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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が7月15日に開幕 ゼミ形式で英語字幕をつける「字幕PROゼミ」をレポート

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が7月15日に開幕 ゼミ形式で英語字幕をつける「字幕PROゼミ」をレポート

デジタルで撮影・制作された作品のみにフォーカスした国際コンペティション、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が7月15日に開幕します。この映画祭は、若手映像クリエイターの登竜門としても知られており、未来の巨匠の作品に出合えるのが最大の魅力です。過去には、白石和彌監督(『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』)や中野量太監督(『湯を沸かすほどの熱い愛』)など今注目のクリエイターがアワードを受賞しています。JVTAは毎年、字幕制作でサポートしており、今年も2本の長編、1本のアニメ、2本の短編の英語字幕を修了生が手がけました。

こうした映画祭は映像翻訳者にとっても実践的な経験を積める貴重な場です。JVTAでは、この映画祭で上映される作品に字幕を付ける「英語字幕PROゼミ」を開催しています。英語字幕PROゼミとは、映画祭などで上映予定の作品にゼミ形式で字幕を付けるもの。日英映像翻訳科の講義を担当するMTCディレクターから2度のフィードバックを受けながら上映用の字幕を仕上げていきます。

今回はPROゼミで講師を務めるジェシー・ナス講師によるフィードバックを覗いてみました。ゼミに参加したのは、日英映像翻訳科の修了生、伊藤 梢さんと神林いぶきさん。短編『エクラド』に英語字幕を作成しました。主人公は母と暮らしていた東京から父の住む桐生へ引っ越してきた少年、太陽。父と祖母は言い争いばかり。学校にも馴染めない日々を送っています。ある日、父・宏太から桐生には龍がいると聞いた太陽は、クラスメイトの太一と山へ龍を探しに行きます。
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フィードバックで話題になった箇所をいくつか紹介しましょう。

勉強会1 - コピー
◆(父・宏太が龍について語る一言)
龍か?
龍ってカッコいいんだぞ。俺、昔見たんだよ

A dragon?
It’s so cool. I saw it before.(受講生の字幕)

ジェシー講師 文法的な間違いではないのですが、ネイティブの感覚では、It だと特定の龍(伝説的な1頭の龍)をさしているイメージになります。どのくらいの数の龍がいるのか分からず、特定できない場合は、oneを使うほうが自然です。A dragonかthe dragonかによっても変わってきます。そこも書き分けが必要ですね。

A dragon?
It’s so cool. I saw one before.

勉強会3 - コピー
◆(酒を口にした太一の一言)
うわ、何だこれ こんなの飲めないよ
What’s this? I can’t drink it.(受講生の字幕)

ジェシー講師 「うわ、何だこれ」はこの一言だけを見ると質問のようですが、この文脈では「まずい!」「気持ち悪い!」といった感情を表している一言です。そのニュアンスを伝える言葉を考えてみましょう。より自然な印象になりますよ。

Gross! I can’t drink it.
Disgusting! I can’t drink it.

◆(山から帰ってきた太陽に父・宏太がかけた言葉)
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龍はいたか?
Found a dragon?(受講生の字幕)

ジェシー講師
 日本語で過去形になっているので、英語でも動詞を過去形にしてしまいがち。でもこれはDid you find a dragon?の省略形です。つまり、Find a dragon? が自然。これは、実際の仕事のチェックの中でも特に多いケースです。日本語にひきずられないように気をつけましょう。

Find a dragon?

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PROゼミの中で話し合うのは、こうしたちょっとしたニュアンスの違いです。一見、簡単そうに見えるシンプルなセリフでも、ネイティブが聞くと奇妙なイメージになるものは少なくありません。こうした違和感をなくしてより自然で分かりやすい英語字幕を考えていくのです。PROゼミに参加した2人に感想を聞いてみました。

★伊藤 梢さん
伊藤梢さん
PROゼミでは1つの作品を何週間もかけて何度も何度も推敲し、字幕を練り上げていきます。授業ではここまで時間をかけて1つの作品とじっくり向き合うことはないため、作品のメッセージを踏まえて粘り強く最良の表現を探し続ける作業は貴重な経験となりました。

また、今回は神林さんと2人で組んだチーム翻訳でしたが、お互いのバックグラウンドや得意分野がかなり違ったため、原稿を相互にチェックする際には自分と違った視点で見ていただけて非常に勉強になりました。

大人の弱さやズルさ、それすら受け止めて成長する子ども…。 無邪気で可愛いだけでなく、大人を見透かす鋭さを持った子どもが「みんな一生懸命ウソついて生きてる」とサラッと言うシーンは刺さるものがあります。龍がいるかもしれない街、桐生市の自然の風景や音が綺麗に撮られており、桐生の街が第二の主人公になっている点も見どころです。

★神林いぶきさん
神林いぶきさん
今回初めてプロゼミに参加し、字幕制作ソフトSSTを使って映画に字幕を入れる作業を経験しました。SSTを使うのはほとんど初めてだったので、慣れない作業にかなり手惑いましたが、チームメイトの伊藤さんの助けでなんとか乗り切る事ができました! 伊藤さんが一つひとつ確認して、私の足りないところを補ってくれたのでとても勉強になりました。

チーム内で確認をした翻訳原稿にジェシー講師からフィードバックを2回頂きました。この経験を通して、相手の翻訳をチェックするという事が結局、自分自身の勉強にもなると強く感じました。翻訳にはたった一つの正しい答えというものは存在せず、あらゆる見方によってさまざまな答えがある事を学びました。さまざまな視点から評価し合い、より良い翻訳を作れるのがチーム翻訳の醍醐味と思います。ジェシー講師のフィードバックセッションでは和気あいあいととても楽しくアドバイスをいただく事ができました。どうもありがとうございました。

エクラド / Eclat
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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017
7月15日(土)~7月23日(日)
公式サイト http://www.skipcity-dcf.jp/