宮澤賢治とヘヴィ・メタルが融合 音声ガイド付きで上演
皆さんは音声ガイド付きの映画やドラマを観たことがありますか? 音声ガイドとは、目の不自由な人も映像を楽しめるように、視覚情報を音声で解説するものです。この度JVTAのバリアフリー講座修了生が主宰する劇団「ものがたりグループ☆ポランの会」が8月の公演『銀河鉄道の夜』で演劇に音声ガイドを付けて上演します。そこで今回は、その舞台に携わる5人の修了生に話を聞きました。
☆「ものがたりグループ☆ポランの会」とは?
彩木香里さん(ものがたりグループ☆ポランの会代表 出演)
「私たちは宮澤賢治の作品のみを上演する劇団で今年10周年を迎えます。これまで『よだかの星』や『やまなし』、『オツベルと象』、『注文の多い料理店』など皆さんが良く知っている代表作のほか、『いちょうの実』などあまり有名ではない作品までさまざまな作品の公演を行ってきました。『銀河鉄道の夜』は2度目の公演ですが、前回はBGMにクラシックな音楽を流していたのに対し、今回はヘヴィ・メタルを採用し、全く違う新たな切り口でお届けします」
☆音声ガイド付きで上演することになったいきさつは?
小川智代さん(ものがたりグループ☆ポランの会 演出 出演)
「約1年前にJVTAで音声ガイドのクラスを受講し、もっと多くの人たちに音声ガイドについて知ってもらいたいと思うようになりました。私たちの舞台では、基本的に1人が原作を全て語る・・・「一人語り」と、地の文、台詞を数人で演じる「語り合わせ」があり、今回は「語り合わせ」での上演となります。でも語りやセリフだけでは、舞台ならではの面白さを伝えきれません。音声ガイドがあれば、目の不自由な方たちにも役者の衣装や舞台の装置、照明などいろいろな要素もすべて楽しんで頂けると考え、今回初めて挑戦することになりました」
☆音声ガイド付きの舞台に出演する難しさは?
飯田荘平さん(主役のジョバンニ役)
「この舞台は、原文の語り手と役者と音声ガイドが三位一体となって完成します。しかし、音声ガイドはFMラジオを通して聴いていただくので、僕ら役者には聴こえていません。映画やドラマなら予めセリフの間の“間”の尺が決まっていますが、舞台は生ものですから、相手の芝居やその日の流れで芝居の“間”が変わってきます。これが一番の難しさですね。基本的にはガイドのための“間”をセリフの合間に3秒とることにしているので、セリフの後で常に「3,2,1」とカウントしながら演じています。もちろん、ガイドを聴いていない人にも違和感を与えないために自然にできるよう心がけていますので、すべてが試行錯誤の連続です」
☆生の舞台に合わせて音声ガイドを読み上げる苦労は?
原ミユキさん(音声ガイドのナレーション担当)
「本番で、語りとセリフとガイドをすべて把握しながら進行するのは、ナレーターの私だけです。毎回、間や動きが変わってしまうので大変ですね。舞台の動きとズレないように臨機応変に対処するのは緊張の連続です。稽古中でもアドリブで役者の動きやセリフが変わってしまった時は、予定していたガイドを敢えて飛ばすこともあります。先日、視覚障害者の方をお招きしてガイドを聴いていただいた際は、『ジョバンニが駆け込んでくる』というガイドの後なのに、実際の舞台上では役者が駆け込んでこなくて『足音が聴こえなかったよね?』とつっこまれてしまったことも(笑)。これは映画やドラマにはないハプニングでしたね」
「公演当日は、開演前に視覚障害者の方を舞台上にお通しして、動く舞台装置に乗ったり、セットに触ったりというツアーも行います。開演前に流れる事前解説でも作品や役者について詳しくご紹介するので、そちらもお楽しみに!」
☆映像とは違い、舞台に音声ガイドを作成する難しさは?
持丸愛さん(音声ガイドの原稿作成 出演)
「台本と演出を元に稽古を見ながらガイドを作ったのですが、その段階では、まだ照明や衣装、舞台セットに関してはまだ固まっていなかったので手探りでした。稽古が進むうちに演出上で決まった変更点などをアップデートして書き直すという作業は、生で行う舞台ならでは難しさだと思います。衣装やキャラクター設定が原作と違う箇所も多いので、ガイドではそれらを解説することを心がけ、視覚障害者の方も晴眼者と同じイメージを持ってもらうためにぴったりの表現を考えました」
☆観に来てくれる皆さんへのメッセージを!
小川智代さん
「当日は視覚障害者の方だけでなく、晴眼者の方もぜひ音声ガイドに触れてみてください。見えているようで見逃していたポイントを言葉が補ってくれますので、私たちの舞台をより深く楽しんで頂けると思います。会場でのラジオの貸し出し数は限られていますが、イヤホン付きのFMラジオをお持ち頂ければどなたでも聴くことができます。
彩木香里さん
「『銀河鉄道の夜』とヘヴィ・メタルの融合というと違和感があるかもしれませんが、私たちはむしろ、シンクロしているように感じています。うちの劇団員でもヘヴィ・メタルが好きな人は、こだわりが強くストイックな人が多いのですが、そんな力強さや生命そのものの叫びなどが、宮澤賢治の人柄や彼が持つエネルギー、『銀河鉄道の夜』に流れる疾走感にも共通していると感じているからです。視覚障害者のモニターさんも「はじめは『宮澤賢治とヘヴィ・メタルってどうなの?』と思ったけど、観終わったら合っていると思ったよ」と話してくださいました。ぜひ、皆さんも会場で体感してみてください!」
ものがたりグループ☆ポランの会 十周年記念公演
銀河鉄道の夜
※この公演は終了しています。
日時:2014年8月31日(日)12時~/17時~(2回公演)
会場:野方区民ホール
料金:前売り、当日共に3500円
公式サイト:http://www.geocities.jp/polan1010/
音声ガイド付きのPVをご覧ください!
★後日、大盛況だった当日のレポートはこちらでご覧ください。
https://www.jvta.net/?p=4412