【恵比寿映像祭】アートの真意を 伝える字幕作りとは
2月11日(木)、恵比寿映像祭がスタートしました。恵比寿映像祭はアートと映像の国際フェスティバルで、映像作品の上映に加え、オブジェやインスタレーションの展示、トークセッション、音楽やダンスのパフォーマンスなどさまざまなジャンルの作品が紹介されています。JVTAは毎年このイベントに協力しており、今年は8名の修了生が、7本(上映作品1本と展示作品6本)の映像作品の日本語字幕を担当しています。
今回は長編の上映作品、『トラブルメイカーズ ランドアートの話』をご紹介します。ランドアートとは、1960年代末から70年代にかけて出現したアートのジャンルのひとつで、土や石、砂など自然にある素材を使って砂漠や平原などに作品を作り上げていくものです。この作品は、ランドアートとは何かについて深く掘り下げていくドキュメンタリー。ロバート・スミッソンやマイケル・ハイザー、ウォルター・デ・マリア、ナンシー・ホルトなどランドアートを代表するアーティストたちに焦点をあて、彼らの傑作の数々を映像で紹介するほか、当時を知るギャラリー関係者のインタビューなどで構成されています。
日本語字幕を担当したのは修了生の尾形邦子さん。美術館が大好きで日ごろから良く足を運ぶという尾形さんは、この仕事を依頼された時、「尺も長いし難しそうだけどぜひ挑戦してみたい」と思ったそうです。しかし、セリフが多い上に抽象的な表現が多く、翻訳には苦労したとか。具体的なエピソードを聞いてみました。
★“知識は自分を助けてくれる”
一番苦労したのはアーティストやキュレーターなど、登場人物たちの一種哲学的な発言の真意をくみ取ることでした。現在通信制の大学の教養学部で勉強しているのですが、その中の芸術理論について学んでいたことが、多少なりとも翻訳を進める上で役に立ったように思います。ランドアートの第一人者であるロバート・スミッソンについても少し学んでいたので、訳に取り組む前に、少しは知っていることもあるとわかり、ほっとしました(笑)。アートについての考え方などを講義の中で学んでいたことは、彼らの言葉のニュアンスを理解する助けになりました。またその作品が作られた時代背景なども調べて、とにかく話者が言おうとしていることを、出来る限り字幕に乗せられるように心がけました。翻訳者はどんなジャンルの作品を担当するかわかりませんので、常にさまざまなことにアンテナをはっておくことが大切です。以前、ある英語の学校で聞いた「知識は自分を助けてくれる」という言葉をまさに実感しました。
★定訳やテロップの訳のためにリサーチを重ねた
テロップも多く、作品名も多く出てくるので定訳などをしっかり調べる必要がありました。私自身、美術館のキュレーターによる講演などを聞きに行くことがあるのですが、その際に教えてもらった資料やウェブサイトを見るなどしてリサーチを重ねました。例えば、マイケル・ハイザーの作品名「ベルンのくぼみ」という定訳もこのようにして見つけた1つです。もともと美術館が好きで個人的に見ていたウェブサイトや書籍が翻訳に活かせました。
★都会の映画館で壮大なランドアートを観られる!
自然に手を加えるということで、ランドアートは環境破壊とみなされることもありますが、この作品では、アーティストたちが何を思ってその作品を作ったのか、その背景を知ることができます。また、砂漠や海に広がる壮大な作品を空から映した映像がとてもきれいです。実際にはなかなか見に行けないランドアートの代表作の数々を都会の映画館で観られるというのも、見どころの1つだと思います。私もランドアートを見に行きたくなりました。(砂漠にはそう簡単には行けませんが…笑)
『トラブルメイカーズ ランドアートの話』作品の詳細
http://www.yebizo.com/#pg_gardencinema-screen3
恵比寿映像祭 公式サイト
http://www.yebizo.com/