【悪役を語るコラム】
エイリアンin『ヒドゥン』
【最近の私】
コラムに書いた新宿ミラノ座では、12/20~31まで『荒野の七人』『タワーリング・インフェルノ』『E.T.』など、過去に公開した作品を再上映しています。最後にもう一度、足を運びたいと思います。
ハードロックとスポーツカーが好きなエイリアンin『ヒドゥン』
今年12月末をもって、新宿歌舞伎町の映画館、新宿ミラノ座が閉館となる。ミラノ座は1000席を超える大きな映画館で、私も何度となく足を運んだ。そしてミラノ座といえば、東京国際ファンタスティック映画祭(略称「東京ファンタ」)が思い出される。この映画祭は主にホラー、SF、ファンタジー映画を上映し、1985年に渋谷パンテオンで始まった(この映画館も今はない)。その後、東京ファンタは2003年から2005年までミラノ座に場を移して開催された。今回は、この映画祭で1988年に上映された『ヒドゥン』に登場したエイリアンを紹介したい。
『ヒドゥン』は、ある男がロサンゼルスの銀行で強盗をする場面から始まる。銀行で銃を乱射した男はフェラーリに乗り、ハードロックを大音量で流しながら逃走。パトカーとカーチェイスを繰り広げる。この男は、普段は物静かな紳士なのに、なぜいきなり犯罪を行ったのか。実は、宇宙から来たエイリアンが、この紳士の肉体を乗っ取り、操っていたのだった! そしてこの凶悪なエイリアンを追って、正義のエイリアンも地球に来ていた。
悪と正義のエイリアンの戦いという物語はシンプルだ。だが、この映画の魅力の1つは、悪のエイリアンの設定だろう。このエイリアンは悪事を働きながら、次々に別の人間へと乗り移る。肉体が傷ついても大丈夫なので、銃で何発も撃たれても起き上がる。この点は『ターミネーター』みたいだ。さらにスポーツカーとハードロックが好きという変わり者である。そして男性から女性へといった人間だけではなく犬にまで乗り移る。ついには上院議員の体を支配して「大統領になりたい」と政界に進出しようとする。
私のお気に入りは、エイリアンが別の人間に乗り移るシーンだ。まず口から、ニュルニュルとエイリアンが這いずり出てきて、他の人間の口の中へ入っていく。このエイリアンはクモみたいな足を持っており、なかなかグロテスクだ。『ヒドゥン』が作られた80年代はまだCGなどないので、このエイリアンは特殊メイクによって作られている。手作り感があって大変よろしい。80年代は『遊星からの物体X』『死霊のはらわた』『ザ・フライ』など、特殊メイク全盛の時代だったのである。
一方、正義のエイリアンが乗り移ったのは、FBI捜査官ロイドである。ロイドを演じたのはカイル・マクラクラン。彼は寂しげでミステリアスな雰囲気を漂わせており、エイリアンの仮の姿という設定にピッタリだ。年齢不詳の外見なので、劇中でも「高校生みたいだな」と言われるほど若々しい。カイルはこの映画の後に人気TVドラマ『ツイン・ピークス』でもFBI捜査官を演じている。
『ヒドゥン』はSFと刑事映画の要素にカーチェイスと銃撃戦を混ぜ、展開もスピーディーでテンポも良く、私好みの1本である。リドリー・スコット監督の『エイリアン』シリーズ(第1作目は1979年)をはじめ、すでに映画史に幾度となく映画に登場しているエイリアンも、作り方次第では、まだまだ面白くなるという見本だろう。ちなみに、ミラノ座の終了に伴い、12月12日に一晩だけの「東京ファンタ復活2014」が行われる。どんなイベントになるのか、とても気になる。
—————————————————————————————–
Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
—————————————————————————————–
戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!
今回のシュワルツェネッガーは、ひと味ちがう!『サボタージュ』
恐怖のハロウィンにようこそ マイケル・マイヤーズ in『ハロウィン』
すべてを疑え!『フライト・ゲーム』の予告編
【悪役を語るコラム】チャッキー in『チャイルド・プレイ』
こんな事件、今まで見たことがない ジョン・ドウ in『セブン』
【予告編コラム】そして、伝説へ――!『ポリス・ストーリー/レジェンド』の予告編
【悪役を語るコラム】この悪役を偲ぶフィリップ・シーモア・ホフマンin 『M:i:Ⅲ』
▶ ブログ一覧