第19回 :スペイン+放浪記 その5(ポルトガル編)
【最近の私】
お彼岸は山形へ帰省。山形の風物詩である河原での芋煮会を友人と楽しむ。地元紙にはこんな天気予報が…。
「イベリコ豚ちゃん+城塞都市+ポルトガル」と題したハポネサ(日本人女性)3人組の旅は二日目を迎える。この旅を企画してくれたSさんの日程表によると。
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◎第二日目:4月21日(土)
トゥルヒージョ(Trujillo)パラドールで朝食、チェックアウト。ポルトガルへ。
城塞都市マルヴァオン(Marvao)到着、ホテルEl Rei Don Manuelにチェックイン
<ホテルの情報はコチラ>(一泊朝食税込:55ユーロ/1名)
午後はマルヴァオン(Marvao)城塞跡と近くの村カステロ・デ・ヴィデ(Castelo de Vide)へ。ディナーはMarvaoで。
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お姫様気分になれるホテル、トゥルヒージョ・パラドールを後に、我々はポルトガルを目指す。ポルトガルはEU(ヨーロッパ連合)に加盟しているので、加盟国であるスペインとの国境には出入国管理局がない。陸続きのヨーロッパの国を超えるのはいとも簡単になっている。かつて使われていただろう検問所を国境付近で見つけるが、雑草が生い茂り廃屋になっていた。
私がポルトガルを初めて訪れたのは12年前のことだ。「第16回 スペイン放浪記 その3」で12年前のバルセロナ訪問についてふれたが、その時にポルトガル・リスボン市へも訪れていた。予備知識もなく、全く期待がなかったためか、あの風景にウットリしてしまった。空と海の深い青、そこに流れるテージョ川、自然と溶け込む白壁やタイル壁の家屋……。
また、ポルトガルは私が初めて「オリーブは美味しい!」と実感させてくれたところでもある。海沿いのレストランで、おつまみとして出された大きなプリっとした黒オリーブを見た瞬間、なぜか消しゴムを想像してしまった。どうせ味もアメリカで食べたピザに入ってた塩っ辛いあれだろう。出された物は食べる主義なので仕方なく口に運ぶ。するとその瞬間、期待を裏切る新鮮なオリーブの香りが鼻孔を抜け、優しい塩の味が口の中にパァーと広がるではないか。素材の持ち味を活かした優しい味つけはどこか日本料理に似ている。
そういうわけでポルトガルにはかなりの好印象を抱いていた。今回訪れるのは内陸のアレンテージョ地方マルヴァオン市。その風景や食事がどんなモノなのか楽しみだった。
マルヴァオン市は、サン・マメーデ(Sao Mamede)山の頂上にある小さな城塞都市で、「鷹の巣」と呼ばれているらしい。滞在するホテルはマルヴァオン市内にあり、くねくねとうねる山道を登っていく。運転手であるSさんはかなり気を使ってくれたが、車酔いしやすい私はブルーな気分になり風景を楽しむところではなかった。
Sさんの予定ではまず初めにホテルにチェックインするはずだったが、天気が怪しいこともあり、一行は城塞へ向かう。
車から降りると澄んだ空気が気持ちいい。山頂にあるため空気がおいしい。車酔いから少しでも回復しようと深呼吸し、城塞へ向かう。万里の長城のような城壁が突然現れる。巨大な城壁で敵の侵入を防ぐという戦術は万国共通なのだろう。
急な階段の幅は狭く、手すりがない! 観光名所ではあるが、観光客への配慮をあまり感じられない。日本では考えられないほどの安全基準の低さである。ここで落ちたら自己責任ってやつか…。風が強く、城壁につかまらないと、身体をもっていかれてしまいそう。
それにしても、当時の兵士たちは現代人よりも身体が小さかったのか、身のこなしが素早かったのか…。よくこんなところで戦えたものだと感心する。
城壁から一望すると白壁にオレンジ色の屋根の家が立ち並ぶ。沿岸のリスボン市とはまた違った内陸の風景が楽しめる。
お腹もすき、一行はホテルEl Rei Don Manuelにチェクイン。そのままホテルのレストランに直行した。Sさんによると、某トラベルサイトにおけるここのレストランの評価は高いらしい。3人とも空腹感が増すほど、その評価への期待も高まる。
ボーイさんお勧めは、この地方の伝統料理である煮込み料理だった。円盤型の銅鍋であるカタプラーナ鍋で、じゃがいも、豚肉、あさりをトマトベースでゆっくりと煮込む。味はシンプルな塩味で、具材の旨みを上手く引き出した料理だった。
この優しい味はやはり日本料理に似ている。こってりと塩辛いスペイン料理に浸る日々を過ごすなか、心地よく期待を裏切るこの味に、ハポネサ3人は感嘆の声を発してしまう。
ポルトガル料理にまたもややられた瞬間だった。
【written by 浅野藤子(あさの・ふじこ)】山形県山形市出身。高校3年時にカナダへ、大学時にアメリカへ留学。帰国後は、山形国際ドキュメンタリー映画祭や東京国際映画祭で約13年にわたり事務局スタッフとして活動する。ドキュメンタリー映画や日本映画の作品選考・上映に多く携わる。大学留学時代に出会ったスペイン語を続けたいという思いとスペイン映画をより深く知りたいという思いから、2011年1月から7月までスペイン・マドリード市に滞在した。現在は、古巣である国際交流団体に所属し、被災地の子供たちや高校生・大学生の留学をサポートしている。
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