大阪アジアン映画祭 学びながら実績を積める 字幕PROゼミとは?
3月4日、大阪アジアン映画祭がスタートします。「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」をテーマにアジア各国の作品を上映するこの映画祭は、今年で11回目。JVTAは日本の長編映画『食べられる男』(英題:THE MAN WHO WAS EATEN、監督:近藤啓介)ほか、3作品の英語字幕を担当しました。『食べられる男』は、主人公の村田良夫が世界平和のために、1週間後に宇宙人に食べられることになるという奇想天外な物語です。
翻訳を手がけたのは英語字幕PROゼミに参加した4人の修了生の皆さん。英語字幕PROゼミとは、映画祭などで上映予定の作品にゼミ形式で字幕をつけるものです。日英映像翻訳科の講義を担当する講師とMTCディレクターからの2度のフィードバックを受けながら字幕を仕上げていくという実践的な講座です。1つの作品を4つのパートに分けて翻訳を担当。スキルアップと実務経験を同時に積めるのが最大の特徴で、完成した英語字幕付きの作品は実際に映画祭などで上映されます。
今回は2度目のフィードバックに参加。受講生が完成させてきた英語字幕に対し、ジェシー・ナス講師が具体的なアドバイスをしていきます。皆さんもジェシー講師の解説を見る前に字幕を考えてみてください。
◆「えー私です」(電話越しに聞こえる不機嫌そうな女性の声)
Hello, it’s me.
ジェシー講師「この字幕だと丁寧でフレンドリーな印象なので声のトーンと合っていません。Hey, it’s meやUh, it’s meなどの方が彼女のダルそうな雰囲気が伝わりますね」
◆「村田さんって酒に強いですね」
You’re a good drinker.
ジェシー講師:「ネイティブには違和感があります。You can hold your liquor やYou can drink a lotが自然。ちなみにHeavy drinker はアルコール中毒や依存症の意味でニュアンスが変わってしまうのでNGです」
◆A(宇宙人に食べられることを想像した主人公の村田良夫のセリフ)「絶対僕おいしくないよね」
動揺する同僚B「いやいやいや」
A:I’m definitely not tasty, right?
B:No, no, no.
ジェシー講師:「いやいやいや」を深く考えずに訳していませんか? この英語字幕だとネイティブには「いや、おいしいでしょう」という意味にも取れてしまいます。ここは「何を言っているの?」「何の話?」(Are you kidding?)(What are you talking about?)というニュアンスです。この尺なら「Come on!」などのほうがベター。英語では特にYesとNoの使い方に注意。言葉通りに訳しても話者の真意が伝わりません。
いかがですか? PROゼミではこうしたアドバイスを受けながら、より自然で、作品の意図にあった字幕にブラッシュアップしていきます。
終了後、翻訳者の皆さんにインタビュー。PROゼミならではの緊張感やチームでの翻訳のメリットなどについて聞いてみました。
北湯口 由香さん(写真左から2番目 字幕PROゼミに初挑戦)
受講中の課題は最大でも約10分で字幕は80枚程度でしたが、今回はいきなり倍以上に増え、約200枚の字幕を作りました。プロにとっては時間配分も大切だと改めて実感しました。初めてのことが多くパニックになりそうでしたが、4人で一緒に翻訳ができたので頼もしかったです。
田嶋有希さん(写真左 字幕PROゼミ3回目)
グループでの翻訳なので、総合的なチェックの中で自分が気づかなかったポイントを指摘してくれたのが良かったです。1人ですべて担当していたら全く余裕がなくて、ちゃんとセリフの意味を出せなかったと思います。今回の作品は日常会話が多いのですが、何気なく使っている日本語のニュアンスを英語でも同じように伝えるのが難しかったですね。
安井雄一郎さん(写真右 字幕PROゼミに初挑戦)
全体的に短いセリフが多いので、簡潔にまとめるのが大変でした。短くしすぎるとニュアンスがきちんと伝えられなくて…。また、僕の場合は字幕制作ソフトを本格的に使って長い尺に取り組むのが初めてだった上に、ハコ切りからしなければならなかったので戸惑いました。本格的な仕事の前にゼミとして経験を積めたのはとてもありがたかったですね。
柚木身知子さん(写真右から2番目 字幕PROゼミ3回目)
これまでPROゼミでSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の短編とUNHCR難民映画祭と長編を担当しました。上映会場に足を運び、自分の名前のテロップが出た時は本当に嬉しかったですね。また、監督と直接お話することができて感動しました。これは実践的なPRO
ゼミならではの醍醐味です。今回は上映が大阪なので会場に行くのは難しいのですが、皆さんにもこの気持ちをぜひ体験して欲しいですね。
『食べられる男』THE MAN WHO WAS EATEN<
上映スケジュール、予告編はこちら
http://www.oaff.jp/2016/ja/program/i14.html
★その他、JVTAが英語字幕を担当した作品はこちら
『見栄を張る』ERIKO, PRETENDED
http://www.oaff.jp/2016/ja/program/i12.html
『私は兵器』I AM A WEAPON
http://www.oaff.jp/2016/ja/program/i13.html
第11回大阪アジアン映画祭
2016年3月4日(金)~13日(日)
http://www.oaff.jp/2016/ja/