さん
監督の片桐裕司さん、プロデューサーのキム・クデさん

 
キム・クデさん 28歳のころ、所属する会計会社からグリーンカード取得サポートのお話を頂きました。有難いお話だったのですが、この頃の私は、30歳を前に本当にここで人生を決めていいのか、映画関連に携わる夢はもういいのかと悶々としていたんです。その時期に出合ったのがJVTAでした。英語と日本語ができるスキルを生かして、何か映像関連に携わりたいと興味が沸いたんです。友人が通っていたこともあり、日英映像翻訳を学ぶことにしました。

 
JVTA 実際に学んでみていかがでしたか? どんな講義が印象に残っていますか?

 
撮影現場にて
※撮影現場にて

 
キム・クデさん 一番強く覚えているのは、ジョナサン・ホール講師の言葉です。それは、ある邦画に英語字幕を付ける講義でした。3人の少年たちが「テレビ、テレビ」と言いながら路地を走っていくシーンで、私は“It’s Coming! It’s Coming!”という字幕を作りました。それを見たジョナサン講師に「明らかにテレビ、テレビと言っているのに、なぜこうしたの?」と聞かれたんです。

 
昭和テレビ
実はこれは昭和の物語で、この後少年たちは電気屋さんの店頭にテレビの放送を見に行くんですね。だからこのカットで初めて「テレビに興奮していたのか」と明らかにしたほうがいいと私は考えたのだと説明しました。すると、「君は完全に考え方がクリエーターだね。映画を作る側の発想をしている」と言われたんですね。このジョナサン講師の言葉が私にガツンと響きました。「私やっぱり、映画を作りたかったんだ!」と気づかされたんです。これが、私が映画製作へと舵をきる大きな理由になりました。

 
JVTA  JVTAで字幕作りをしたことが、また映画に向き合うきっかけになったんですね。

 
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※JVTAはLA EigaFestやJapan Film Festivalをサポートしています

 
キム・クデさん そうですね。その後、アメリカで開催されている映画祭、LA EigaFestやJapan Film Festivalで、日本の映画に英語字幕を付けるという体験をしました。その際、私自身も会場に行き、映画祭を主催や支援をする企業の方にお会いする機会に恵まれたんです。当時、ラッキーなことに、日本映画や映像コンテンツの海外展開の支援をしているユニジャパンが奨学金の制度を設けていました。まさに、Everything happens for a reason、これで怖気づいてやらなかったら一生後悔する…。そこで会計事務所のグリーンカードのオファーを断り、奨学制度でAmerican Film Institute (AFI)を目指し、もう一度映画づくりを学ぼうと決意。30歳になる前に軌道修正をしたいという時期だったので、自分にとってもいいタイミングでした。

 
JVTA まるでシナリオができていたかのような流れですね。AFIではどんなことを学んだのですか?

 
撮影現場にて2
※撮影現場にて

 
キム・クデさん AFIには2014年から2016年にかけて2年通い、プロデューシングを学びました。私がまだ日本にいた時は、映画づくりの世界では監督の存在感がとても強く、製作の最高責任者であるようなイメージを持っていましたが、ただ私はいつもアカデミー賞授賞式を見る度になぜ作品賞はプロデューサーが受け取るのだろう?と疑問に思っていました。これをAFIでは論理的にきちんと理解することができました。プロデューサーが、面白いアイディアを見つけ、芸術的、経済的視点から企画として開発するべきか検証し、パッケージング(企画書)を作成する。ありとあらゆるコネクションを使って、スタジオや投資家、そして配給/配信先へのピッチの機会を作り、一度しかない機会で確実に企画を売り込む。関係者がその企画にグリーンライトを点けると、そこで初めて監督へ企画が託され「製作」が始まる。後は、総合責任者として予算管理、クオリティー管理をして、観客に作品を届ける。企画を立ち上げてから、実際に観客の皆さんに見てもらうのは数年後。その頃の世界の市場やトレンド、配給/配信媒体を予測して、ターゲットは北米のみなのか、日本、国際的なマーケットでも公開するのか、それによって企画開発の方針や製作規模が左右されます。結果的に会計の仕事をしていたことも大いに生かせていますね。プロデューサーの判断ひとつで、莫大な費用と多くの人が動きますから。

 
キム・クデさんによる『ゲヘナ〜死の生ける場所〜』のプロデュースの様子はこちら
https://www.jvta.net/tyo/gehenna-tokyo-screening/

 
JVTA 字幕を学んだことが、プロデュースにも生かせているとか。

 
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キム・クデさん はい、字幕作りを学んだことが、脚本作りに役立っています。脚本を作るうえで大切なのは、極力、不必要なセリフを入れないこと。映画にはフレームの中にお金や労力をかけて作っているところがたくさんあります。つまり、字幕を読むことだけに集中してほしくないんです。でも、セリフがある以上、映像翻訳者は字幕を勝手に削る訳にはいきませんよね。もちろん、キャラづくりやセリフまわしなども考えないといけない。無駄なセリフがあることで字幕のハコが必然的に増え、それを読むほうに観客の気持ちがいってしまう。これはJVTAで字幕を勉強したことでよく分かりました。読むことに集中させたり、考えさせたりする字幕はNGですよね。

 
現場PC

 
脚本は建築物でいうなら骨組みですから、それで面白いかどうかが全部決まってきます。実は脚本の執筆ってすごくシステマティックにシーンを組み替え、取捨選択をしていく作業なんです。それぞれ脚本家やプロデューサーさんのスタイルはあると思いますが、私は特に建設的に脚本を構成します。DVDで、早送りや観たいシーンを選びたいとき、メインページでシーンを選びますよね? そのときにそれぞれのシーンにタイトルがついてると思うんです。それを繋げると、話の「ビート」の流れが見えますよね。これがすごく重要で、「タイトル」がつかないシーンって本当に必要なの?っていつも考えるんです。無駄なシーンやセリフを極力減らす。言葉じゃなくて、「画」や「間」、「演技」、「カメラワーク」、「フレーム」や「美術」、そして「音」で物語を伝える。そのひとつ一つの選択に経済的な狙いや、芸術的な狙いが入っています。その感覚がマッチした脚本家を見つけ、執筆パートナーとしての彼らの能力を最大限に引き出して、共によいものを完成していくことが必須です。

 
JVTA 脚本をつくる段階から字幕の見え方まで意識しているんですね。

 
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キム・クデさん 現在、外国人に向けてサムライのテレビドラマを企画中ですが、セリフは全部日本語で話し、英語字幕付きでいこうと思っています。世界には日本人が思う以上に侍が好きな層はたくさんいます。人気ドラマ『ウエストワールド』でも真田広之さんなど侍のシーンがでてくるだけでツイッターがバズるんですよ。時代劇こそ、殺陣や美術、衣装など見てもらいたいこだわりがたくさんあるので、製作側は字幕への抵抗があります。それを脚本段階でどこまで打破できるか、解決策は何なのかを頭に入れながら作る。こういう考え方ができるのはJVTAで字幕を作る立場を経験したおかげなんです。脚本の段階である程度、精査されていればより無駄のない字幕が作れます。ただ、時代劇は時代設定もあり、セリフ自体が説明口調じゃないと伝わらない部分もあります。それが過剰になると小説を読んでいるようになってしまう。そのバランスをうまくとってどう見せていくかが、脚本家とプロデューサーの腕のみせどころだと思います。脚本家のパートナーにも「ここまで明確に字幕のことを考えてコメントを出してくるプロデューサーはいなかった」と言われます。映画の見せ方やマーケットを考えていくなかで、字幕にそれだけ意識がいくのは大きな強みだと思っています。

 
JVTA 同じ時代劇でも日本とアメリカでは違いがありますか?

 
カット
※打ち合わせの現場にて

 
キム・クデさん 私は京都で育ち、子どものころから時代劇を沢山見てきました。日本の伝統的な作品は、長撮りのワンテイクで俳優さんが斬り込んでいくのを1台のカメラがフォローするといった撮り方です。一方アメリカでは、同じ動きを、複数のカメラで違うアングルからいくつも撮って編集で格好よく見せます。同じ殺陣というパフォーマンスでも、カメラの動きや編集での見せ方が全然違うんですね。それはこちらに来て目の当たりにしたからこそ、気づいた新しい格好良さでした。私がこちらの市場向けに作るならハリウッド的な方が躍動感や緊張感は伝わりやすいのかもしれません。こういう見せ方の場合、できるだけセリフを減らしてカメラワークで見せたいですよね。

 
JVTA 確かにアクションなどは字幕を読んでいる余裕がない。少ない字幕で効果的に見せる工夫が求められますよね。今後はどんな作品を作っていきたいですか?

 

製作スタッフと2

 
キム・クデさん 今自分の中のリストにあるのは、幼少期に読んだ日本のマンガや小説など、多感な時に自分が触れて影響を受けたもの。こうした作品に、私と同じように「あれいいよね!」と目を輝かせる外国人が意外と多いんです。これって実は結構大きな市場なんじゃないかと。80年代後半から90年代、日本には、マンガや音楽、アニメなどの大衆娯楽がたくさんありました。まだ作品を見られる媒体が少なくて、みんなが同じものを見たり聞いたりしていた時代ならではの熱狂だったと思います。作り手としては、こうした大衆を夢中にさせるパワーは憧れですね。学ぶところがたくさんあるし、日本人ならではの見せ方で海外に紹介していけたら嬉しいです。

 
JVTA キムさんが製作に携わり、JVTA修了生が日本語字幕を手がけた『ゲヘナ〜死の生ける場所〜』がいよいよ7月30日(月)から東京で上映! こちらも多くの方に見てほしいですね。今後の作品も楽しみにしています。ありがとうございました。

監督ダグさんクデさん
※左から片桐裕司監督、ダグ・ジョーンズさん、キム・クデさん

 
キム・クデさんがプロデューサーとして参加!
『ゲヘナ〜死の生ける場所〜』公式サイト
http://gehennafilm.jp/
ゲヘナチラシ

 
『ゲヘナ〜死の生ける場所〜』
監督・脚本:片桐裕司
出演:エヴァ・スワン、ジャスティン・ゴードン、サイモン・フィリプス、ショーン・スプローリング、マシュー・エドワード・ヘグストロム/ダグ・ジョーンズ/ランス・ヘンリクセン
原題:『GEHENNA: WHERE DEATH LIVES』
製作:2016年/アメリカ
配給:ファイブツールデザイン
©Hunter Killer Studio

 
公式サイト
http://gehennafilm.jp/

 

2018年7月30日(月)より渋谷ユーロライブにて公開
東京上映の詳細はこちらをチェック!
http://gehennafilm.jp/events