国連UNHCR難民映画祭が始動! 今年の見どころを一挙紹介します!
国連UNHCR難民映画祭が今年も9月末から11月中旬にかけて開催されます。今年で12年目を迎えるこの映画祭は、国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所とUNHCRの日本での公式支援窓口である国連UNHCR協会が共催で、難民問題をより多くの人に広く知ってもらうことを目的に行っているもの。JVTAはその趣旨に賛同し、第3回から字幕制作でサポートしており、毎年多くの修了生が協力しています。今年は全13作品のうち、10作品の字幕を42人の修了生が担当しています。8月1日に公式サイトがオープン、東京でのプレ上映会と記者会見が行われ、JVTAの修了生が字幕を手がけた『シリアに生まれて』が先行上映されました。
JVTAでは6月末から字幕制作がスタート。同映画祭を担当する国連UNHCR協会広報の難波紘子さんをお迎えし、勉強会を行いました。毎年ライフワークとして参加している修了生もいるのがこの映画祭ならではの特徴です。今年の上映作品の傾向や特徴を難波さんに聞きました。
難波紘子さん
国連UNHCR協会 広報
テーマは「観なかったことにできない映画祭」
今年は日本初上映11作品を含む13作品を上映します。全体的にシリアに関する作品が多くなっています。また、ジャーナリストやテレビ局が撮影したものだけでなく、紛争地にいる一般市民が自らスマートフォンなどで撮影した最前線の映像を使用した作品が増えているのも特徴です。今年は、東京、札幌、名古屋、大阪、福岡、広島の6都市に上映会場が拡大しました。全6都市で上映される5作品をご紹介します。
◆『シリアに生まれて』
(c) 2016 Contramedia Films / La Claqueta PC
シリア出身の子どもたち7人を追ったドキュメンタリー。全員がシリアを離れ、長く過酷な日々を乗り越え、ヨーロッパや近隣国に避難しています。シリア難民の子どもたちの現状がよく分かる作品です。
◆『神は眠るが、我は歌う』
©Amin Khelghat
イランで国内の女性に対する弾圧や人権侵害を批判する作品を発表し、当局から死刑判決を受けたミュージシャン、シャヒン・ナジャフィ。2005年にドイツに逃れ、暗殺の恐怖と闘いながら音楽活動を続ける姿を捉えています。音楽好きの人にも楽しんでもらえる作品です。
◆『私たちが誇るもの ~アフリカン・レディース歌劇団~』
アフリカ各地から暴力や性搾取を逃れ、オーストラリアに来た女性4人の物語。自らの過酷な体験を舞台にすることで周囲の理解を深めていきます。女性のしなやかな強さを感じられる作品です。
◆『とらわれて ~閉じ込められたダダーブの難民~』
© Life Is My Movie
日本ではあまり報道されていない、世界最大級の難民キャンプ、ダダーブ・キャンプの現状が収められています。難民である若者がそこでどのように暮らしているのか? 難民や支援者、研究者らの語りを通して分りやすく説明しています。難民問題に関心がある中学生・高校生にもぜひ観てほしい作品です。
◆『ナイス・ピープル』
©Thelma/Louise
ソマリア難民の青年たちがスウェーデンで「バンディ」という氷上スポーツを通して、地元のコミュニティに受け入れてもらえるよう、挑戦していくというドキュメンタリー。青年たちの頑張る姿を応援したくなるので、これまで難民問題に馴染みのない人にも観ていただきやすい作品です。
今後日本で劇場公開を控えた2作品を日本で初上映!
東京のみですが、今後日本で劇場公開が決まっている2作品を先行上映致します。オープニング作品『ウェルカム トゥ ジャーマニー(仮)』は、ヨーロッパで最大の難民受け入れ国であるドイツで400万人以上を動員した話題作です。ドイツ人一家が難民申請中のナイジェリア青年を家に受け入れたことから起こる騒動を描きます。2018年正月第2弾として、シネスイッチ銀座にて公開予定です。
©2016 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG / SENTANA FILMPRODUKTION GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH
また、フィンランドの巨匠、アキ・カウリスマキ監督が手がけた難民3部作の2作目にあたる作品『希望のかなた』は、今年の第67回ベルリン国際映画祭で最優秀監督賞を受賞。戦火のシリアを逃れ、フィンランドにやってきた青年を描いています。その青年を演じたシェルワン・ハジさんが映画祭に合わせて来日する予定となっています。今年12月にユーロスペースで公開予定です。
© SPUTNIK OY, 2017
その他の上映作品の詳細と上映スケジュールは公式サイトでご確認ください。
http://unhcr.refugeefilm.org
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8月1日に日本記者クラブで開催された記者会見では、国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日代表のダーク・ヘベカー氏と特定非営利活動法人 国連UNHCR協会事務局長の星野守氏が登壇。難民の現状について解説されました。そのメッセージをいくつかご紹介します。
ダーク・ヘベカー氏
国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日代表
紛争や迫害などにより、家を追われた人の数はかつてないほどの規模(2016年末で6560万人)になっており、その数はイギリスの人口を超えています。毎日3万人以上が家を追われ、特に女性と子供が犠牲になっています。日本は世界の紛争地域から距離的にはとても離れていますが大きな支援を頂き、心から感謝しています。この映画祭では多くを失ってしまっても希望を忘れない人々のストーリーをお届けします。このストーリーを見て、皆さんが難民の立場になったらどうなるかを想像してみてください。日本の皆さんに難民の置かれた現状の理解を深めてもらうことによって、日本から世界への難民問題の支援がさらに広がるでしょう。
星野守氏
特定非営利活動法人 国連UNHCR協会 事務局長
昨年、リオデジャネイロオリンピックに難民選手団が出場したのは記憶に新しいと思います。その一員として出場したシリアの水泳選手、ユスラ・マルディニさんが史上最年少の19才でUNHCRの親善大使に任命されました。現在彼女は東京オリンピックを目指してドイツでトレーニングを続けており、8月に日本に来日予定です。自らの難民としての経験と希望、そして挑戦する心を日本の皆さんにお伝えします。
今年の映画祭では、昨年の4600人の倍となる1万人の動員を目指したいと思っています。
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「私たちが身近に始められる支援は何か」という質問にヘベカー氏は、日々のニュースを見て難民を理解することも第一歩と話していました。また、SNSのハッシュタグに「#難民とともに」「#WithRefugees」と入れる署名キャンペーンも行っており、すでに世界で150万人が協力しているそうです。ユニクロの日本の店舗ではリユース用の衣服を集めるボックスを置き、それを難民に届ける活動しているというお話もありました。難民映画祭を通して多くの人に理解を深めてもらえるよう、JVTAはこれからも字幕でサポートしていきます。
詳細はこちらをご覧ください。
https://www.japanforunhcr.org/form/emailnews/withrefugees.php