発見!キラリ 「流れに乗る、掴む? 見過ごす?」
10月のテーマ:流れ
先日、島根の出雲大社を訪れたついでに、隣の鳥取にある大山まで足を延ばした。目的は生まれて初めての野外キャンプだ。といっても、普段からアウトドアとは縁遠い生活を送る女子3人組の旅なので、いきなりテント設営からというのは厳しい。でもキャンプがしてみたい(やたらと自然の中に身を置きたくなる年齢)ということで、あらかじめテントやタープがセットされ、BBQコンロや食材まで用意された至れり尽くせりのキャンプ場があることを知って、すぐに飛びついたというわけだ。
キャンプ場は街中からそう離れていない山の中にあり、その夜に自分たちが泊まるテントを目にすると一気にテンションがあがった。夕暮れ時になると、あちこちのテントに明かりが灯り、夕ご飯のいい香りが漂い始める。では私たちもとBBQの火起こしをスタートしたもの…やはりYouTubeで仕入れた即席の知識では歯が立たず。着火剤の助けを借りまくり、なんとか食材を焼ける状態になるまでに2時間以上はかかっただろうか。ようやくありついたお肉の美味しかったことといったら! 持ち込んだワインで乾杯した頃には、すっかりと日が落ち辺りは真っ暗になっていた。
ふと空を見上げると、大量の星が空全体にあふれるほど広がり、一斉にチカチカと瞬いている。そうそう、こういうのが見たかったのよとしばらく見とれていると、隣から「あっ 流れ星!」という声がした。
流れ星といえば、誰かが亡くなったことを示す凶兆として捉えられていたという説がある。アンデルセンの『マッチ売りの少女』の中で、自分が死んだとは気づかないまま、空を流れる流れ星を見て「今、誰かが死んだのね」と少女がつぶやくシーンは、子供心に印象的で今でも覚えている。とはいえ大半の人が「流れ星は夢をかなえてくれるもの」と漠然と信じ、願いごとを3回繰り返しているのではないだろうか。いつの間に刷りこまれたのか、世界中の多くの人がなぜか一様にこのロマンあふれる言い伝えを信じている。この日の私たちも例外ではなく、一瞬を見過ごすまいとそれぞれ目を凝らした。
調べてみると、この言い伝えの解釈は諸説あるようだが、まとめるとこんな感じらしい。流れ星を目撃するという滅多にない一瞬のタイミングに願い事をさっと口に出せる人は、それだけ強い願い事が常に頭にあるため、それを実現させるだけの思いや行動力も伴っている。その結果、その人の夢はかなう。根拠のなさそうな言い伝えだなとは思っていたが、確かにこう言われてみれば納得がいく。
さて、果たしてこの夜の私は願い事を言うことができたのか? 結果はノー。運悪くこの時に限ってコンタクトレンズを外しており、友人の「流れ星!」という声でメガネをごそごそ取り出している間に、流れ星は消え去っていたのだ。夢を確実に掴みとるには、いつ何時訪れるか分からないその瞬間のために、常に備えておく必要があるということか。ぼんやりぼやけた目ではせっかくのチャンスが目の前にあっても、見逃してしまうというわけだなあ。
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Written by 藤田奈緒
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[JVTA発] 発見!キラリ☆ 10月のテーマ:流れ
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。