サイレント映画『女ハムレット』の字幕を担当 修了生・土岐美佳さんインタビュー
北欧5カ国(ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランド)の映画やアート、音楽、食などを楽しめる総合イベント、「トーキョーノーザンライツフェスティバル」(TNLF)が現在、渋谷を中心に開催中です。いよいよ2月11日からは映画館ユーロスペースで同イベント内のフィルムフェスティバル「北欧映画の1週間」がスタート。JVTAは今年も字幕翻訳とゲストの通訳でサポートしており、修了生16人が13本の作品を手がけています。
TNLFで毎年人気を集めているのが、サイレント映画と生演奏との共演です。今年はサイレント映画のミューズと呼ばれる女優アスタ・ニールセンにフォーカスしています。アスタはデンマーク出身、妖艶でコケティッシュな魅力でドイツを拠点に活躍しました。今回は、そんな彼女が男装して臨んだ1本『女ハムレット』に注目。日本語字幕を担当した土岐美佳さんにお話を聞きました。
◆この作品のみどころは?
『女ハムレット』は「ハムレットが実は女だった」というアメリカ人学者の大胆な学説を基にした、1921年公開のサイレント映画です。王家を継ぐべく「王子」として育てられたハムレットが、友人ホレイショーに密かな恋心を抱き、彼とオフィーリアとの三角関係に陥りつつ、父の敵討ちを実行すべきか悩む…といったストーリーです。ハムレットを演じているのは当時の人気女優アスタ・ニールセン。彼女のくるくる変わる豊かな表情や、男装姿から放たれる中性的な魅力が作品の大きなみどころとなっています。また、当日はピアノ伴奏付きで上映されるので、いつもとはひと味違う映画体験を提供してくれると思います。
◆翻訳で苦労したことは?
翻訳する上で難しかったのは、やはり音声でのセリフが一切無いという点でしょうか。通常の作品では話者がセリフをしゃべるので情報量が多いですし、声のトーンなどからもヒントを得ることができます。しかしサイレント映画では、セリフはシーンとシーンの間にはさまれる文字(インタータイトル)に簡潔に書かれているだけで、話者が誰なのかさえ分かりづらいこともあります。セリフを的確に訳すためには、キャラクターの表情や動作を注意深く観察し、その心情を理解する必要がありました。普段の作業ではつい音声に頼ってしまいがちだったので、この作品の翻訳作業をとおして映像を読み解くという基本に立ち返ることができました。
◆『女ハムレット』上映スケジュール
2月12日(日)14:00
2月16日(木) 16:30
映画館 ユーロスペースにて
◆トーキョーノーザンライツフェスティバル 公式サイト
http://tnlf.jp/