Vol.21 一味違うタイのお坊さん
【最近の私】 タイのお正月といえば水掛祭り。今年から規制が厳しくなり、ピックアップ・トラックに水を積んで遊ぶ行為や飲酒が禁止になり、チェンマイっ子たちは少しトーンダウン?!しかし私の村では朝からカラオケや水遊びで十分楽しそう。我が家はのんびり朝からお酒です(笑)。「サワディーピーマイカ!!(あけましておめでとう)」
チェンマイに移ってきた頃、近所のチェンマイっ子が
「日本といえば、”ウマミ”と”一休さん”」
と、発言したのを聞いて、(随分面白いイメージだなぁ)と感じました。それには、一休さんを自然に受け入れられるほど、チェンマイっ子がお坊さんと共存をしているという背景があります。始めの頃は気づきませんでしたが、日々の暮らしのなかで少しずつ分かってきたのでした。(ちなみに、”ウマミ”はタイの「味の素」のCMで親しまれています。)
■村のお寺はみんなで守り、支え、感謝する
チェンマイ人、特にご老人たちにとって、お寺は日本人の近所にある神社と似たような存在のようです。村に根付いていて、何かあれば、お寺に行って寄付をしたり、お祭り事があったり、寄付金でお寺の改築をしたりします。我が家のすぐ近くにもお寺があり、何かあるたびにお坊さんに来てもらってお祈りをしてもらいます。
■タイのお坊さんのイメージはちょっと軽い?!
日本でお坊さんというと、俗世とは一線引いた世界の人、修行に打ち込む落ち着きある人を想像してしまいます。(もちろん例外もありそうですが…) それに比べてタイのお坊さんは、私が観察している範囲では、少々「軽い感じ」に見受けられます。
街中で見かけるオレンジの法衣をまとったお坊さんたちは、平気な顔でコンビニでスナックなどの買い物をしています。先日は、なんとお坊さんが真剣に宝くじを選んで購入している姿を見かけたではないですか!タイのお坊さんという存在は、俗世間のなかに抵抗なく入りこんでいることに、大きな衝撃を受けました。
また、タイのお坊さんは結婚できません。でも、40代後半くらいのうちの村のお坊さんは女性に対して興味津々です。2年前、新年のご挨拶に年下の女性の友人を連れて行った時、お坊さんは明らかに普段よりウキウキして、友人を見る目が違ったのを覚えています。
こうした姿を見ると、どうも(お説教のありがたみも薄れそうだなぁ)と感じてしまうのです…。
■えっ、うちの!?
そして、先日。
私のパートナーと行きつけの飲み屋で、二人でのんびり飲んでいた時のこと。ふと視線に気づき、後ろを振り返ると、色メガネをかけた革ジャン&ジーンズ姿のおじさんがバイクにまたがって、こちらに笑いかけていました。どこかで見かけたことがある顔だなあと記憶をたどっても、どうしても思い出せず。
帰りの車でパートナーに
「あの人どこかで見たことあるよね?」と聞くと、
「うん。あれ、うちのお坊さんだった人だよ」
「……!」
法衣をとると、全然普通のおじさんだ!
法衣と坊主頭が見た目に及ぼすパワーを実感しつつ、そして次に頭に浮かんだことを聞いてみました。
「え、出家してもまた普通の人に戻れるの?」
「うん、戻れるよ。彼は今、ガードマンやってるよ。やっぱり結婚したいんだって」
そっか。2年前の予感は的中。彼は、仏道より女性を選んだんだ…。
でも、自分を偽ってえらそうなお坊さん面をしているよりも、ある意味自分というものを悟って、それに忠実に従ったのだから良いんだろうなぁ。
人生、一度間違った選択をしても、軌道修正ができるタイ社会の気軽さ、大らかさを感じるのでした。
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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美