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“何を伝えるべきかを見極める” スター選手の通訳としても活躍する修了生「すべての始まりはJVTAでした」

“何を伝えるべきかを見極める” スター選手の通訳としても活躍する修了生「すべての始まりはJVTAでした」

修了生の中井ミリーさんは、スポーツや報道番組の映像翻訳のほか、ポルトガル語のスキルを活かし、サッカーのネイマール選手や、クリスティアーノ・ロナウド選手の通訳など幅広く活躍しています。2018年のサッカーW杯でも、スペイン語とポルトガル語の選手たちや監督たち、それぞれの国のサポーターたちのインタビュー映像の翻訳を担当。さらに、イメージコンサルタントの資格を持ち、セルフイメージをマネジメントするためのワークショップを開催するなど多彩なスキルを発揮し、フリーランスとしてのキャリアを重ねています。そんな彼女の根底には、JVTAの映像翻訳本科と日本語表現力強化コースでの学びがあるそう。お話を伺ってみました。
 

◆多言語を駆使し“鮮度が命”の報道の素材翻訳を担当
 

――中井さんは英語を含め、5カ国語が堪能だそうですね。
 
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中井ミリーさん(以下 中井さん) 私は生まれも育ちもブラジルで、外ではポルトガル語、家庭では日本語で話していました。その後、英語とスペイン語、フランス語を学び、現在はフリーランスとして、主にスポーツや報道の現場で、ポルトガル語とスペイン語の翻訳や通訳を担当しています。
 

――いまの仕事の内容を教えてください。
 

中井さん テレビ局から、海外の報道やバラエティー・ドキュメンタリーなどの素材翻訳をいただいています。主にポルトガル語とスペイン語の日本語訳です。“スクリプトなしでリスニング力勝負”というお仕事が多いですね。いわゆる、その映像素材から日本語を起こしたものを番組のプロデューサーなどが見て、どこをどう放送に使うのかを検討するための翻訳です。特にテレビ局は“鮮度とスピードが命”ですので同時通訳なみのリスニング力が求められます。
 

報道の翻訳には綿密な情報収集が必須ですから、JVTAで映像翻訳を学んだ時に身につけたリサーチ力が役立っています。ポルトガル語とスペイン語だけでは裏取りが十分でない場合もあり、そんな時は英語も駆使してリサーチを徹底することがあるため、1人で複数の言語ができることは現場でとても重宝されています。
 

◆サッカーのスター選手をサポート 評価されたのは日本語表現力

 
――中井さんがクリスティアーノ・ロナウド選手やネイマール選手のイベントで通訳をしている動画を拝見しました。ロナウド選手が中井さんの方を見ながら話していて、とても頼りにされている雰囲気が伝わってきました。
 

中井さん 両選手のCM撮影現場やイベント、テレビ番組の収録などにも立ち会いました。クライアントによると、「日系ブラジル人は数が多いのでポルトガル語がそれなりに分かる人は多い。でも、日本語とポルトガル語を同じレベルでアウトプットできる人は少ない」のだそうです。私はJVTAで映像翻訳の本科だけでなく、日本語表現力強化コースでも学んだおかげで日本語力を評価していただいていることが、仕事のリピートに繋がっているようです。「あなたの翻訳はとても分かりやすく、話し手があたかも本当に日本語で話しているような感じが伝わってくる」というお声を頂いたことが一番うれしかったですね。
 

※クリスティアーノ・ロナウド選手の来日イベントの動画はこちら

 
――日本語の良し悪しでメディアに伝わる選手の人格までもが変わりますから、それは最高の評価ですね!
 

中井さん 通訳者の役割はただ言葉を訳すだけではありません。同じポルトガル語でサッカー選手の通訳をしていてもネイマール選手とロナウド選手ではそれぞれ違う世界観があります。クライアントも同じく日本の企業でも、それぞれの色も違うし、PRしたい商品も異なりますから、「そこで響く言葉は何か」も当然変わってきます。私はそこを常に考え、意図をもって使い分けています。絶対に同じ表現にはしていません。その企業が彼らをCMキャラクターに採用することで「何を伝えたいのか」という根本を考えたら、自ずと変わってくるわけです。
 

――ターゲットを想定した効果的な言葉選びは、映像翻訳にも通じますね。
 
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中井さん 例えば、CMの撮影現場がスペインの場合、現地スタッフとはスペイン語、スポンサーとは日本語、選手とその関係者とはポルトガル語と英語など複数の言語を使って、さまざまな人たちを繋ぐのが私の役割です。スポンサーが日本の企業なので、CMの撮影で選手らに言って欲しいセリフは、まず日本語であがってきて私がポルトガル語に翻訳します。同時に日本語から英語にした資料も企業側から選手側に渡してあります。選手側からはまず英語を基にチェックバックがくるのですが、日本語から、英語にした時に、大事なキーワードが抜けてしまっていることがあるんです。ですから、「ここは絶対にはずせないポイントだ」という点を慎重に見極めて、相手に伝えるようにしています。これは短い字幕の中に必要な要素を盛り込むという映像翻訳の経験もあるからこその気づきだと思いますね。通訳の仕事では、相手の気持ちや伝えたいことを丁寧に汲み取り、その想いを真摯に橋渡ししていく、そうした気づきや人間性も1つの大きな要素であることを、毎度 肝に銘じて初心にかえった気持ちで挑んでいます。
 

◆原点はJVTA ここでの学びが仕事の可能性を広げてくれた
 
――現在は大活躍の中井さんですが、JVTAの本科修了後には悩んだ時期もあったそうですね。

 
中井さん JVTAの本科を終えた後、私はなかなかトライアルに受からない日々が続いていました。現在、分野を問わず翻訳、通訳において私が常に意識しているのが、自分の書く文章、話す言葉の「わかりやすさ」です。「わかりやすい」と言うことは「伝えたいことがきちんと伝わっている」こと。今振り返ると、まさしく自分が理解できた英語を適切な日本語に置き換え、要点をうまく伝えることができていなかったことが主な原因でした。そんなとき、日本語表現力強化コースを受講し、私は自分の中の大きな山を1つ越えることができたと確信しています。
 

――日本語表現力強化コースで学び、具体的に仕事に生かせていることがあれば教えてください。
 

中井さん 日本語表現力講座は翻訳をメインに考えられたものではありませんが、私は「翻訳」以前に、「日本語を書く」という作業を徹底して教えられました。講座では毎回、課題としてテーマに合った文章を書いて提出します。それが結果的に翻訳のクオリティを上げることにつながり、クライアントに評価していただき、受注のリピートにつながっているのだと実感しています。
 

講座の内容で言えば、例えば翻訳・通訳対象の資料や特性を把握することによって、読み手や視聴者フレンドリーなアウトプットを常に心がけられるようになりました。「分かりやすい」「伝わる」は、読み手や視聴者によって大きく異なるので、この気づきは重要だと思います。
 

また、インタビュー記事や映像の翻訳、インタビューの通訳もよく頂くお仕事ですが、講座でインタビュー記事を書いたことで、何がインタビューの軸となっているのか、それをどういう文章にすればより読み手の興味を惹くのか、どう訳せば視聴者により深く響くのかという視点や、全体内容の把握と訳への落とし込みを学ぶことができました。
 

◆翻訳記事を「リズムがあって面白い、読み物として成立している」と評価された

――インタビューをする側、さらにそれを記事にする立場を自ら体験したことが生かせているんですね。
 

はい。さらに、私の活動分野は主にメディアやエンターテインメントですが、講座で身につけたライティングテクニックや文法の知識のおかげでメディアが求める訳をアウトプットできるようになりました。ファッション関連の翻訳に関しては、「リズムがあって面白い、読み物として成立している」との評価をいただいています。
 

翻訳・通訳が「正確」であるのは大前提。しかし、「正確」であっても「伝わる」とは限りません。「正確」であることを踏まえて原文をいかに違和感なく分かりやすく、伝わりやすく「組み立て直す」のが私たちの仕事であり、そのためにはテクニックのみならず、さまざまな気づきや客観性が必要だと、日々感じています。
 

――通訳の仕事もJVTAの仕事の延長にあったそうですね。
 

中井さん ネイマール選手の通訳の仕事を担当する1年半くらい前に、JVTAでスクリプトなしのトライアルがありました。その時、JVTAのディレクターから「スポーツと報道には不況がない。絶対その分野はトライしてみたほうがいい」とアドバイスされ、「聴き取りのみ」「聴き取りと字幕」「聴き取りと吹き替え」の3種類に挑戦したところ、その全てに合格することができたんです。その後、サッカーのボイスオーバー翻訳や素材翻訳といったスクリプトなしの翻訳の仕事をいろいろ頂くようになりました。もともとサッカーはブラジルのお家芸でもあるし、代表チームの試合は好きでよく見ていたので得意なジャンルでもあったんですね。そんな中で、2014年のブラジルのW杯の前年(2013年)にその前哨戦と言われるFIFAコンフェデレーションズカップがブラジルで開催。NHKでの特集番組で使うスペイン語、ポルトガル語の素材翻訳を担当しました。その時私が訳した言葉がまるまるそのまま、画面に流れていて、本当に嬉しかったのをよく覚えています。スポーツは即時性が命なのでクライアントは信頼できる翻訳者にリピートでお願いしたいもの。だからJVTAの仕事を通じて信頼を得ることができ、大きな自信になりました。この経験がなければ、選手の通訳の仕事のチャンスが来た時に、自ら手を挙げることはできなかったと思います。
 

――最近はファッションの分野でもご活躍とか?
 

中井さん はい。ファッション業界の翻訳は、ラグジュアリーブランドのアパレルや化粧品の社内用トレーニング資料、プレスリリース、広告用資料、そして有名ファッション雑誌の記事などですが、いずれも非常に特殊な表現が求められます。トライアルの形で一度受注後、ありがたいことに即戦力として認められ、以来、ファッション関連の案件は毎週、安定的にいただけています。ここでもやはりいただく評価が、「表現力の高さ」「言葉選びの正確さ・こだわり」そして「わかりやすさ」ですね。JVTAで映像翻訳や日本語表現力を学んだことが、この評価につながっていると確信しています。
 

――映像翻訳者にはさまざまな活躍の場があるんですね。JVTAの修了生も、映像翻訳を中心に、WEBサイトの記事翻訳や、映画祭での映画関係者のアテンドやトークショーの通訳などもで活躍しています。最後に受講生、修了生の皆さんにメッセージをお願いします!
 
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中井さん 翻訳や通訳の現場では、「会議通訳者は沢山いるが、エンタメの通訳をできる人はあまりいない」とよく言われます。要はこなれた表現力があって、スピードがあってテンポよく通訳できる人が足りないのです。ですから、エンタメが好きでリスニング力があって、人と会うのが好きという映像翻訳者の皆さんには、さまざまな分野に活躍の場があります。翻訳だけでなく、通訳もぜひ視野に入れて欲しい分野の一つですね。私も映像翻訳の経験をきっかけに通訳にも挑戦し、仕事の幅がぐっと広がりました。皆さんにも、JVTAでの学びを生かしてさまざまなジャンルに挑戦してほしいですね。
 

――今後の中井さんのご活躍に期待しています! ありがとうございました。
 

中井さんが受講した「日本語表現力強化コース」の詳細と無料説明会はこちら
https://www.jvta.net/tyo/japanese-writing-special/
 

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