若き日のピカソやガウディの余韻を味わう「4 Gats (クアトロ・ガッツ)」
【不惑のjaponesa(ハポネサ)第16回 スペイン放浪記 その3】バルセロナ滞在3日目。友人J君宅に滞在しながら、ガウディの建築物をできる限り巡る“ガウディ祭り”もあっさりと終盤を迎える。なんと、目指していた「サン・パウ病院」は工事中だった。事前にチェックもせず、無計画で動くとこのような結果になる。旅にはよくあることだが、今回のプランはいとも簡単に崩れてしまった。
■ 4 Gats (クアトロ・ガッツ)
しかし、そこでくじけるハポネサ(日本人女性)な私ではない。
私にはもう一つ訪れたい場所があった。それは、「4 Gats (クアトロ・ガッツ)」。バルセロナ旧市街のゴシック地区に位置するこのお店は、1897年創業の老舗レストランで、夜はバルになる。当時は、ピカソ、ガウディなどの画家、建築家、作家といった若手のアーティストが集まり、夜な夜な夢を語り、アートについて論じた場だったらしい。ピカソの初の個展が開催されたのも、ここ「4 Gats (クアトロ・ガッツ)」である。
歴史のある、そして時のアーティストたちが好んで通ったバルに行って、当時の雰囲気を感じたかった。自分もその一人であるかのように楽しみたい――。そんな気持ちがすぐに芽生えた。
■ 偶然はあるのね
店の扉を開けると、4人掛のテーブルが10セットほど並んでいる。日本のショッピングセンターのフードコートによくあるテーブルと椅子だ。きっとここが芸術家たちのたまり場だったのだろう。
そのスペースで終わりかと思いきや、その奥がまだあるらしい。
さらに進むと、天井の高いボウルルームのようなレストランホールが現れる。立食パーティーであれば、軽く100人は収容できる大きさだ。シャンデリアがいくつも天井から現れ、白いおしゃれなテーブルが何十と並んでいる。そこには、ランチを楽しむビジネスマンや観光客たちで溢れかえっており、食事を楽しんでいる。会話や食器とフォークの重なる音がホール中に響き渡る。
さらに、そのホールには2階席(桟敷席)がある。そこは1~2人専用のスペースで、このホールを隅々まで一望できる。
▲「4 Gats (クアトロ・ガッツ)」のレストランホール
実は、この店を訪れるのは2回目だ。12年前、初めてバルセロナを訪れた時に友人とランチを取った。本当は入り口すぐのテーブルが良かったが、「No」と言われて2階席に通された。
こじんまりとした店を想像していたためにホールの雰囲気に圧倒されたが、下でせわしなく口と手を忙しく動かす人たちに興味を覚え、人間ウォッチングを楽しんだのを覚えている
再びやって来たこの店は、何一つ変わっていない。
同じように2階席に通され、なんと、12年前とまったく同じ席に案内されたのだ。
「なんという、偶然でしょう~!」
座った席順、ワインクーラーの位置、「4 Gats (クアトロ・ガッツ)」のロゴいりのお皿。あの時、人間ウォッチングを楽しんだ友人との会話が思い出され、タイムスリップした感じがした。
若き日のピカソやガウディの余韻に浸るつもりが、今より12歳若かったあの瞬間にタイムスリップしている自分がいた。
▲ 12年前とまったく同じ席に通されて・・・
▲ お店のロゴ。カワイイ
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Written by 浅野藤子(あさの・ふじこ)
山形県山形市出身。高校3年時にカナダへ、大学時にアメリカへ留学。帰国後は、山形国際ドキュメンタリー映画祭や東京国際映画祭で約13年にわたり事務局スタッフとして活動する。ドキュメンタリー映画や日本映画の作品選考・上映に多く携わる。大学留学時代に出会ったスペイン語を続けたいという思いとスペイン映画をより深く知りたいという思いから、2011年1月から7月までスペイン・マドリード市に滞在した。現在は、古巣である国際交流団体に所属し、被災地の子供たちや高校生・大学生の留学をサポートしている。
【最近の私】沖縄梅雨明け万歳。でも突き刺すような太陽の光線はスペインに劣らない。光線はサングラスをかければ防げるが、この暑さと湿度は、東北出身の私には馴染みにくい。(泣)
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