恐怖のハロウィンにようこそ
マイケル・マイヤーズin『ハロウィン』
悪役コラム
毎年10月のハロウィンが近づくと、アメリカでは新作ホラー映画が公開されると聞く。ハロウィンを題材にしたホラー映画といえば、1978年に製作されたジョン・カーペンター監督の『ハロウィン』が最も有名だろう。今回は、その映画を2007年にロブ・ゾンビ監督がリメイクした『ハロウィン』に登場する殺人鬼、マイケル・マイヤーズを紹介したい。
物語は10月31日のハロウィン、イリノイ州の小さな町ハドンフィールドから始まる。学校や家族の中でも孤立していた少年マイケル・マイヤーズは、学校の同級生を撲殺する。続いて粗暴な養父と姉、さらに姉のボーイフレンドも殺害してしまう。姉の恋人が持っていたハロウィンの仮装用マスクを被って、淡々と命を奪っていくマイケル。生き残ったのは幼いマイケルの妹ローリーだけだった。4人を殺したマイケルは、逮捕された後、精神病院に収監され、医師のカウンセリングを受ける。ここまで30分以上をかけて、マイケルの少年期の様子がじっくり描かれている。医師の診断を受けるマイケルの顔つきは暗く、闇を宿した目には希望の光がない。オリジナル版ではマイケルの少年期はほぼ描かれておらず、あくまでも謎の怪物のような存在であった。しかしロブ・ゾンビ監督は、マイケルという殺人犯の過去をリアルに追っていく。怪物としてではなく、マイケルの人間性を描いた点が、オリジナルとリメイク版の最大の違いである。
そして15年後、成人となったマイケルが登場する。…で、でかい。マイケルは2メートルを超えていそうな巨漢となっており、まるでプロレスラーのようだ。オリジナルではここまで大きくなかった。こんな殺人鬼に直面したら、「もうダメだ。助からない」と誰もが絶望させられる威圧感を持っている。これもリメイク版とオリジナル版との大きな違いの一つであろう。
そして精神病棟を脱獄したマイケルは、故郷であるハドンフィールドを目指す。生き残った妹のローリーは別の家族の養子になり、ハドンフィールドで平穏な暮らしをしていた。そこにマイケルがやってくる。ローリーを探すためだ。そしてハロウィンの夜、再び惨劇が起こる。マイケルはマスクを被り、ローリーの友人、そして義理の両親を次々に血祭に上げていく。マイケルが人並み外れた腕力で行う殺人場面は生々しく、痛みが伝わるリアルさがある。
オリジナル版『ハロウィン』は派手なシーンはないが、いつマイケルが登場するかと、じわりじわりと恐怖を感じさせる展開だった。そのオリジナル版のファンからは、激しく暴力的で、なおかつマイケルの少年時代を明らかにしたリメイク版の評価は低い。自分はオリジナル版も好きだがリメイク版も好きである。まず、昨今の映画『ダークナイト』『マン・オブ・スティール』などの“リアル指向”である。コミックのヒーローも活躍するだけではなく、普通の人間のように苦悩している。次に、現代のホラー映画では『ホステル』のように、ハードな残酷シーンを辞さない作品が多い。だからリメイク版がマイケルをあくまでも人間として捕え、暴力描写が多いのは時代の流れではないか。その点で、自分は新たなアプローチで作られた『ハロウィン』を歓迎している。むしろオリジナルと同じようなリメイク映画を作られても見たくないでしょ。だがリメイク版にはオリジナルを彷彿させる場面もあり、もちろんあのテーマ音楽も流れる。2本を見比べてみるのも面白いだろう。
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
【最近の私】『ツイン・ピークス』続編が製作されるというニュースに驚きました。アメリカで2016年に放送予定ですが、どんな内容になるか気になります。
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戦え!シネマッハ!!!!
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