発見!キラリ★ どんな海も深すぎるなんてことはない(♪)
7月のテーマ:海
海外=overseasという言葉が外国を指していることを改めて思い出すにつけ、たとえ住む場所がどこであっても、“海を越えたところにあるどこか”が外国であるというイメージが多くの人によって共有されているのは確かなようです。2つの世界の間に横たわり、双方を互いから遠く隔てるものとしてある海は、それゆえに長い旅が終わり、また始まる場所として、郷愁や憧れといったロマンチックな思いを私たちの胸にかきたててやみません。
外国映画や海外ドラマは、そんな海を越えて“ここでないどこか”から届き、スクリーンやモニターに映し出されるたびに、私たちの感情を揺さぶってきました。同じように、日本の映画やドラマは海を越えたどこかで、誰かの心を動かしてきたわけです。
ただ、どんなに深く広い海をも越えて誰かに届く力が映像にあるとしても、必ずしも、そのこと自体が「映画は国境を越える」あるいは「映像は言葉の壁を超える」といったスローガンを楽天的に支持することを私たち許すわけではないと、映像翻訳に携わる皆さんならきっと気づいていることと思います。映画も映像も単に国境や言葉の壁を超えたりはしない。それらは言葉に支えられて初めて海を越える。作品と溶け合い、共に響き合う言葉に支えられて超えるのだと。
作品中のセリフだけでなく、制作から流通、宣伝、興行まで、そのすべての過程において、映像は言葉を必要としています。そして映像に関わる言葉に必要とされているのが作品への共感であるならば、それを実現するための仕事はすべて、映像翻訳の仕事であると言えるでしょう。
今この瞬間も生まれ続ける新しい作品や番組がやがて海外へ届けられるとして、そこには必ず映像が言葉とともに超えなければならない海が横たわっています。それでも、映像翻訳者が自分の言葉で映像に寄り添う時、どんな海も決して深すぎることはない(♪)はずです。
※(♪)のついた部分は’Ain’t No Mountain High Enough’を口ずさむつもりでお読みください。
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Written by 石井清猛
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[JVTA発] 発見!キラリ☆ 7月のテーマ:海
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。