発見!キラリ★
丸い言葉と尖った言葉
2月のテーマ:ぬくもり
「ぬくもり」という言葉には柔らかくて暖かいイメージがある。それは単に言葉の意味を知っていて具体的なシーンを思い出すからだけではなく、音から感じるイメージも大きく関係しているようなのだ。
最近、テレビなどで取り上げられている「音象徴(おんしょうちょう)」。これは言葉の研究分野のひとつで、その説によると、私たちは言葉の発音から特定のイメージを連想しているという。しかも、それはほぼ世界共通だとか。よく知られているのは、「ブーバ」と「キキ」という言葉から連想するイメージを問う実験だ。丸みのある図形と尖った図形を見せて、どちらがブーバでどちらがキキかと聞くと、国や世代を問わず、ほとんどの人が、丸みのある図形がブーバで尖った図形がキキだと答えるらしい。また、「マルマ」と「タケテ」で同じ質問をすると、丸みのある図形がマルマで尖った図形がタケテだという回答が圧倒的になるそうだ。
これはなぜなのか。専門家いわく、前者は発音するときに口のかたちが丸くなり、後者は鋭い破裂音が含まれているからだという。もちろん単語にはそれぞれの起源があるので、すべてがこの法則に当てはまるわけではないだろう。それでも、例えば人の名前。女性の名前には「まい」、「ゆうな」、「りえ」などm、n、lなど丸みや柔らかさを連想させる音が多いのに対して、男性の名前には「たけし」、「てつや」、「まこと」などtやkの破裂音があり、強くきりっとした印象を与える音が多い。また、母親を意味する単語は、「マザー(英語)」、「マドレ(スペイン語)」、「オモニ(韓国語)」、「ムッター(ドイツ語)」など世界的にmの音がよく見られる。
オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)もこうした傾向がある。「ほんわか」、「ふわふわ」、「もふもふ」は丸みのあるイメージであるのに対し、「ツンツン」、「ギザギザ」、「ちくちく」は尖ったイメージになるなど印象がまったく違う。オノマトペは商品名やCMのキャッチフレーズにもよく使われている。オノマトペに限らず、会社や商品の名前を考えるときにこうした音のイメージにこだわる企業は多いというから、言葉のもつ音とそこから連想するイメージは、実は日常のいろいろな場面で使われているわけだ。
こんな風に考えてみると、言葉がますます面白いものに見えてくる。
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Written by 板垣 七重
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[JVTA発] 発見!キラリ☆ 2月のテーマ:ぬくもり
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。同じ目標を見つめる修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。