主役はゴキブリ?!翻訳者が語る『ゴキブリたちの黄昏』の見どころ
現在、ドイツのフランクフルトで日本映画の祭典、ニッポン・コネクションが開催されています。5月28日には、いよいよJVTAが英語字幕を担当した特別上映プログラム『ゴキブリたちの黄昏』(1987年)が上映! 当校の修了生7人(うち6人は字幕PROゼミに参加)が字幕を手がけました。この作品の主役はなんとゴキブリ! それだけで拒絶反応を示す人もいるかもしれませんが、翻訳者の皆さんによると、“愛着が湧いてくる”とか。しかも小林薫さん、烏丸せつこさんら豪華なキャストが出演しています。作品にじっくり向き合った翻訳者ならではのコメントをご紹介します!
※英語字幕PROゼミ
日英映像翻訳科の講義を担当する講師とMTCディレクターからの2度のフィードバックを受けながら字幕を仕上げていくという実践的な講座。映画祭などで上映予定の作品にゼミ形式で字幕をつける。
★作品の見どころは?
◆「ゴキブリ?」。題名を見てまず思いました。ところがこれ、ロマンスあり、アクション、政治謀略、予言者、成長など、映画の基本要素が満載の大変意欲的な作品です。しかも、人間の実写とゴキブリのアニメの組み合わせ方が何とも巧妙。このような機会でもないと、知り得なかった面白い作品でした。でも、海外の人にとってのゴキブリは私たちのイメージとは違うかもしれません。ちゃんと伝えられたかな?(杉崎やよいさん)
◆ゴキブリが好きになります! この作品は人間の世界が実写、ゴキブリの世界が色鮮やかなアニメで構成されています。ゴキブリ達の手には手袋、足にはブーツと、お洋服がトレンディーで可愛いだけでなく、彼らも人間と同じように、恋愛、家族、そして社会のあり方に悩んでいます。字幕を書いていくなかで主人公のナオミにどんどん愛着がわいてきました。登場人物の喜び、プライド、そして葛藤が伝わる字幕に仕上がっていると良いです。(松浦貴久子さん)
◆なんといっても“ゴキブリ目線”で描かれた世界観です。ゴキブリが苦手な方は多いと思いますが、アニメーションと実写で合成された映像マジックにかかれば、ゴキブリへの見方が変わるかもしれません。ゴキブリだって、人間のように平和に楽しく暮らしたいのです。作中で「ゴキブリは、かつてたった1人の人間さえも殺すことはないのに…なぜ人間はそうまでしてゴキブリを敵視するのか?」という問いがあります。私もゴキブリは好きではありません。でも、ゴキブリの真剣さを考えながらラストシーンを見ると、なんだか胸が痛むのは私だけでしょうか?(桐原麻衣さん)
◆今回のPROゼミでは二つのグループに分かれて作業をしたのですが、メンバーと様々な意見を交換しながら、一つの作品をチームとして仕上げる楽しさを学びました。海外の視聴者に日本の作品をお届けするという日本人としての責任感と共に、「どのように受け止めてくれるのだろう?」というワクワク感を経験することができました。「まずは映像翻訳者が作品を「面白い!」と感じなければ視聴者に作品の良さは伝わらないこと」を実感し、プロとしての意識を学ぶ貴重な経験となりました。(佐藤慶子さん)
◆言い淀みの「…」が多く、「…」の前だけを訳しても意味が伝わらない箇所がいくつもあり苦労しました。私の担当した箇所では「やっぱり…」、「この人…」など。こういったケースでは「…」の前の部分だけを訳しても意味のある字幕にならないため、「この日本語のセリフは、言い淀まなければ一体どんなセリフになるのか?」、「英語話者なら、そのセリフをどんな風にしゃべるのか?」を考えて字幕を作りました。ゼミで色々な意見を頂きながら字幕を練っていけたのが良かったです。(伊藤梢さん)
いよいよ上映は5月28日!
世界の映画ファンはゴキブリたちの物語にどんな反響を示すのか? 期待が高まりますね!
詳細はこちら
http://www.nipponconnection.com/program-detail/jvta-presents-twilight-of-the-cockroaches-en.html
◆ニッポン・コネクション
2016年5月24日から29日
ドイツ・フランクフルトの各会場で開催
公式サイト http://www.nipponconnection.com/nc-2016-english.htmlhttp://www.nipponconnection.com/nc-2016-english.html
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