宮沢りえ主演作『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督をはじめ、白石和彌監督や熊坂出監督、山文治監督など注目の映画監督が賞を受賞してきたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭。7月15日(土)にオープニングイベントが行われ、映画『ANIMAを撃て！』が上映されました。会場には多くの映画関係者が来場。JVTAが今回の映画祭で英語字幕を担当した3作品の監督にお話を聞くことができました。
 

長編部門『三尺魂』加藤悦生監督
 

(C)三尺魂2017
『三尺魂』●巨大な花火を使った集団自殺のため集まった４人の男女。だが、なぜか爆発のたびに集合前の時間に戻ってしまう。メンバーの１人が未来ある女子高生だと知った残りの３人は、彼女に自殺をやめるよう説得するが…。
 

「人は一人で生きているわけではない。必ず誰かと繋がっている」これが、『三尺魂』に込めた思いです。例えば、“自分は一人で生きていく！”と決めて一日中部屋の中にいる人がいたとします。そんな人でさえ、その横にある布団は誰かが作ってくれた物のはずです。人と人の関わりにはいろいろあります。それは、いじめや上司の圧力の場合もあって、生きにくさを感じることもあるかもしれないけれど、視野を広げれば必ず誰かに助けられている。そんな繋がりを見せられたらいいな、と思って作りました。「自殺」がテーマの作品ではありますが、もしこの映画を観て１人でも「やっぱり生きてみよう」と思い直す人がいたら、嬉しいですね。この作品に英語字幕を付けるのは大変だったんじゃないかな、と思います。短いセンテンスがたくさん出てくるシーンなんて、どうなってしまうんだろう、って(笑)。視聴者の人が「画」に集中するための最適な言葉選びをしていただいて、感謝しています。
 

短編部門『ラストラブレター』森田博之監督
 

(C)studio so-lars.
『ラストラブレター』●近未来。アキコは突然の事故で夫を失ってしまう。２年後、いまだ喪失感と共に暮らすアキコは、夫を“ヒューマノイド”として蘇らせる。ただし、彼が起動しているのは２週間のみ。夫との最後の生活が始まる。
 

僕が作りたかったのはヒューマンドラマ。この作品ではSFの設定を借りて、人間の愛情を描いています。UFOが飛んでいるような世界観でも、その下には誰かが住んでいるだろうし、日常の暮らしがある。『ラストラブレター』の世界にも超高層ビルやロボットがあるはずですが、そこは一切描かずに、人の暮らしだけを切り取って見せたい、という狙いがありました。英語の字幕のおかげで、海外の方にも観ていただくことについては、作品のメッセージとともに、日本人特有の死生観やアイデンティティが伝わると嬉しいです。主人公２人の空気感や会話のニュアンスが外国人にも伝わるように文字で表現していただくことにも、とても興味があります。映画のセリフというのは、脚本家やディレクターが、本当に一言を悩んで、悩んで、自問自答して決めているものなんです。映像翻訳を学ぶ皆さんにはセリフ一つひとつのバックグラウンドが伝わるように翻訳していただけたら、すごくうれしく思います。
 

アニメーション部門『だいじょうぶ。』石井章詠監督
 

(C) DAIZYOUBU.
『だいじょうぶ。』●ミユキは人と関わることが苦手な女の子。心を許せるのは、心の中の友達・テチテチくんだけ。そんなミユキが体験する、小さな出会いの物語。
 

「色」にこだわりながら、制作に取り組みました。例えば、１人のキャラクターが
ショックを受けた時は、設定の色よりも少し変化を加えて、調整したり。人はその時の感情によって周りに見える景色が変わってくるものです。このシーンはこのキャラクターの目線、この時は別のキャラクターの…、とこだわりながら色を選びました。ストーリーは、私が大体のシナリオを作って、仲間と共に仕上げていきました。苦しさを感じている小学生に向けて、「友達が100人いなくても、心が通じ合える友達を１人見つけられればいい。それだけで自分の周りの空間は“だいじょうぶ”な空間になる」そんな思いを込めたアニメーションです。同じ日本語でさえ、伝えることが難しいときもあるのに、国や文化を超えて作品を届けられる映像翻訳者はすごいと思います！　私にはできないことなので、かっこいいなと思いますね。
 

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭
7月15日（土）～7月23日（日）
上映スケジュールは公式サイトをご覧ください。