今注目の監督を輩出するSKIPシティ国際Dシネマ映画祭 英語字幕で世界に発信!
デジタルで撮影・制作された作品のみにフォーカスした国際コンペティション、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が7月16日に開幕します。この映画祭は、若手映像クリエイターの登竜門としても知られており、未来の巨匠の作品に出会えるのが最大の魅力です。2009年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』でSKIPシティアワードを受賞した白石和彌監督はその後、山田孝之さん主演『凶悪』で国内の多くの賞を受賞。さらに6月3日から世界一斉配信中のNetflixオリジナルドラマ『火花』や、現在劇場公開中で綾野剛さん主演の『日本で一番悪い奴ら』などを手がけています。また、SKIPシティでは映像関連の作家やアーティストのためのオフィス施設を併設し、新進気鋭のアーティストのサポートにも力を入れています。現在、元入居者の真利子哲也監督の最新作『ディストラクション・ベイビーズ』がヒット中。柳楽優弥さん、菅田将暉さんら若手俳優が出演し、激しいバイオレンスアクションが話題を呼んでいます。JVTAは今年も字幕の制作でサポート、長編5本、短編9本、アニメ1本の英語字幕を修了生14人が担当しています。
こうした映画祭は映像翻訳者にとっても実践的な経験を積める貴重な場です。そのためJVTAではこの映画祭で上映される作品に字幕を付ける英語字幕PROゼミを開催しています。英語字幕PROゼミとは、映画祭などで上映予定の作品にゼミ形式で字幕をつけるものです。日英映像翻訳科の講義を担当するMTCディレクターから2度のフィードバックを受けながら上映用の字幕を仕上げていきます。
今回の2本の課題作品のうちの1つは、結婚式を舞台にした映画撮影中に起こるハプニングを捉えた短編コメディ映画『テイク8』(上田慎一郎監督)※写真。上田監督はこれまで12本の映画を制作し、国内で30以上の映画祭で入選・受賞を果たしています。
★PROゼミで講師を務めるジェシー・ナス講師による2度目のフィードバックを覗いてみました。皆さんなら下記のセリフにどんな英語字幕を付けますか? 一緒に考えてみてください!
(売れない映画監督である娘の恋人に問いただす父親の一言)
◆養えんだろう、バイトで。
不幸にする気か、子どもを。
How can kids be happy with your wage?(受講生の字幕)
ジェシー講師 be happy withには「幸せ」よりも「満足する(be satisfied)」というニュアンスがあります。この言い方だと「子どもたちが君の給料に満足している」という感じに見えます。「養う」というイメージなら下記の方が自然な表現だと思います。
How can you support kids with your salary?
(稼ぎのない映画監督と結婚しようとし、「私が女優を辞めて働く」という娘への父の一言)
◆何だよ、お前、お前がバイトするのか?
Will you work for him? (受講生の字幕)
ジェシー講師 この言い方は間違いではありません。でも少し違和感があります。この表現だと「彼が彼女のボスで彼のもとで働く」というニュアンスにとれます。彼の代わりに彼女が働くというのなら下記のほうが伝わりますよ。
Will you support him?
(何度もシーンを取り直す場面での監督のセリフ)
◆はい、本番。
Let’s take another action. (受講生の字幕)
ジェシー講師 Takeは動詞ではなく、英語では1 take、2 takesなど名詞で使うほうが自然です。ネイティブならきっとこう言うでしょう。
Let’s do another take.
こうしてフィードバックでは、「決して難しい表現ではないけれど、ネイティブには違和感がある」という表現を、より自然な英語にしていきます。実際にPROゼミに参加した皆さんにも感想を聞いてみました。
◆草野花恋さん
お仕事を頂くようになって以来、久し振りにPROゼミに参加したのですが、思っていた以上にとてもよい勉強になりました。チーム内での意見交換や講師からの指摘は忘れかけていた基礎の確認にもなり、気持ちも新たに今後のお仕事に生かしていきたいと気が引き締まりました。修了生のトライアル対策としてだけではなく、合格後してプロとして活活躍中の人にもとてもお薦めできるゼミだと思います。
◆岩﨑悠仁香さん
今回のPROゼミで、リライトを繰り返して推敲することの大切さとグループ作業の相互チェックの効果を学びました。私たちが担当した『テイク8』は、花嫁の父親と、その義理の息子の対立がコミカルに描かれた短編。英語字幕で特に苦戦したのが、「はい」という言葉が何度も続いて会話がチグハグになる場面です。一つひとつの日本語の「はい」のニュアンスを考えて「Yes」「Right」「(Ready)Action」「Sorry」などと、言葉を使い分けるだけでなく、会話全体がスムーズな流れになるよう何度も書き直しました。2度のフィードバックを受けてリライトすることで、字幕の精度を上げていく過程を学びました。見直す度にもっと良くできる部分が見つかり、最終稿では初稿からグッと進化したように感じました。次回のトライアルでは、少しレベルアップした“字幕力”を活かしていこうと思います!こうして作り上げた自分たちの字幕がスクリーンに映し出されると考えると、胸のドキドキが止まりません!
◆Y・Iさん
やはり、チームの方からのフィードバックで気づくことが多く、他の人の訳を見るのもとても新鮮でした。今回私が担当したパートの一部のセリフに2通りの解釈があることに気付いたのは目から鱗でした。1人で作業していたら、気付かなかったと思います。試行錯誤を重ねた部分は、やはり文字数です。いかに文字を減らすかはどの素材でも毎回頭を悩ませる部分ですが、今回も最後の最後までとても苦労しました。授業から離れてしまうとなかなかじっくりと勉強する機会はありませんが、こういったゼミで頭の体操をするのはとても大事で新鮮だと改めて思いました。
『テイク8』
2015年/日本/19分
監督:上田慎一郎
出演:芹澤興人、山本真由美、牟田浩二、山口友和、細川佳央、福島龍一、北井敏浩、曽我真臣
(C)八王子日本閣
『テイク8』の詳細・上映スケジュールはこちら
●http://www.skipcity-dcf.jp/films/short03.html#s_08
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭
7月16日(土)スタート
公式サイト http://www.skipcity-dcf.jp/