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花と果実のある暮らしinCO

Vol.25 オモイコミ・ニケーション

Vol.25   オモイコミ・ニケーション

【最近の私】タイ語のクラスメートであるドイツ人が、EUでの難民受け入れ問題について、「人道的意味では受け入れるのは当然だが、国民の心の奥底は微妙かな・・・」と言いました。生まれた国や時代で悲劇的な運命を背負ってしまうことに同情を感じると同時に、実際の生活に他国民が入ってくることは、相当難しい状況なんだろうと考えさせられた、重い一言でした。
 

異文化に暮らしていると、特に言葉の問題からか、自分の勝手な思い込みで物事を決めつけてしまっている場面が多々あると気づきます。先日もそんな場面を目の当たりにしました。
 

■思い込みが生む妄想?!

最近知り合った西洋人女性が、「なぜタイ人は私と話をすると笑ってごまかすのかしら?なんだか笑われている気がして嫌だわ。馬鹿にされてる感じ!」というのです。
 

タイ人の気質を多少理解できる身としては、そのタイ人はただ英語を話すのが恥ずかしくて照れ笑いしていただけかもしれないし、話せない自分を笑っただけかもしれないし、もしくは自分で冗談を言って笑ってしまったくらいのことだろうなあと思いました。(もちろんそうでない場合もありますが。) 実際にそのタイ人と話すと、馬鹿にされたと言っていた西洋人が話すのとはまったく違うテンションで、「あー、あの西洋人の言っている意味がわからなくて困っちゃったー(笑)」。さほど気にしていない様子です。
 

そう、両方の言い分を聞いた私には、二人の間の‘温度差’が分かるのです。西洋人女性は、まだタイに来たばかりでタイ語を話せないのも分かりますが、「タイ人が自分を笑った。馬鹿にされた」というのは思い込み。自己防衛心からか、被害意識が増して自分なりのタイ人像をどんどん作り上げ、タイ人を毛嫌いしはじめているのです。
 これは、まさに危険信号!

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■ジョン&ヨーコ!?
 

そして、私とパートナーのナリンとの間にもこんなことがありました。
 

スペイン人の友人に誘われライブ・ミュージックを聴きに行った時のこと。2人でレストランに着くと、同じくライブに来ていたスペイン人の男性を紹介されました。
 

” Hi! I am yoko and this is my partner, Narin.”
と自己紹介をすると、彼の友人はこう返したのです。
” Yoko? …Oh! John and Yoko!”
 

これは、かつて私がアメリカにいた頃、「ヨーコ」と自己紹介をするとよく返された決まり文句。ジョン・レノンのパートナーとして世界中で知られている日本人女性、オノ・ヨーコと同じ名前だね、と言う軽いジョークです。私はすぐにそう理解したので笑顔で返しました。
 

しかし、横に座ったパートナーはなぜか超不機嫌。まさか初対面の男性と親しげに話をしたことに軽く嫉妬でもしたのかなぁなどと考えて、しばらく放っておきました。しかしいつまで経っても機嫌はまったく治らず!
 

しびれを切らした私が「何でそんなに不機嫌なの。みんなも気にしてるよ」と言うと、彼はなんとこう言い返してきたのです。
 

「あいつ、“ジョンとヨーコ”と言ったじゃない。ひどいよ」 。
 

最初私は何が気に障ったのかさっぱり分かりませんでした。でも、彼の説明をじっくり聞いて、ようやく怒りの理由が解明!
 

実は、”ジョン”とはタイ語で”貧しい”という意味なんです。
彼の頭の中では「貧しいやつ&ヨーコだね、ハハハッ」と聞こえたんですね。
 

私が「あのジョン・レノンの“ジョン“だよ!誰も貧しいやつだなんて言ってないよ」と説明すると、彼はびっくりして苦笑い・・・。
 

彼がそう感じた理由はないわけでありません。かつては西洋人と比べてタイ人は貧しいと決めつけるような偏見があったのも事実です。そんな苦い経験が手伝っての早とちりですから、頭ごなしに怒る気にはなれませんでした。
 

日頃の何気ないやりとりから、大きな勘違いや誤解が生じることもる—―。
 

いくつかの事実を目の当たりにしたことで、言葉というツールを上手に使いこなすことの大切さをあらためて実感しました。そして、思い込みや先入観をできるだけ取り除いて、いつも真っ白な状態で目の前の人や出来事に向き合うようにしたいと思うのでした。(でも、たまに思い込みがハッピーにしてくれることもありますが・笑)
 

同時に、冒頭の「最近の私」で紹介したクラスメートの一言が頭をよぎりました。人間同士の思い込みや偏見が目に見えないバリアとなって、EUの難民受け入れ問題はこれからもっと大きな試練を迎えるのではないかと心配になります。それでも何とか解決することを願ってやみません。
 

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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美