【悪役を語るコラム】チャッキー in 『チャイルド・プレイ』
毎年、夏になるとテレビでホラー映画が放送され、特集も組まれる。『ほんとにあった怖い話』(フジテレビ)など怪談ものが多く放送されるのも、やはり夏である。そこで今回の悪役コラムは、ホラー映画『チャイルド・プレイ』に登場した人形、チャッキーを紹介したい。
映画は、凶悪犯チャールズが警察に追われて玩具店に逃げ込むシーンから始まる。刑事に撃たれて、ひん死のチャールズが目にしたのが、おもちゃの人形「グッドガイ」。実はブードゥーの呪術が使えるチャールズは、人形を手にして「我に力を貸したまえ」と呪文を唱える。すると雷が落ちて玩具店は大爆発。チャールズの死体が発見されて事件は解決となった。この時にチャールズが呪いをかけた人形が、本作の主人公である少年アンディの手に渡る。この人形は電池で動き、「ハーイ、僕チャッキー。一緒に遊ぼうよ」と話すことができる。しかしチャッキーには、チャールズの魂が乗り移っていた…。
子どもが好きな、おもちゃの人形に犯罪者の魂が乗り移るというアイディアが面白い。チャッキーがアンディの元に来てから、人が転落死する事故が起きる。アンディは「チャッキーがやったんだ」と話すが、彼の母親をはじめ、誰も信じてくれない。チャッキーは人形なのだから、信じてもらえないのは当たり前である。さらにアンディが犯人なのではと疑われてしまう。かわいい人形チャッキーが浮かべる微笑みの下には悪者の本性が隠れており、観ていて恐怖感が煽られる。そんな人形に“グッドガイ”とは、皮肉なネーミングである。
そして、ついにチャッキーの正体が暴かれる。アンディの母親が、チャッキーが入っていた空き箱の中に、使用前の乾電池を見つける。「じゃあ今までチャッキーは、どうやって話していたの?」と母親はチャッキーの背中にある電池ボックスを調べる。すると、ボックスの中は空だった! 驚く母親。その時、動くはずがないチャッキーが再び「ハーイ、僕チャッキー」としゃべりだす。恐ろしくなった母親は、「燃やしてやる!」と火のついた暖炉にチャッキーを投げ入れようとする。その途端、チャッキーは怒りの感情を露わにして「この淫乱女、ふざけるな!」と叫ぶ。ついに人形が悪魔へと変貌する、サスペンス感のある秀逸な場面だ。
そしてチャッキーは自分を撃った刑事に復讐をし、さらにアンディの体を乗っ取ろうとする。終盤はチャッキーが執拗にアンディを襲い続け、その姿はおもちゃ版『ターミネーター』と呼びたくなる執念深さだ。
1988年に製作された本作は大ヒットし、以降、続編が5本作られた。しかし、続編はパワーダウンした印象が強い。4作目『チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁』で嫁が出てきたり、5作目『チャイルド・プレイ/チャッキーの種』では息子ができたり(人形なのに!)と、予想外のシリーズ展開となっている。だが、怖さという点では、第1作目のチャッキーが最も強烈でインパクトがあると思う。
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
【最近の私】TBS-BSの『吉田類の酒場放浪記』がお気に入りです。色々な店でお酒を飲む番組ですが、自宅でお酒を飲みながら見ると、自分もその店にいるようで楽しめます。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!
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