発見!キラリ★ 端午節の記憶
8月のテーマ:FESTIVAL
「端午節」という中国の祭日(5月5日)を知っていますか? 日本では5月5日は子供の日なので、日本と同じように男の子のお祝いをする日だと思う人もいるかもしれません。
端午節は端陽節、五月節、夏節などと呼ばれ、中国の三大民俗祭日(春節、端午節、中秋節)の一つ。端午は陰暦5月5日にあたり、とても古い祭日です。中国ではいろいろな過ごし方がありますが、端午といえば欠かせないのはドラゴンボート競技と粽(ちまき)を食べること。なぜそんな風習があるのか、紐解いてみましょう。
旧暦の紀元前278年5月5日、楚の国の詩人である屈原(くつげん)が、湖南省北東部を流れる川、汨羅に石を抱いて身を投じました。楚の民は、船に乗って人望の厚かった屈原の遺体を懸命に捜しますが、見つかりません。そこで、魚などに屈原の遺体が食べられないようにと、川の中に卵や食べ物を川に投げ込みました。これが粽とドラゴンボートにまつわる由来と言われています。
中国には、「十里不同風、百里不同俗」(地域が変われば習慣も異なる)という言葉がありますが、端午節の習俗もまた地方によってさまざまで、その形も異なります。私の故郷では、ドラゴンボートで競い合う習慣はありませんが、健康を祈って青い草を踏む踏青や、五色糸を手首に巻いたり自宅にヨモギや菖蒲(しょうぶ)を掛けたりして厄除けをする風習などがありました。
「踏青」(とうせい)とは5月5日の前夜から寝ないで野外を歩きまわること。今は皆遠くまでは行かず、町中を歩いて、どこかで美味しいものを食べたり飲んだり、カラオケを楽しんだりしているようです。五色糸の別名は長命缕。赤、黄、青、緑、紫の5本の糸を1本に組みあげて手首や足首につけます。端午の後の初めての雨の日に切って、雨の中に捨てると、一年中幸運をもたらすとされています。
端午の朝には子どもたちが学校に皆でゆで卵を持っていく習慣もあります。私にとってはこれが一番楽しかった思い出です。持ち寄った卵をしっかり握って先端部分だけを出してぶつけ合い、割れてしまったら負け。そして端午のお昼は皆でその卵を食べるのです。ちなみに、他の子と“勝負”をするので、皆自分の卵に色を塗って区別できるようにしています。中には鴨やガチョウの卵を持ってくる子もいました。
FESTIVALというテーマで何を書けばいいかを考えたときに、なぜかふと蘇ったのが、幼い頃に友達と卵をぶつけ合っていた記憶でした。この原稿をきっかけに、思いがけず自分の中では忘れかけていた懐かしい思い出を辿ることになりました。
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Written by 李寧
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[JVTA発] 発見!キラリ☆ 8月のテーマ:FESTIVAL
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。