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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第126回 “HIGH POTENTIAL”

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第126回“HIGH POTENTIAL”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

 
予告編:『ハイ・ポテンシャル』 本予告

 

美魔女の天才シングルマザー降臨!!!
本作は、Disney傘下の民放大手ABCが制作しDisney+が配信する、フランスの大ヒットドラマのリメーク。
“High Potential”は美魔女の天才シングルマザーがスカッと謎を解く、痛快なハイパー・ミステリーコメディなのだ!
 
“I have an IQ of 160 with high potential intellectual”
—ロサンゼルス、ダウンタウン
モルガン・ギロリー(ケイトリン・オルソン)はバツ2のシングルマザー。反抗期のエバ、10歳のエリオット、赤ん坊のクロエと毎日格闘している。モルガンの仕事は、LAPD(ロサンゼルス市警)の夜間清掃員(“cleaning lady”)だ。
 
モルガンはいつものようにイヤホンから流れる音楽に合わせて、踊りながら仕事をしている。すると、お尻をデスクに当てて、捜査資料を床にばら撒いてしまった。死体の写真が目に入る。モルガンがいるのは、重大犯罪課(“Major Crimes Division”)のオフィスだった。
 
興味を引かれたモルガンは資料にざっと目を通すと、今度は捜査ボードを見やる。被害者の妻の写真が貼ってあり、“SUSPECT”(容疑者)と書かれている。モルガンは赤いマーカーを取ると、その文字を二重線で消して“VICTIM”(被害者)と書き込んだ。
 
翌朝、担当刑事のアダム・カラデック(ダニエル・サンジャタ)は、捜査ボードの書き込みを見て激怒した。オフィスの監視カメラからいたずらの犯人を割り出す。モルガンは捜査妨害の容疑で拘束された。
 
アダムと上司のセレナ・ソート(ジュディ・レイエス)がモルガンを詰問する。すると彼女は、被害者の妻は犯人ではなく第2の被害者で、殺されたか誘拐されていることをスラスラと証明してみせた。
アダムとセレナは顔を見合わせる。
 
実はモルガンはIQ160、HPI(“High Potential Intellectual”)と呼ばれるギフテッドで、高度な認知能力、知的創造力、映像記憶を持っている。だが会話が苦手なうえに、小さな問題であっても解決するまで自分を制御できなくなる。だから仕事も人間関係も長続きしない。
 
その事件は行き詰まり、セレナは突破口を求めてモルガンをコンサルタントとして起用する。彼女とペアを組まされたアダムはまたまた激怒するが、上司の命令は絶対だ。
 
こうして、ド素人の天才シングルマザーと有能だが堅物のベテラン刑事の凸凹コンビが誕生した!
 
“You see a cleaning lady, I see more” (Selena Soto)
モルガン役のケイトリン・オルソンは、FXの破壊的シットコム“It’s Always Sunny in Philadelphia”で、イケてるバーテンダーのディーを全16シーズン演じている(継続中)。オルソンは、明るくて傍若無人、派手な衣装でいつもミニスカートの天才美魔女役にピタリとハマった。
 
アダム・カラデック役のダニエル・サンジャタは、消防隊ドラマ“Rescue Me”でレギュラーを全7シーズン務め、また渾身の実話ミニシリーズ“The Bronx is Burning”ではヤンキースのスラッガー、レジー・ジャクソンを演じた。
サンジャタとオルソンとの間にはケミストリーが働き、観ていて楽しい。
 
重大犯罪課を率いるセレナ・ソート役のジュディ・レイエスは、メガヒット医療コメディ“Scrubs”で看護師長カーラを8シーズン演じた。本役は久しぶりの準主役級で、オルソンの才能を見抜くタフな上司を好演する。
 
また、バイカー・ギャングドラマ“Mayans M.C.”(本ブログ第61回参照)で主演したJ・D・パルドが、モルガンのボーイフレンドとなるLAPDの用務員トム役でいい味を出している。
 

「エンタメの達人」の会心作!
クリエーター(兼共同脚本)のドリュー・ゴダードは、メガヒットした“Buffy the Vampire Slayer”の脚本でキャリアをスタート。その後もJ・ガーナーをスターにした”Alias”、社会現象化した“Lost”、マーベル・ドラマの最高作“Daredevil”、ユニークな哲学コメディ“The Good Place”(本ブログ第44回参照)などを手がけた。また、マット・デイモン主演のSci-Fi映画『オデッセイ』(2015)の脚色でアカデミー賞にノミネート、『マトリックス・シリーズ』の次作では監督・脚本を務める。本作は、そんな「エンタメの鉄人」の最新作だ。
 
「主人公が警察/FBIを助ける天才」という設定のドラマは意外と多い。ユニークなキャラの天才たちが、オールドファッションの刑事や傲慢な連邦捜査官をやり込める爽快感は格別だ。“Psych”、“The Mentalist”、“White Collar”、“Numbers”、“Elsbeth”(本ブログ第44回参照)などが成功例だが、ハードルは結構高い。視聴者が主人公の天才ぶりにすぐに慣れてしまうので、何らかの差別化が必須となる。
 
本作を差別化するキーは、チャーミングなモルガンのキャラだ。彼女はその魅力を振りまいて視聴者を混乱させ、マシンガントークで直感的な推理や飛躍した論理を強引に納得させる。展開がスピーディなので、筆者のような凡人はこの技巧に翻弄され、多少論理が破綻していても気が付かないか、忘れてしまう。
 
モルガンとアダムとの微妙な関係も見どころのひとつ。直感型のアマチュア探偵と強面のベテラン刑事は、反発し合いながらも互いの欠点を補い、信頼関係を築き、成長し、最強のペアとなる。さらに、用務員トムが参戦して形成される三角関係も微笑ましい。
 
民放のプライムタイム(東部標準時で通常8:00PM~11:00PM)の番組らしく、1話完結で全13話。バックストーリーとして、モルガンの最初の夫ローマンが失踪した経緯が徐々に明かされる。
各エピソードには映画名をもじったタイトルが付き、終盤には気の利いたツイストが用意されている。シーズンフィナーレでは、ゲーム狂の犯人vs.モルガンの超絶な頭脳戦が展開する。
 
シーズン2の制作も決まった。“High Potential”は美魔女の天才シングルマザーがスカッと謎を解く、痛快なハイパー・ミステリーコメディなのだ!
 
原題:High Potential
配信:Disney+
配信開始日:2025年1月23日~4月10日
話数:13(1話 42-46分)
 
<今月のおまけ> 「これは必携、アメリカン・ドラマを楽しむためのお役立ち本!」④
●『地図で見る アメリカハンドブック<第3版>』
(C・モンテス&P・ネデレク著、原書房、2024)
地理学・都市学の専門家2人が、現代のアメリカ社会を図表中心のエビデンスベースで俯瞰する、信頼できる参考書!
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。

 

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第125回 “ANNE RICE’S INTERVIEW WITH THE VAMPIRE”

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第125回“ANNE RICE’S INTERVIEW WITH THE VAMPIRE”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

 

予告編:『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』 本予告

 

映画版を凌ぐ、スタイリッシュなモダン・ゴシックホラー!!!
日本での配信まで2年間待たされたが、その価値は十分にあった。
“The Walking Dead”(本ブログ第10回参照)のAMCが制作、U-NEXTが配信する本作は、トム・クルーズ&ブラッド・ピット共演の映画版(1994)を遥かに凌ぐ面白さ。

“Interview with the Vampire”は、不死の者たちの孤独、苦悩、愛憎を描く究極のメロドラマ。幻想と官能、そして恐怖に彩られたスタイリッシュなモダン・ゴシックホラーなのだ!

 

“How long have you been dead?”
―2022年6月14日、ドバイにあるタワーマンションの最上階
ダニエル・モロイ(エリック・ボゴシアン)は、ルイ・ド・ポワントデュラック(ジェイコブ・アンダーソン)と半世紀ぶりに対面した。ルイの外観は、彼が33歳当時のままだ。パーキンソン病で余命いくばくもないモロイは、ジャーナリストとして最後の仕事、中断していた145歳のヴァンパイアへのインタビューを再開した。

 

―1910年、ルイジアナ州ニューオーリンズ
ルイは父親がフランス系白人、母親が黒人のクレオールだ。父親は5年前に家族4人を残して先立った。長男のルイは母親、妹、精神が不安定な弟の面倒を見ながら、風俗街で複数の売春宿を経営する。
クレオールは黒人の特権階級だが、ジム・クロウ法(黒人分離の州法)の制定で差別が激化している。

 

ある晩、ルイは友人の売春婦リリーに会うために、馴染みの娼館を訪ねた。だが彼女には、古風な服装の裕福なフランス人の先客がいた。レスタト・ド・リオンクールと名乗るその男(サム・リード)に見つめられて、ルイは動けなくなった。

 

その頃、川岸の貧しい地域で、血が一滴もない死体が次々と発見されていた。

 

レスタトと親しくなったルイは、彼の豪邸に招かれた。そこには既にリリーがいる。だがレスタトの目的はリリーではなく、ルイだった。

 

レスタトには人の心を読んで操る特殊な能力があった。強靭で、時間を止め、瞬間移動も行う。人間を食料として狩ることも、仲間にすることもできる。
レスタトは、150歳を超える最強のヴァンパイアだった。

 

妹の結婚式の翌朝、弟がルイの目前で飛び降り自殺をした。
母親はルイを責めた。

 

川岸で、血が一滴もないリリーの死体が見つかった。

 

弟が埋葬された日の夜、傷心のルイはレスタトと会い、ヴァンパイアとなった。
生まれて初めて、彼の心は自由になった。

 

トム・クルーズもブラッド・ピットも要らない!
ルイを演じたジェイコブ・アンダーソンは英国出身、“Game of Thrones”の司令官グレイ・ワーム役で日本でも知られている。本作では、殺しの快楽と良心の呵責の狭間で葛藤する繊細なヴァンパイアをチャーミングに演じる。

 

レスタト役のサム・リードはオーストラリア出身、高い演技力と存在感に驚かされる。リードは「魅力的な殺人者、師匠で恋人でもある両刀使いの創造主」を、強烈なカリスマを持って体現した。

 

アンダーソンとリードの間で生じる強力なケミストリーは、嵐のようなラブストーリーを生み出した。

 

ダニエル・モロイを演じたエリック・ボゴシアンは、“Law and Order: Criminal Intent”、“Billions”、“Succession”(『メディア王 ~華麗なる一族~』)などで見慣れた渋いベテランアクター。本作では、ルイの数奇な運命に魅了されながら、自らの恐怖の記憶を探るジャーナリストを演じる。

 

ルイ&レスタトの娘となるクローディアを演じたベイリー・バスは、『アバター・シリーズ』のレヤ役が代表作。本役は初の準主役級だ。(シーズン2からディレイニー・ヘイルズが代役。)

 

本作にはトム・クルーズもブラッド・ピットも不要だ。ビッグネーム不在のおかげで、役者を意識せずドラマそのものに没頭できる。知名度では劣るが実力あるアクターたちが、映画版にないリアリティを実現した。

 

強烈な中毒性を放つ、耽美で歪んだ愛憎劇!
原作はアン・ライスの同名小説(邦題は『夜明けのヴァンパイア』)で、「ヴァンパイア・クロニクルズ・シリーズ」の第1作にあたる。

 

ショーランナー(兼共同脚本)のロリン・ジョーンズは、“Friday Night Lights”、“Weeds”、“Perry Mason”(2020)など質の高い娯楽作を手掛けてきた。本作では、1900年代初頭のニューオーリンズの陰鬱な空気と、フランス文化の影響が色濃く残るクレオールの世界を見事に再現した。また、ダニエル・モロイのキャラクターに厚みとバックグラウンドを与えて深化させている。

 

観始めた瞬間、ゴシックホラーの世界観、幻想美、官能美に引き込まれる。鮮やかな語り口で描かれる吸血鬼たちの耽美で歪んだ愛憎劇は、磁力のような中毒性を放つ。

 

ゲイであることをひた隠し、白人にへりくだる自分を嫌悪していたルイは、ヴァンパイアになる道を選ぶ。それは、完全な自由と引き換えに絶望的な孤独に耐え、圧倒的なパワーを得る代わりに想像を絶する虚無感に苛まれながら、永遠に生き続けることを意味する。ルイにとってこのインタビューは、自分が存在してきたことの証だ。

 

抑制されたトーンで始まるシーズン1は、怒涛のエンディングで驚愕の惨劇とツイストを畳みかける。計算し尽くされバランスの取れた完璧な仕上がりだ。
シーズン2は、第二次世界大戦直後のパリへ舞台を移す。薄気味悪い「ヴァンパイア劇場」では陰謀と策略が渦巻き、濃密なラブストーリーが展開する。

 

映画版を観ていなくても問題はない。しかし両方を見比べれば、ドラマ版の大胆で緻密な脚本、丁寧な作り込み、ストーリーの奥深さに驚くはずだ。
“Interview with the Vampire”は、幻想と官能、そして恐怖に彩られたスタイリッシュなモダン・ゴシックホラーなのだ!

制作が決定したシーズン3は、シリーズ第2作の『ヴァンパイア・レスタト』が原作となるようだ。

 

原題:Anne Rice’s Interview with the Vampire
配信:U-NEXT
配信開始日:2024年12月20日(S1&S2)
話数:15(1話 41-66分)

 

<今月のおまけ> 「これもお勧め、アメリカン・ドラマ!」(1月~3月)
※本ブログで過去に紹介した作品の新シーズンは除きます。

 

●“The Outsider”(『アウトサイダー』、U-NEXT)
S・キング原作、相反する完璧な有罪証拠と無罪証拠が共存する特異な少年殺人事件をめぐる、スリリングなミステリー・ホラー!

 

●“American Primeval”(『アメリカ、夜明けの刻』、Netflix)
西部開拓時代の無法地帯を舞台に、お尋ね者の子連れシングルマザーと先住民に育てられた白人ガイドとの絆を描く硬派ドラマ!

 

●“Creature Commandos”(『クリーチャー・コマンドーズ』、U-NEXT)
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を生んだジェームズ・ガンが贈る、DCコミックスの非人間モンスター軍団が世界を救う大人向けアニメ!

 

●“Lego Star Wars: Rebuild the Galaxy”(『LEGO スター・ウォーズ/リビルド・ザ・ギャラクシー』、Disney+)
ルーク、ハン・ソロ、レイアなどオリジナルメンバーも多数集結、“Skeleton Crew”よりずっと楽しめるクリエイティブで底抜けに愉快なシリーズ最高作!

 

●“Reacher”(『リーチャー ~正義のアウトロー~』、Amazon Prime)
リー・チャイルド原作、トム・クルーズの映画版より100倍面白い、剛腕ジャック・リーチャー・シリーズの絶好調な第3シーズン!

 

●“Paradise”(『パラダイス』、Disney+)
“This Is Us”(本ブログ第36回参照)のダン・フォーゲルマン(クリエーター)とスターリング・K・ブラウン(主演)が再タッグを組んだ、緊迫の近未来政治スリラー!

 

●“Running Point”(『ランニング・ポイント』、Netflix)
ケイト・ハドソン主演、プロバスケットチームの強豪LAウェーブスを引き継いだ元パーティーガールのキャリアウーマンの葛藤を描くスポーツコメディ!

 

●“Landman”(『ランドマン』、Paramount+)
気鋭のクリエーター、テイラー・シェリダンと曲者アクター、ビリー・ボブ・ソーントンによる、テキサス州のオイル&ガス事業のダイナミズムと醜悪さを活写する硬派の人間ドラマ!

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。

 

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第124回 “MAYOR OF KINGSTOWN”

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第124回“MAYOR OF KINGSTOWN”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

 

予告編:『メイヤー・オブ・キングスタウン』 本予告

 

T・シェリダンとJ・レナーがタッグを組むダーティーヒーロー・クライムドラマ!
硬派な西部ドラマ、犯罪ドラマを作らせたら他の追随を許さないクリエーター&ライターのテイラー・シェリダン。彼が’ホークアイ’ことジェレミー・レナーとタッグを組んだのが本作だ。
 
“Mayor of Kingstown”はParamount+オリジナル。閉鎖的な「刑務所の町」を圧倒的なリアリティで活写する、迫真のダーティーヒーロー・クライムドラマなのだ!
 
“When I say I do a thing, that thing gets fuxxxn’ done”(Mike McLusky)
―ミシガン州キングスタウン
ここは人口4万人、「刑務所ビジネス」で成り立つ小さな町だ。わずか半径16キロ内に7つの刑務所を有し、2万人の囚人が希望も未来もない生活を送っている。
 
マイク(ジェレミー・レナー)はアイルランド系のマクラスキー家の次男だ。生来の頭脳と胆力に加えて、服役経験があるので町のギャングたちとも親交が深い。独身のマイクは山奥の質素なキャビンで一人暮らしをしている。
 
母親のマリアム(ダイアン・ウィースト)は、女囚房で歴史のクラスを受け持つ大学教授。優しい性格の弟カイル(テイラー・ハンドリー)、幼馴染のイアン(ヒュー・ディロン)はともに市警の刑事だ。
 
兄のミッチ(“Friday Night Lights”のカイル・チャンドラー)は「市長」と呼ばれる影の権力者。相談料を取って住民のトラブルを解決する。マイクはミッチの右腕で、汚い仕事を引き受けるフィクサーだ。
 
キングスタウンは囚人、看守、警官、さらに白人至上主義者、黒人ギャング、メキシコ系ギャング、ロシアン・マフィアが微妙な力関係にある。ミッチとマイクの仕事はこれらのパワーバランスを保ち、住民の安全を保障することだ。そのためには、囚人やギャングに便宜を図ることもある。
 
ある日、2人はヴェラ・サンターの訪問を受ける。ヴェラは服役中のロシアン・マフィアの幹部マイロ・サンター(エイダン・ギレン)の妻だ。マイロからの依頼で、山中に隠してある現金20万ドルを掘り出して欲しいという。報酬は1万ドル。
 
2人は無事に金を手に入れ、ミッチが事務所に運び込んだ。
 
その夜、ヴェラの自宅にストーカーが侵入し彼女を殺害した。しかも男は事務所を襲ってミッチを射殺し、20万ドルを強奪した。
 
マイクはミッチに代わる新たな「市長」となった。
マイロ・サンターはマイクへの強い影響力が欲しかった。マイロはマイクへハニートラップを仕掛けるために、NYから腹心のエスコート嬢アイリス(エマ・レアード)を呼んだ。
 
熱くてクールなJ・レナー、妖艶で透明感を醸すE・レアード!
マイクを演じたジェレミー・レナーは、『ハート・ロッカー』(2008)と『ザ・タウン』(2010)で2度オスカー候補となった。ホークアイを演じた『アベンジャーズ・シリーズ』、『ミッション:インポッシブル・シリーズ』など、エンタメ系作品でも活躍する。本作では、町のために自らがモンスターになっていくカリスマ的フィクサーを熱くクールに演じる。
 
マリアム役のダイアン・ウィーストは、『ハンナとその姉妹』(1986)『ブロードウェイと銃弾』(1994)と2本のウディ・アレン作品でアカデミー助演女優賞を受賞している。本作ではタフで厳格だが息子たちを憂える母親を演じ、ドラマの質感を劇的に高めている。
 
マイロ・サンターを演じたエイダン・ギレンはアイルランド出身、”Game of Thrones”のファンなら狡知に長けた’リトルフィンガー’役を忘れることはないだろう。本作では冷徹で狡猾なロシアン・マフィアに見事にフィットした。
 
ベテラン刑事のイアンを演じたヒュー・ディロンはカナダ出身のロックシンガー、本作の共同クリエーター(兼共同脚本)でもある。テイラー・シェリダン作品の“Yellowstone”では保安官役でレギュラーを務める。
 
本作のハイライトは、高級エスコートから最下層売春婦に堕ちていくアイリスを演じたエマ・レアードだ。テレビドラマ初出演ながら、透明感のある妖艶な演技で魅了する。アイリスがマイクに「一度も本当のデートをしたことがない」と告白するシーンは忘れがたい。
 
マイクの脆弱な弟カイル役のテイラー・ハンドリー、黒人ギャングのリーダーでマイクの元服役仲間バニーを演じたトビー・バムテファは、いずれも初の準主役級で、巧みにストーリーに溶け込んでいる。
 
シェリダン節が唸る「敗者のゲーム」!!!
共同クリエーター(兼共同監督兼共同脚本)のテイラー・シェリダンは、『ボーダーライン』(2015)『最後の追跡』(2016)などの脚本で注目された(後者でアカデミー賞ノミネート)。その後ケビン・コスナー主演の西部ドラマ“Yellowstone”、シルベスター・スタローン主演のギャングドラマ“Tulsa King”が大ヒット。さらに“Lawmen: Bass Reeves”、“Special Ops: Lioness”、“Landman”と、今や飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
 
シェリダン作品最大の魅力は独特のリアリティにある。会話が生きている、キャラクターが生きている、BGMが生きている。だからストーリーが躍動する。本作はこの’シェリダン節’に乗って、ギャングドラマ、刑務所ドラマ、刑事ドラマ、ハードボイルド・ドラマと、あらゆるクライムドラマの面白さが堪能できる。
 
マイクが挑むのは、勝者のいない「敗者のゲーム」だ。「秩序ある無法地帯」を築くため、彼は法を破り悪魔とも手を組む。だが人種間、ギャング間の対立はより複雑化し、報復の連鎖となって跳ね返ってくる。もはや善悪の境界線は消え去り、従来の倫理と価値観は通用しない。孤立したマイクは疲弊し、誤りを犯す。
 
ストーリーはマイクと悪党たちとのタフな交渉、宿敵マイロとの対決、アイリスとのヴィヴィッドな関係を縦糸に、ギャング間の抗争、刑務所内の囚人と看守の対立を横糸に展開する。全30話は緊迫感・疾走感が半端なく、一気呵成に畳みかけてくる。
キングスタウンのような「刑務所タウン」はアメリカにいくつも実在する。“Mayor of Kingstown”は、そんな閉鎖的な町を圧倒的なリアリティで活写する、迫真のダーティーヒーロー・クライムドラマなのだ!
 
※ジェレミー・レナーは2年前に除雪車に轢かれてマジで死にかけたが、本作のシーズン3で奇跡的な復活を遂げた。気になるシーズン4は本年後半の配信が期待される。
 
原題:Mayor of Kingstown
配信:Paramount+(Amazon Prime、WOWOWオンデマンド、J:COM STREAM経由)
配信開始日:2023年12月1日(S1)、2024年2月9日(S2)、2024年8月2日(S3)
話数:30(1話 35-65分)
 

<今月のおまけ> 「これは必携、アメリカン・ドラマを楽しむためのお役立ち本!」③
●『警察・スパイ組織 解剖図鑑』
(加賀山卓朗・♪akira著、エクスナレッジ、2024)
タイトルのとおり、映画・ドラマ・小説に頻出する世界の警察・法執行機関・諜報機関を英米中心に網羅した画期的な一冊。イラスト付きの映画・ドラマ・小説の紹介コラムも気が利いている。
 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第123回 “A MAN ON THE INSIDE”(『グランパは新米スパイ』)

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第123回“A MAN ON THE INSIDE”(『グランパは新米スパイ』)
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

 
予告編:予告編:『グランパは新米スパイ』 本予告

 

ハートウォーミングな謎解きコメディwithテッド・ダンソン!
嬉しいことに、奇想天外コメディ“The Good Place”(本ブログ第44回参照)のマイケル・シュア(ショーランナー)とテッド・ダンソン(主演)が、再びタッグを組んだ。

 
“A Man on the Inside”はNetflixオリジナル。老人ホームを舞台に77歳のテッド・ダンソンの魅力が爆発する、ハートウォーミングな謎解きコメディなのだ!
 
老人ホームで潜入捜査をする素人スパイ!
―サンフランシスコ
チャールズ・ニューウェンダイク(テッド・ダンソン)は元カリフォルニア州立大学の工学教授。現在は引退して、裕福だが退屈な一人暮らしをしている。認知症を患っていた最愛の妻を1年前に亡くしてからは、何に対しても興味がわかない。
久しぶりに一人娘のエミリー(メアリー・エリザベス・エリス)が、3人の息子を連れて訪ねてきた。エミリーは何かワクワクする趣味を見つけるよう、無理やりチャールズに約束させた。
 
ジュリー(ライラ・リッチクリーク)はコヴァレンコ探偵事務所の所長だ。彼女は依頼人からの相談に頭を悩ましていた。富裕層向け老人ホーム「パシフィックビュー」で、依頼人の母親がルビーのネックレスを盗まれたという。だが犯人を見つけ出そうにも、聞き取り調査をするつてがない。
ジュリーは一計をめぐらす。新聞広告で「スマホを持つ75~85歳の男性探偵助手」を募集し、パシフィックビューに潜入させるのだ。
 
大勢の応募者の中でジュリーのお眼鏡にかなったのは、チャールズだった。彼はスマホで写真撮影をして、メッセージに添付して送ることができる!
チャールズはジュリーから間に合わせの探偵術を学ぶと、30日の期間限定でパシフィックビューに入居した。もちろん娘のエミリーには内緒で。
 
そこでは、やり手の管理責任者ディディ(ステファニー・ベアトリス)がすべてを取り仕切っていた。
長身で知的、上品で洗練されたユーモアのあるチャールズは、すぐに女性入居者の人気者となる。初日のパーティーでは酔っ払い、ハイになり、デートに誘われ、翌朝は高校時代のように酷い二日酔いで目を覚ました。
だが事件の手がかりは得られず調査は難航する。
 
やがて第2の盗難事件が起きて、チャールズは容疑者にされる!
 
“Welcome to The Ted Danson Show!”
77歳になったテッド・ダンソンだが、チャーミングな物腰、自然体の演技、シャープなせりふ回しは健在だ。代表作はもちろん国民的人気コメディ“Cheers”(1982~)で、元レッドソックスの投手からバーテンダーに転身した主役サム・マローンを全11シーズン演じた。さらに“The Good Place”に加えて、“Becker”、”CSI: Crime Scene Investigation”等に主演、コメディもシリアスドラマも達者にこなすヒットメーカーだ。
本作では、寛容で優しく真摯だがシニカルでどこかオフビートなチャールズに息を吹き込み、ゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされた。
 
ジュリー役のライラ・リッチクリークは、NBCの大ヒット医療ドラマ“Chicago Med”に14エピソード出演しているが、準主役級はこれが初めて。ダンソン相手に“bossy”な私立探偵を生き生きと演じる。
 
エミリー役のメアリー・エリザベス・エリスは、“It’s Always Sunny in Philadelphia”、“Santa Clarita Diet”(本ブログ第91回参照)など、コメディ畑で長い芸歴を持つ。
 
ホームの管理責任者ディディを演じたステファニー・ベアトリスは、“Brooklyn Nine-Nine”、“Twisted Metal”(本ブログ第114回参照)と2作の大ヒットコメディで大いに笑わせてくれた。
 
本作は、さながら老若女性に囲まれた“The Ted Danson Show”だ。
 
4時間でサクサクと一気観!
意外にも本作は実話ベースで、原作はオスカー候補となったドキュメンタリー『83歳の優しいスパイ』(“The Mole Agent”、2020)。
ショーランナー(兼共同監督兼共同脚本)のマイケル・シュアは、“The Good Place”以外にも“The Office”、“Parks and Recreation”、“Brooklyn Nine-Nine”、“Master of None”(本ブログ第21回参照)、“Hacks”など、数々の大ヒットコメディを手掛けてきた。シュアのエミー賞ノミネーションは実に22回に及ぶ(うち受賞3回)。
 
本作最大の魅力は、賢い小学生のような愛すべき高齢紳士チャールズのキャラだ。ジェームズ・ボンドになったつもりのチャールズが、ドジを踏みながらも盗難事件の真相に肉薄していくプロセスは、楽しくて永遠に観ていられる。
 
ホームのユニークな入居者たちとの心の交流を通して、老いの哀しさと楽しさがほのぼのと描かれる。チャールズは自分の存在意義を見出して前向きになっていく。また孤高の入居者カルバート(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)と育む友情も忘れがたい。
「老人にとって最大の脅威は怪我でも病気でもない。孤独なのだ」というメッセージは、前期高齢者の筆者にも突き刺さる。
 
各エピソードはユーモア・ミステリー仕立てで、謎解きも意外に説得力がある。また“Tinker Tailor Older Spy”、“The Emily Always Rings Twice”など、映画をもじった各エピソードのタイトルも遊び心にあふれていて楽しい。
1話約30分で全8話、約4時間ストレスフリーで一気観できる(筆者は2周した)。
 
本作には悪人が一人も登場しない、温かくて心地よくて、観終わると誰かに優しくしたくなるようなスパイドラマ。シーズン2の制作も決まった。
“A Man on the Inside”は、少子高齢化が進む日本では必見。老人ホームの悲哀とユーモア・ミステリーを見事に融合させた、ハートウォーミングな謎解きコメディなのだ!
 
原題:A Man on the Inside
配信:Netflix
配信開始日:2024年11月21日
話数:8(1話 27-34分)
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

Tipping Point Returns Vol.30 Aim for Higher Goals ~高きを仰ぐ~

2025年、皆さんはどのような目標を立てるだろうか。

それは前向きでやる気が湧くようなゴールかもしれない。それでももう一度見直してほしい。私はこう問いたいのだ。「その目標、ちょっと低すぎない?」

これは私自身の猛烈な反省点でもある。ここ数年、仕事上の年間目標にせよ短期目標にせよ、日常生活の目標にせよ、いつの間にか“近いゴール”を設定しがちになっていることに気づいた。例えば「来月までにクローゼットを整理する」とか、「老犬の散歩のコースと時間を短縮する替わりに回数を増やす」とか。(現実的かつ実効性のある目標で、いったい何が悪いの?)と思った人はいるかもしれない。

問題はこうだ。まず、そもそも目標が身近で手軽だという意識から、着手のタイミングを先延ばしにしがちになる。また、目標だけを一点集中で見つめるから全体の調和を見失う。クローゼットは片付いたが古着を詰めたダンボールが部屋の片隅に山積み…。そして最も危険なのは、本当の目的(Aim)を忘れてしまうことだ。老犬の散歩のパターンを変えるのは健康維持と長寿のためだ。必要なのは決めた通りに実行することではなく、日々老犬を見つめ、体調や気候に応じて時間帯や回数を調整することだろう。決めたことを実行するだけという思考停止に陥ると、むしろ老犬の寿命を縮めることになる。

よって正しい目標設定はこうだ。

☞ 「最高に居心地のいい部屋に変える」

☞ 「老犬と一日でも長く、楽しく過ごす」

クローゼットや散歩は数ある手段の一つに過ぎず、目標でもマストと決めつけるものでもない、単なる「To Doリスト」だ。

私のクローゼットや犬の話なんてどうでもいいと思わないでほしい。大事な仕事であっても社会的な活動であっても同じことが言える。今、日本社会に「目標設定とは現実的かつ実行可能なものであるべきだ」という考え方が急激に広がっている。コスパやタイパという価値観がブームを超えて常識になりつつあることも、この潮流上にある現象だと私は見ている。(きっかけはコロナ禍に生じた先行きへの不安感と抑制された行動範囲にあると見ているが、その話は別の機会に譲ろう)

もちろん「手が届く範囲の目標設定」で思い通りの道が開けるならば言うことはない。しかし現実は違う。「頑張っているのに結果が出ない、評価されない」と悩む人は多い。その少なからずの原因が“目標設定の低さ”にあると私は感じている。真面目に生き、仕事に対して真摯に取り組もうとする人ほど、こうした悩みを抱えがちだ。とても悲しく思う。

でも大丈夫だ。問題の解決法はそう難しくはない。目標設定に際し、「Aim for Higher Goals。高きを仰げ」とアドバイスしたい。突飛に聞こえるかもしれないが、これは私の勝手な論ではなく、世界のビジネス研究書などでもよく語られていることだ。

目標を高く設定すると、3つのいいことがある。

まず、それを考えるとワクワクして気持ちがいい。手を動かしていなくても、そのための作業をしていない時でも、達成して周囲に笑顔でがんばったねと言われる自分を想像すればエネルギーが湧き、前向きになれる。

2つ目は、スタートが上手くいく。近くの公園に出かけるのと海外旅行に出かけるのを比べたらよくわかる。前者では何時でも大丈夫、何かあれば家に戻ればいいという油断から、意外に大きな失敗をすることがある。待ち合わせしていた友達が10分の遅刻に驚くほど腹を立てたとか、家の鍵をかけ忘れたとか。一方、後者では念入りに準備をし、健康管理にも気遣い、当然のことながら時間に対して正確に動く。だから気持ちよく進める。

3つ目は、これが一番大事なことだが、失敗が気にならなくなる。むしろ失敗やつまずきをプラスにとらえるマインドが醸成される。目標が遠ければ、到達するルートは様々だ。やってみて上手くいかなくても(この道は行き止まりだな。別の道を行こう)となる。しかも、上司や周囲は高いゴールをしっかり見据えて進む人の失敗を咎めない。「しょうがないなぁ。次がんばろう」で済むか、ケースによっては「失敗は成功の女神だね」などと評価が上がることさえある。

いかがだろうか。共感できる点がもしあったら、2025年の目標を高めに描き直してみてはどうだろう。Aim for Higher Goals。高きを仰ぐ。そうすることで、一歩目の踏み出し方から何かが変わるはずだ。

このコラムを読んでいただいた皆さんの2025年が実り多きものになりますよう、心から願い、応援しています。どうぞ良いお年をお迎えください。(了)

今回のコラムで思ったことや感想があれば、ぜひ気軽に教えてください。

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※アットマークを@に置き換えてください。
☞JVTAのslackアカウントを持っている方はチャンネルへの書き込みやniira宛てのDMでもOKです。

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Tipping Point Returns by 新楽直樹(JVTAグループ代表)
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。
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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第122回 “THE PENGUIN”

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第122回“THE PENGUIN”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

予告編:『THE PENGUIN -ザ・ペンギン-』 本予告

 

これが2024年度のベストドラマ!!!
本作は『THE BATMAN -ザ・バットマン-』(2022)からのスピンオフ。だがバットマンは登場しないし、映画を観ておく必要もない。観た人は忘れたままでいい。

 

“The Penguin”はHBO制作/U-NEXT配信によるリミテッドシリーズ。文句なく本年度のベストワンで、コリン・ファレルが驚異の特殊メークでタイトルロールを演じる。オリジナル映画から完全独立した、極上のハートブレイキング・ノワール(暗黒)ドラマなのだ!

 

牙をむくペンギン!(“We’re gonna be an untouchable”)
―ゴッサム・シティ
シリアルキラーのリドラーが全マフィアのトップにいたカーマイン・ファルコーネを殺害し、さらに防波堤を破壊してから1週間。街はギャング同士の権力争いと洪水の被害でカオス状態になっていた。

 

オズワルド・“オズ”・コブルポット(コリン・ファレル)が’ペンギン’と呼ばれる由来はその歩き方だ。オズの右足は「先天性湾曲足」だったが、貧乏だった母親(ディードル・オコンネル)は治療を受けさせなかった。右のつま先は無残な状態で、今でも歩くたびにひどく痛む。

 

故カーマイン・ファルコーネの右腕だったオズは、表の顔はナイトクラブのオーナー。裏では大人気の目薬型覚せい剤’ドロップ’の製造出荷を管理している。だがカーマインの親族が占めるファミリーの上層部は、オズの功績を認めない。
オズは過小評価されても野心と賢さをひた隠し、ビジネスを学びながら出世の機会を狙っていた。

 

オズはカーマインの宝石と要人への恐喝書類を盗み出そうとするが、跡を継いだ息子アルベルト(アル)に見つかる。オズは酔っ払ったアルになじられて激高し、彼を射殺してしまう。
アルは密かに革新的な覚せい剤のビジネスを計画していた。オズはその事業を横取りし、ゴッサム・シティの暗黒街を牛耳る決意を固める。

 

ビクター(レンジー・フェリズ)は洪水で家族と家を失った若者だ。彼はオズの愛車からホイールを盗もうとしている現場を押さえられてしまう。ビクターはオズに脅されてアルの死体処理を手伝わされる。

 

カーマインの娘ソフィア(クリスティン・ミリオティ)がファミリーに戻ってきた。ソフィアは殺人犯で、精神科病院に10年間拘束されていた。だがゴッサム・シティの混乱で特赦を受けて退院したのだ。
弟思いのソフィアは、行方不明のアルを捜し出そうとする。

オズはソフィアに尻尾をつかまれ、窮地に陥る。

 

コリン・ファレルはどこにいる!
コリン・ファレルについては“Sugar”(本ブログ第116回)でも書いたが、ここ数年で超一流のアクターに大化けした。オズ役のために再び驚愕の特殊メークを施し、声を変え、目で訴える。技巧とパワーで圧倒する演技で、’ペンギン’の心の痛みさえが伝わってくる。来年は本役でエミー賞を取るだろう。
それにしても、何回観てもオズはコリン・ファレルには見えない。ファレルはどこにいる?

 

ソフィア・ファルコーネ役のクリスティン・ミリオティは、メガヒットしたロマコメ“How I Met Your Mother”で演じた主人公テッドの恋人トレイシーが印象的だった。本作では、頭脳明晰でキュートなモンスターを、鬼気迫る表情で演じ抜いた。

 

ビクター役のレンジー・フェリズは、マーベルのスーパーヒーロー・ドラマ“Runaways”に主演した。地味だがいいアクターで、今回はギャングの世界に引きずり込まれていく善良なティーンエイジャーを好演。コリン・ファレルとの間には強いケミストリーが働き、オズとビクターとの疑似親子的な絆は忘れがたい。

 

オズの母親フランシスを演じたディードル・オコンネルは舞台出身、2022年にトニー賞主演女優賞を受賞している。本作では、今も息子を支配する認知症の毒親を怪演する。

 

鉄板のキャスティングが、それぞれ心に深い傷を負うキャラクター4人にリアリティを与えた。

 

ドラマ史に残るショッキングだが納得のエンディング!!!
ショーランナー(兼共同脚本)のローレン・ルフランは、スパイ・アクションコメディ”Chuck”、マーベルのスーパーヒーロー・ドラマ“Agents of S.H.I.E.L.D.”などの脚本を手掛けた。

 

ルフランは映画版の世界観とテイストを忠実に引き継いでいる。オズのキャラを深堀りし、骨太なストーリーを構築し、魅力的で厚みのある登場人物たちを創造し、繊細で緻密でしたたかな脚本に昇華させた。(足の悪いオズが、フレッド・アステアの『トップ・ハット』を繰り返し観るという子供時代のエピソードには泣かされる。)
DCコミックスの一介のヴィランを主役に据えて、オリジナリティのある完成度の高い知的エンタメに仕上げるルフランの手腕は並大抵のものではない。

 

オズは醜悪で鉄面皮、狡猾で残酷、粗野で嘘つきのナルシストだ。感情の起伏が激しいが、逆境には強く決して諦めない。窮地に陥るほど冷静になり、機知と舌先三寸で何とか切り抜ける。
マフィアの世界も格差社会で、幹部が最下層の組員から搾取している。オズにとって、人生とは奪うか奪われるかの生存競争なのだ。

 

だが、彼が垣間見せる弱さ、繊細さ、優しさは観る者のハートにしみ込んでくる。孤独で、母親を偏愛し、屈折したユーモアがあり、ドリー・パートンとリタ・ヘイワースがお気に入り。コリン・ファレルが魂を吹き込んだヴィヴィッドで愛すべきオズのキャラは、本作最大の魅力だ。

 

ストーリーはオズの野望、ソフィアの復讐、ファルコーネ・ファミリーの内部抗争、ライバル組織との確執を巡って神経戦・頭脳戦を繰り広げ、二転三転する。また噓と脅し、信頼と裏切り、共闘と対立、家族の愛憎など、「マフィアドラマの面白エッセンス」がギュッと詰まっている。
そして迎えるのは、ドラマ史上に残る極めてショッキングだが感動的で納得のエンディングだ。

 

“The Penguin”はHBOの面目躍如、文句なく本年度のベストワン。オリジナル映画から完全独立した、極上のハートブレイキング・ノワールドラマなのだ!

 

*本作はゴールデングローブ賞の作品賞、主演男優賞(コリン・ファレル)、主演女優賞(クリスティン・ミリオティ)にノミネートされた(発表は現地時間の1月5日)。

 

原題:The Penguin
配信:U-NEXT
配信開始日:2024年9月20日~11月11日
話数:8(1話 46-68分)

 

<今月のおまけ> 「これもお勧め、アメリカン・ドラマ!」(10月~12月)
年末年始に楽しめる渾身の10作をどうぞ。

 

●“Treme”(『トレメ/ニューオーリンズのキセキ』、2010-2013、U-NEXT)
史上最悪のハリケーンで被災したトレメ地域を舞台に、住民の誇りと音楽のパワーを謳いあげる実話ドラマ!

 

●“Nobody Wants This”(『こんなのみんなイヤ!』、Netflix)
セックストークが売りのポッドキャスターとユダヤ教のラビのすれ違いを描く、ウィットにとんだ大人のロマコメ!

 

●“Bookie”(『ブッキー/ギャンブルなお仕事』、U-NEXT)
強面だがお人好しの非合法な賭け屋2人に次々と災難が降りかかる、LAが舞台の爆笑コメディ!

 

●“Bad Monkey”(『バッド・モンキー』、Apple TV+)
C・ハイアセン原作、V・ヴォーン主演、フロリダを舞台にしたソフトボイルド・タッチの軽妙なクライムコメディ!

 

●“The Lincoln Lawyer”(『リンカーン弁護士』、Netflix)
M・コナリー原作、LAの敏腕弁護士ミッキー・ハラーの活躍を描くエッジの利いた第3シーズン!

 

●“The Diplomat”(『ザ・ディプロマット』、Netflix)
“The Americans”のケリー・ラッセル(!)が駐英米国大使を演じる、迫真の政治スリラー第2シーズン!

 

●“The Sticky”(『スティッキー』、Amazon Prime、米加合作)
カナダで実際に起きた、約28億円相当のメープルシロップ強奪事件にヒントを得たクライムコメディ!

 

●“Music by John Williams”(『ジョン・ウィリアムズ/伝説の映画音楽』、Disney+)
よみがえる名曲と名シーンの数々、映画音楽界の巨人の足跡をたどる必見のドキュメンタリー!

 

●“Elton John Live: Farewell from Dodger Stadium”(『エルトン・ジョン ライブ FAREWELL FROM DODGER STADIUM』、Disney+)
感無量!2022年11月にドジャー・スタジアムで行われた、エルトン・ジョン(当時75歳!)北米最後のコンサート!

 

●“The Comeback: 2004 Boston Red Sox”(『ザ・カムバック:2004 ボストン・レッドソックス』、Netflix)
86年ぶりに「ベーブ・ルースの呪い」を解いてワールドシリーズを制覇したレッドソックス。自らを“The Idiots”と呼んだ不屈のやさぐれ軍団が鮮やかによみがえる、笑いと感動のベースボール・ドキュメンタリー! 

 

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

 

中島唱子の自由を求める女神 第9話 太陽へ向かうひまわり 

中島唱子の自由を求める女神
Written by Shoko Nakajima 

第9話「太陽へ向かうひまわり」
言語の壁、人種の壁、文化の壁。自由を求めてアメリカへ。そこで出会った事は、楽しいことばかりではない。「挫折とほんのちょっとの希望」のミルフィーユ生活。抑制や制限がないから自由になれるのではない。どんな環境でも負けない自分になれた時、真の自由人になれる気がする。だから、私はいつも「自由」を求めている。「日本とアメリカ」「日本語と英語」にサンドウィッチされたような生活の中で見つけた発見と歓び、そしてほのかな幸せを綴ります。

国際結婚でアメリカに暮らす私も移民の一人である。多民族がひしめくニューヨークの街で暮らしていると、貧富の差、そして人種の壁も肌で感じる。

移民の人たちは帰る故郷があり、自ら望んでアメリカで暮らす人たちが多い。しかし、難民の人たちは想像を絶する環境下に身を置きながら、望んでいないのに故郷を追われてしまう。帰る場所を失うということは、自分の今まで生きてきたルーツまでもが奪われてしまう。生きていく権利まで脅かされる。移民の人とは大きく違う。

JVTAで「難民映画祭」の字幕翻訳者の公募を目にしたとき、通り過ぎることができなかった。何か心の中を突き動かされる思いがあって、勇気を振り絞ってこのプロジェクトのトライアルに挑戦した。そして、ミラクルな結果で翻訳チームとして参加できた。そして、運命的な作品に出会えたのである。

永遠の故郷ウクライナを逃れて

「In The Rearview」(邦題:永遠の故郷ウクライナを逃れて)というポーランド出身のマチェク・ハメラ監督の作品である。

ロシアのウクライナ侵攻から3日後、ポーランド出身の監督はバンを購入し、避難する人々の支援を開始することを決意した。後部座席では、避難するウクライナの人々が肩を寄せ合って座り、それぞれの物語を語りだす。

私が担当したパートには、二組の子供を連れて避難する家族が登場する。その中にベラという7歳の女の子とサーシャという4歳の男の子が乗り合わせた。

ベラは年の離れたお兄ちゃんがいて、とても頭の回転がいい。兵役で翌日入隊するという父親に見送られて、母親とお兄ちゃんと一緒に同乗してきた。父との別れも気丈に振舞い、周りの空気の読める女の子だった。サーシャは地図にも載っていないほどの小さな村に住んでいた。大家族と暮らしていてたのだろうか、別れ際に、家に残った祖母はサーシャを抱きしめてお別れすると、遠くから泣きながら彼を見送る。車中から捉えた映像には控えめに泣く祖母の姿があった。そして、この男の子の表情がスクリーンいっぱいに映し出された。無言の表情をカメラがずっととらえている。一枚のポートレイトの絵画のように美しく、繊細にカメラが追っている。この間何も台詞がない。カメラ越しのマチェク監督の震える心が伝わってくる。とても切なく、苦しい。

幼いながらもこの二人は、小さな体と心で、戦争をうけとめている。次は生きて会えないかもしれない。大好きな家族と引き裂かれる。巨大な魔物である「戦争」と彼らも闘っているのだ。

監督はインタビューの中で、映像を最初に編集したときは3時間にも及ぶ仕上がりだったが観やすい長さにするために半分以下の84分に編集したと話している。

砲撃の危険の中、車中で語ってくれた出来事を余すことなく使いたかっただろう。監督にとったら身を削られるような思いで編集したに違いない。

時折、車窓からみた風景が流れるように映し出される。攻撃をうけて退廃した建物や橋、田園風景、青い空と冬の樹々。光る海。愛する故郷を眺める車中の人たちの心情と重なるように風景が映し出される。その風景がストーリーの行間になっていて叙情詩のように美しい。

想像を絶するほどの環境の中で、危険な目に遭遇しながら避難しているのであろう。砲撃もある。地雷も埋められている。いつロシア軍に襲撃されるかわからない。避難民を乗せた車ごと飛ばされる危険性もあったに違いない。しかし、この作品にはそんなシーンは一切ない。人々の物語に焦点をあてたかったからだ。ウクライナの人々が自分の身に起きた体験を世界に通じる窓のようにカメラの前で語りだした。そして、戦争を知らない私たちに、戦争がどれだけ残忍で極悪の暴力であるかを伝えようとしてくれている。

平和学者ヨハン・ガルトゥング氏は「『平和』の対義語は『暴力』である。」と論じている。戦争は究極の暴力である。そして、難民の人たちは虐待や貧困、飢餓という暴力にもさらされている。また、他者への不寛容や偏見、無関心も「文化的暴力」であると定義する。誰の中にも根付く暴力が私たちの中にもある。

世界の各地でこうした暴力を、私たちと同じ人間がうけているという大事なことをこの難民映画祭が教えてくれた。

「人の心の痛みを感じとる力」こそ、混沌としたいまの時代に求められている平和に近づく大きな一歩だと思う。すべての作品が私たちにそう語りかけている。

今年も大きな感動を呼んでいる難民映画祭。この映画祭の意義は大きい。ウクライナの大地で太陽に向かって咲く「ひまわり」のように力強く、私たちの心に平和の種を届けてくれる。

★第19回難民映画祭の上映作品『永遠の故郷ウクライナを逃れて』の字幕翻訳チームに参加

第19回難民映画祭:映像翻訳を学び、奇跡の反戦映画と出会えたー中島唱子さんインタビューはこちら

『永遠の故郷ウクライナを逃れて』 中島唱子さんによるレビューはこちら

第19回難民映画祭・マチェク・ハメラ監督: 映画「永遠の故郷ウクライナを逃れて(原題In the Rearview)」にかける想いはこちら

※翻訳チームの中島唱子さんと青井夕子さんが記事制作のための翻訳に協力

第19回難民映画祭 

オンライン開催 2024.11.7(木)~11.30(土)

公式サイト:https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff

Written by 中島唱子(なかじま しょうこ)

1983年、TBS系テレビドラマ『ふぞろいの林檎たち』でデビュー。以後、独特なキャラクターでテレビ・映画・舞台で活躍する。1995年、ダイエットを通して自らの体と心を綴ったフォト&エッセイ集「脂肪」を新潮社から出版。異才・アラーキー(荒木経惟)とのセッションが話題となる。同年12月より、文化庁派遣芸術家在外研修員としてニューヨークに留学。その後も日本とニューヨークを行き来しながら、TBS『ふぞろいの林檎たち・4』、テレビ東京『魚心あれば嫁心』、TBS『渡る世間は鬼ばかり』などに出演。

◆バックナンバーはこちら
https://www.jvta.net/blog/5724/

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第121回 “ELSBETH”(『エルズベス』)

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第121回“ELSBETH”(『エルズベス』)
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

 

予告編:『エルズベス』 本予告

 

あの超ユニークな弁護士が探偵になった!
CBSの大ヒット・リーガルドラマ“The Good Wife”で、主役の敏腕弁護士たちを震撼させた超ユニークな弁護士がいる。—彼女の名はエルズベス・タシオニ。

 

“Elsbeth”は、冒頭に犯行が描かれる倒叙形式の一話完結型ドラマ。エルズベスが何と探偵役へ転身して殺人犯とNY市警を煙に巻く、底抜けに楽しい推理コメディなのだ!
(「倒叙形式」は英語で“howcatchem”という。知らなかった)。

 

“Welcome to New York!”
—ニューヨーク
演劇学科の教授アレックス・モダリアン(“True Blood”の主演スティーヴン・モイヤー)は、教え子のオリヴィア・チェリーを殺した。肉体関係を持ったにもかかわらず端役しか与えられなかったオリヴィアが、教授を告発すると脅したからだ。

 

モダリアンは完全犯罪を企てた。オリヴィアに睡眠薬を盛って眠らせてから、頭にビニール袋をかぶせて自殺に見せかけた。PCにその自殺法を検索した痕跡を残す。アリバイ工作のために彼女のスマホのSIMカードをコピーして、劇団仲間に自殺を仄めかす偽のメッセージを送った。

 

エルズベス・タシオニ(キャリー・プレストン)は、何故か2階建ての観光バスに乗ってオリヴィアの事件現場にやってきた。’自由の女神’のおかしな帽子をかぶり、大きなカバンを2つ抱え、子供のようなカラフルな服で着飾っている。

 

エルズベスは、実はシカゴで30年以上の経験をもつ成功した弁護士だ。彼女はNY市警が受けた不法逮捕訴訟に伴い、市から1年間の’外部オブザーバー’に任命されたのだった。
エルズベスを警戒する警部のワグナー(ウェンデル・ピアース)は、若い有能な巡査カヤ・ブランク(カラ・パターソン)にお目付け役を命じた。

 

担当の刑事はオリヴィアの自殺として処理しようとしたが、エルズベスは現場を一目見て異議を唱えた。バスルームのごみ箱には使用済みの歯のホワイトニング・シートが捨てられ、キャビネットの避妊具ケースが空になっていたからだ。オリヴィアにはデートの予定があったのだ。

 

エルズベスはモダリアン教授の犯行を疑い、彼にまとわりつき、質問の山で煩わせる。だが、教授は常に先回りをしていて、説得力のある答えを用意している。
そこへ新たな容疑者が浮かび上がった。

 

エルズベスの初仕事は一筋縄ではいかないようだ。
しかも彼女は、腐敗した市警幹部の調査という司法省からの密命を帯びていた!

 

“キャリー・プレストンの天職!”
主演のキャリー・プレストンは、“The Good Wife”のエルズベス役で既にエミー賞ゲスト女優賞を受賞している。また、一世を風靡したヴァンパイアドラマ“True Blood”のレギュラーで、本作でモダリアン教授を演じたスティーヴン・モイヤーと全7シーズン共演した。エルズベス役はNY在住のプレストンにとって天職だ。

 

強面だがソフトな面も見せる警部ワグナー役のウェンデル・ピアースは、犯罪ドラマの名作“The Wire”で刑事バンク・モアランドを全5シーズン演じた。最近では、迫真の政治スリラー“Tom Clancy’s Jack Ryan”(本ブログ第55回参照 https://www.jvta.net/blog/viewer-discretion-advised-55/)で演じた、主人公ジャック・ライアンを支えるCIAの上司ジェームズ・グリーア役も忘れがたい。

 

プレストンとピアースは、共にNYの名門ジュリアード音楽院出身のエリートアクターだ。

 

ミュージカル出演の豊富なカラ・パターソンは、プレストンとの息もぴったり。エルズベスのお守りから親友となり、警官としての素質が開花するカヤ・ブランク巡査を達者に演じる。

 

このレギュラー3人は鉄板のキャスティングだ。

 

『刑事コロンボ』の女性版コメディバージョン!
ショーランナーは、“The Good Wife”とそのスピンオフ“The Good Fight”(本ブログ第43回参照 https://www.jvta.net/blog/viewer-discretion-advised-43/)、“Evil”(本ブログ第78回参照 https://www.jvta.net/blog/viewer-discretion-advised-78/)などを手掛けたロバート&ミシェル・キング。ロバートは共同監督と共同脚本を、ミシェルは共同脚本を務めている。

 

本作は厳密にはスピンオフだが内容的には独立作品で、“The Good Wife”や“The Good Fight”を観ていなくても楽しめる。キング夫妻は舞台をシカゴからNYに移し、弁護士のエルズベスを探偵役に据えた。“The Good Wife”のクールで洗練されたエルズベスは、かなりオフビートの明るいキャラに変えられている。差別化の成功は企画とアイディアによるもので、この時点で面白さは保証されたようなものだ。

 

本作最大の見どころはもちろんエルズベスの愛すべきキャラだ。裕福な五十路(?)のバツイチで、幼稚な服を着て、いつも大荷物を持ち歩く。好奇心旺盛で怖いもの知らず、誰にも臆することなく、煩わしいほどよくしゃべる。その上とんでもなく頭が切れて、何も見逃さず、一度犯人だとにらむと猟犬のように食いついて離さない。
小柄なエルズベスが容疑者や刑事の背後から突然ヌッと現れる場面は、何回観ても笑える。

 

リアリティーショーのプロデューサー、プロテニスコーチ、美容外科医、スタートアップ企業のCEOなど緻密で賢い犯人たちが、エルズベスを見下して墓穴を掘るプロセスは痛快だ。彼らはエルズベスとの頭脳戦を繰り広げるが、いらつかされ、根負けし、最後は自信過剰が致命傷となって完全犯罪を崩される。

 

濃密な推理ドラマではないが、明るいユーモアを散りばめた楽天的なストーリーはサクサクと観られる。最終エピソードは、倒叙ではなく犯人捜し(“whodunit”という)の形式でサービスも満点。エルズベスは初めてスランプに陥り、ファッションショーのモデルになり、感動的なハッピーエンディングを迎える。

 

“Elsbeth”はいわば『刑事コロンボ』の女性版コメディバージョン。あの超ユニークな弁護士が探偵役で殺人犯とNY市警を煙に巻く、底抜けに楽しい推理コメディドラマなのだ!
尚、現地では本年10月からシーズン2が配信されている。

 

原題:Elsbeth
配信:Paramount+(Amazon Prime、WOWOWオンデマンド、J:COM STREAM経由)
配信開始日:2024年9月20日
話数:10(1話 42-43分)

 

<今月のおまけ> “Honorable 10!”
前回発表した”My Top 50 Favorite American Films of All Time!” の選外作品から厳選した10作品(“Honorable 10!”)を紹介します。まだまだありますが、切りがないので今回でお終い。

 

●『一日だけの淑女』(“Lady for a Day”、1933)
F・キャプラ監督、久々に娘と会う貧乏な老婦人をギャングのボスが淑女に変身させる心温まる人情コメディ!
●『めぐり逢い』(“An Affair to Remember”、1957)
C・グラントと共演したデボラ・カーの魅力に圧倒される、NYを舞台にした究極のすれ違いラブストーリー!
●『あなただけ今晩は』(“Irma la Douce”、1963)
B・ワイルダー監督、S・マクレーン&J・レモン主演、気のいい娼婦と生真面目な警官をめぐるラブコメの名作!
●『おかしなおかしな大追跡』(“What’s Up, Doc?”、1972)
B・ストライサンド&R・オニール主演、同じ柄の4つのバッグをめぐる絶品のスラップスティック・コメディ!
●『突破口!』(“Charley Varrick”、1973)
W・マッソー主演、マフィアの資金をうっかり盗んでしまった男の決死の逆転劇を描く痛快なアクション映画!
●『愛と青春の旅だち』(“An Officer and a Gentleman”、1982)
R・ギア&D・ウィンガー主演、安易な邦題でラブストーリーとして大ヒットしたが、実は硬派のヒューマンドラマ!
●『勝利への旅立ち』(“Hoosiers”、1986)
G・ハックマン主演、助演のD・ホッパーの演技が心に残る高校バスケ部を舞台にしたスポーツドラマの金字塔!
●『チキンラン』(“Chicken Run”、2000)
主役の雄鶏ロッキーの声はM・ギブソン、イギリス郊外の養鶏場を舞台にした勇気と感動の冒険アニメ!(英仏米合作)
●『アルゴ』(“ARGO”、2012)
B・アフレック監督・主演、イランの米国大使館で起きた奇想天外な人質奪還作戦を活写する実話ドラマ!
●『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(“Mad Max: Fury Road”、2015)
G・ミラー監督、T・ハーディ&C・セロン主演、ポストアポカリプスが舞台の史上最高・最良のアクション映画!
(米豪合作だが実質的に豪州映画なので「50選」から外した。『マッドマックス2』も傑作だが豪州映画。)

 

<今月のおまけ-付録-> 「これは必携、アメリカン・ドラマを楽しむためのお役立ち本!」②

●『どうなってるの、アメリカ!ニュース&カルチャーがぐっと面白くなるアメリカ最前線トピック30』
(Saku Yanagawa著、大和書房、2024)
著者は高校時代にメジャーリーガーを目指すも挫折、阪大を経てシカゴでスタンダップ・コメディアンになった異色の経歴を持つ。本書はエンタメ、スポーツ、政治、地政学、DEIなど、「アメリカ文化の今」を中立的に幅広くカバーしている。タイトルは軽いが内容は濃く、楽しみながら知識が増える好著。“EGOT”って知ってた?

 

●『ネイティブの真意がわかる 日本人が誤解する英語juiceは「ジュース」じゃない?!』
(Mystery Parrot著、KADOKAWA、2024)
この手のタイトルの英語本は無数にあるが、本書は映像翻訳学習者にぴったり。ドラマで頻出する簡単そうで実は分かりにくい表現を、生きた例文を使って丁寧に説明してくれる。“She had some work done”(彼女は整形手術した)、“a discriminating person”(違いがわかる人)って知ってた? 

 

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

 

中島唱子の自由を求める女神 第8話 Long Shadow 今も私の心の中で輝き続けるひと

中島唱子の自由を求める女神

中島唱子の自由を求める女神
Written by Shoko Nakajima 

第8話「Long Shadow 今も私の心の中で輝き続けるひと」
言語の壁、人種の壁、文化の壁。自由を求めてアメリカへ。そこで出会った事は、楽しいことばかりではない。「挫折とほんのちょっとの希望」のミルフィーユ生活。抑制や制限がないから自由になれるのではない。どんな環境でも負けない自分になれた時、真の自由人になれる気がする。だから、私はいつも「自由」を求めている。「日本とアメリカ」「日本語と英語」にサンドウィッチされたような生活の中で見つけた発見と歓び、そしてほのかな幸せを綴ります。

「理念よりもリアリティーを」「虚像よりも実像を」「事実よりも真実を」今も忘れない山田太一さんの脚本は闇をも光に変えてくれる不思議な力があった。

1983年テレビドラマ『ふぞろいの林檎たち』のオーディション会場で私ははじめて山田太一さんにお会いした。私はその時、まだ高校生だった。

もし、私があの時、山田太一さんに出会っていなければ、俳優にはなっていなかっただろう。まさしく、人生が一変した瞬間だった。浮き沈みの激しい世界の中で地味ではあるが俳優の仕事を続けてこれたのも、山田さんのおかげだ。「あの時、あの子を選んでよかった」と言ってもらいたくて「“岩”にかじりついても、いい役者になろう。いい仕事をしよう。」とデビューからいままで、どんな役でも、必死に取り組んできた。

「どうこのセリフを言うかではなく、なぜこの台詞なんだろう。」そう脚本と対峙することを教わり、演出家からは徹して「役の存在感とリアリティー」を求められた。その経験は、今も変わらない役へのアプローチになっている。

デビューしてから30周年の節目の時、私はお祝いのどら焼きをもって、山田さんと赤坂TBSの近くの喫茶店でお会いした。元気な山田さんにお目にかかったのはその時が最後となってしまった。

その後の10年間は激動だった。パンデミックが襲い、テレビや映画、舞台までも大きな打撃を受けた。撮影が止まり、劇場も閉鎖され、この間人々の生活様式すら変わってしまった。

俳優しか経験のない私が日本映像翻訳アカデミー(JVTA)で映像翻訳の修業をはじめたのは、ちょうど2年前のコロナ禍の時だった。基礎クラスをロサンゼルス校で受講し、JVTA東京校の実践コースを修了した。授業に参加することを目標に、必死に事前課題に取り組んだ。エクセルもZIPファイルも知らない、昭和のアナログ世代の私にはわからないことだらけで、ある意味無謀な挑戦だった。言葉と格闘した時間も映像字幕の細かいルールも、ただ、新しいことを知っていく喜びと嬉しさで毎回の授業が楽しかった。

英日実践コースを無事に修了した時は、プロの翻訳者という山の頂も見えている気がして、現実味に溢れていた。しかし、トライアルの結果がでる度にその希望も消えていく。あれだけ必死に学んだ映像翻訳の字幕のルールも手の平からポロポロと落ちていく。自主学習で復習するしかないのに、気持ちだけ焦り、「プロになるのは難しい、私には無理な挑戦だ。」頭をよぎるのはやめるための様々な言い訳のオンパレードだ。

2023年11月29日。恩師である脚本家の山田太一さんが逝去した。

私が英日の実践コースを修了したわずか、1カ月後の訃報だった。

何度かお手紙を書いて近況をお知らせしようか迷っていた。でもきちんと結果を出してから報告すべきだという躊躇いもあって、もしトライアルで合格してプロになれたら、必ず報告しようと心に決めていた。私の新しい挑戦に、山田さんはキラキラした目ですこし驚いて、きっとあの優しい笑顔をみせてくれるだろうか?もっと、会いたかった。報告したかった。そして、たくさんの感謝を伝えたかった。その時からこの1年間。私はもっと深いところで、山田さんを思い出し、語りかけ、何かを問い続けている気がする。

そして、いまもあの時から報告したかった字幕翻訳に挑戦している。

私が山田作品に出会っていなかったら、映像翻訳に辿り着いていなかっただろう。一つの作品を通して字幕に向き合い、役者として山田作品から教えてもらった言葉の重みをひしひしと感じている。これからも私の側で励まし続けてくれる山田さんの声が聴こえる。

「唱子さん、挫折こそ、宝物だよ。挑戦こそ、あなたを輝かすエネルギーだよ。」

沈みかける太陽が背後から光を放ち私の前に大きな影となって現れる。

山田さんの存在は私の目の前をいつでも照らしてくれるLong Shadowとなって大きな力を与えてくれている。だから、私は言葉の力を信じてこの山を登り続ける。山田さんの笑顔が鮮明に見えるその時まで。

★第19回難民映画祭の上映作品『永遠の故郷ウクライナを逃れて』の字幕翻訳チームに参加

第19回難民映画祭:映像翻訳を学び、奇跡の反戦映画と出会えたー中島唱子さんインタビューはこちら

『永遠の故郷ウクライナを逃れて』 中島唱子さんによるレビューはこちら

第19回難民映画祭・マチェク・ハメラ監督: 映画「永遠の故郷ウクライナを逃れて(原題In the Rearview)」にかける想いはこちら

※翻訳チームの中島唱子さんと青井夕子さんが記事制作のための翻訳に協力

第19回難民映画祭 

オンライン開催 2024.11.7(木)~11.30(土)

公式サイト:https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff

Written by 中島唱子(なかじま しょうこ)

1983年、TBS系テレビドラマ『ふぞろいの林檎たち』でデビュー。以後、独特なキャラクターでテレビ・映画・舞台で活躍する。1995年、ダイエットを通して自らの体と心を綴ったフォト&エッセイ集「脂肪」を新潮社から出版。異才・アラーキー(荒木経惟)とのセッションが話題となる。同年12月より、文化庁派遣芸術家在外研修員としてニューヨークに留学。その後も日本とニューヨークを行き来しながら、TBS『ふぞろいの林檎たち・4』、テレビ東京『魚心あれば嫁心』、TBS『渡る世間は鬼ばかり』などに出演。

◆バックナンバーはこちら
https://www.jvta.net/blog/5724/

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第120回 “FELLOW TRAVELERS” + 『10周年記念特別付録』!

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第120回“FELLOW TRAVELERS” + 『10周年記念特別付録』!
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

 

予告編:『フェロー・トラベラーズ』 本予告

 
ゲイのエリート官僚と若き理想家による怒涛のラブストーリー!
今回で連載丸10年。本ブログが大好きという趣味の良いあなた、ありがとうございます。
本稿末尾の「10周年記念特別付録」もお楽しみください。
 
“Fellow Travelers”は、Paramount+が配信する衝撃と感動のリミテッドシリーズ。
運命の出会いから35年間、激動の時代と醜い政界に翻弄されながら生き抜き、愛し抜いた、ゲイのエリート官僚と若き理想家による怒涛のラブストーリーなのだ!
 
“I don’t know why love can be a sin” (Tim)
—ワシントンDC、1986年
ホーキンス(ホーク)・フラー(マット・ボマー)と妻のルーシー(アリソン・ウィリアムズ)は、自宅に親しい友人を招いてパーティーを開いていた。ホークのミラノ赴任が決まったお祝いだ。
 
そこに、ティモシー(ティム)・ラフリン(ジョナサン・ベイリー)からのパッケージが届いた。ティムはサンフランシスコの病院で、エイズの末期にあった。ホークとの思い出の品を返してきたのだ。
ホークはもう一度ティムに会うため、サンフランシスコに向かった。
 
—ワシントンDC、1952年
ホークとティムは共和党主催のパーティーで初めて会った。アイゼンハワーが大統領に選ばれた日の夜だった。
 
ホークは国務省のエリート官僚だ。名門ペンシルベニア大卒、テニスの学生チャンピオンで、WWIIの英雄でもある。冷淡な野心家で、共和党員だが政治的には中立だ。
ホークはゲイで、アングラのゲイバーで一夜限りの相手を漁っていた。
 
ティムは敬虔なカトリックの理想家だ。大学で政治と歴史を学び、世界をよりよくするために政府機関か新聞社で職を得ようと奮闘している。
 
ティムはゲイで、そのことで深い罪悪感に悩んでいた。
 
ある日2人は偶然に公園で再会し、恋に落ちた。
ホークのコネで、ティムはマッカーシー上院議員のアシスタントとなった。2人は密会を重ねた。マスコミは、ホークがスミス上院議員の娘ルーシーと婚約するのではと騒いでいる。
 
反ソ連を掲げるアイゼンハワーのもと、悪名高い’赤狩り’で共産党シンパを容赦なく追放するマッカーシーは、同時に’同性愛者狩り’(いわゆる’ラベンダー狩り’)を始めた。密かな弱みを持つ同性愛者は「国への脅威」とみなすからだ。国務省、FBI、ワシントン市警の各特別チームによる調査は非情で、毎週自殺者が出た。
 
ホークとティムは、とんでもなく危ない橋を渡っていた。
 
“He wasn’t my friend. He was the man I loved” (Hawk)
ホーク役のマット・ボマーはクールな犯罪ドラマ”White Collar”で、主役のFBIコンサルタントとなる天才詐欺師ニールを全6シーズン演じた。イケメンの陰に高い演技力が隠れがちだが、HBOのTV映画”The Normal Heart”(2014)ではゴールデングローブ賞の助演男優賞を受賞している。今回のホーク役は圧倒的なカリスマを振りかざす力技で、また新しい魅力を見せる。
 
ジョナサン・ベイリーは英国の舞台中心の演技派で、Netflixの大人気歴史メロドラマ”Bridgerton”の長男アンソニー役で顔なじみだ。チャーミングな魅力を振りまきながら時折精悍な表情を見せるベイリーは、若き日のグレゴリー・ペックを髣髴させる。
 
ボマーとベイリーは、実生活でもゲイであることをカミングアウトしている。このキャスティングは絶妙で、加速度的にケミストリーが働いた(これが男の色気というものか)。2人は今年のエミー賞で各々主演男優賞と助演男優賞の候補にノミネートされた。
 
本作では、ホーク&ティムと対比するように、黒人ゲイカップルの新聞記者マーカス(ジェラニ・アラディン)とドラッグクイーンのフランキー(ノア・リケッツ)が活写される。
 
ホークの妻ルーシーを演じるのは、『ゲット・アウト』(2017)『パーフェクション』(2018)『M3GAN ミーガン』(2022)に主演して「新ホラーの女王」と呼ばれるアリソン・ウィリアムズだ。
 
“I love you beyond measure” (Tim)
原作はトーマス・マロンの同名小説。クリエーター(兼共同脚本)のロン・ナイスワーナーは『フィラデルフィア』(1993)の脚本で知られ、”Ray Donovan”、”Homeland”など硬派ドラマの傑作を手掛けている。
本作では、骨太の政治スリラーと波乱万丈のラブストーリーを完璧に融合させる離れ業で、本年のエミー賞脚本賞にノミネートされた。
 
「官僚主義」「白人優位」「男尊女卑」の世界で、ホークやティムのように白人ゲイであることは社会的な自殺に等しい。またマーカスとフランキーのような黒人ゲイは、黒人社会からも差別される二重の苦しみを味わう。
 
かつてゲイであることは命がけで、「恥の人生」を生きることだった。ゲイは治療可能な病気と考えられ、電気ショック療法を受けさせられる者も多かった。またエイズの蔓延に対して、政府は救済策を拒んだ。
本作で頻出する男同士の強烈な性描写は、彼らの抑圧された性衝動の裏返しだ。一瞬一瞬が大切で濃密な人生が、リアリティを持って迫ってくる。
 
マッカーシズムが吹き荒れる´50年代、ベトナム反戦運動が立ち上がる´60年代、ドラッグ文化が席巻しゲイの権利運動が盛り上がる´70年代、そしてエイズ差別が助長される´80年代と、時代の激動がホークとティムの心を蝕んでいく。
 
仮面の家庭と出世にしがみつつ、偽りの人生を送るホーク。直情的に突き進み、死の淵でも強靭さを見せるティム。2人の生き方が、鮮やかなコントラストとなって観る者を魅了する。
 
運命の相手に出会ったものの、差別され、抑圧され、挫折を余儀なくされ、傷ついた者たちは幸福なのか不幸なのか? その問いかけは重く、深い余韻となって残る。
“Fellow Travelers”は、運命の出会いから35年間、激動の時代と醜い政界に翻弄されながら生き抜き、愛し抜いた、ゲイのエリート官僚と若き理想家による怒涛のラブストーリーなのだ!
 
原題:Fellow Travelers
配信:Paramount+(Amazon Prime、WOWOWオンデマンド、J:COM STREAM経由)
配信開始日:2024年8月9日
話数:8(1話 55-67分)
 
『10周年記念特別付録』:My Top 50 Favorite American Films of All Time!
お気に入りのアメリカ映画50選を年代別(順不同)に初公開します。
「好き」を最優先にした結果、小粒な作品が増えて、『市民ケーン』『ゴッドファーザー』『ロード・オブ・ザ・リング』等この種のランキングの常連作品が圏外になりました。
アクションとラブストーリーが好みなのは昔から変わりません。古い作品が多いのは、米国駐在時に古典を貪るように観たから。最近の作品が少ないのは、観たいと思わせる映画が激減して、興味がドラマへ急転換したからです。
50本に絞るのはしんどかった!
 
(1930年代:4作品)
●『或る夜の出来事』(”It Happened One Night”、1934)
F・キャプラ監督の最高傑作、C・ゲーブル&C・コルベールによるロマコメの原点!
●『影なき男』(”The Thin Man”、1934)
W・パウエル&M・ロイ(!)が、おしどり探偵ニック&ノラを演じるシリーズ第1作!
●『オペラは踊る』(”A Night at the Opera”、1935)
S・ウッド監督作、マルクス兄弟によるナンセンス・コメディの最高峰!
●『我は海の子』(”Captains Courageous”、1937)
S・トレイシーの名演が光る、金満家のわがまま息子と漁師との感動的な海洋アドベンチャー!
 
(1940年代:5作品)
●『ヒズ・ガール・フライデー』(”His Girl Friday”、1940)
監督H・ホークス、C・グラント&R・ラッセルによるスクリューボール・コメディの代名詞となった一作!
●『打撃王』(”The Pride of the Yankees”、1942)
S・ウッド監督作、G・クーパーがルー・ゲーリッグを演じた野球映画の最高傑作!
●『心の旅路』(”Random Harvest”、1942)
R・コールマン&G・ガースン主演、戦争で記憶を失った男とその妻が織りなす感動のラブストーリー!
●『カサブランカ』(”Casablanca”、1942)
H・ボガート&I・バーグマン主演、全てのシーンが絵になる究極のメロドラマ!
●『白熱』(”White Heat”、1949)
R・ウォルシュ監督作、J・キャグニーが破滅の美学を体現するフィルム・ノワールの古典!
 
(1950年代:7作品)
●『アフリカの女王』(”The African Queen”、1951)
監督J・ヒューストン、H・ボガート&K・ヘプバーンによる痛快な冒険活劇!
●『バンド・ワゴン』(”The Band Wagon”、1953)
F・アステア&C・チャリシー主演、名曲”That’s Entertainment”を生んだアステア・ミュージカルの頂点!
●『麗しのサブリナ』(”Sabrina”、1954)
監督B・ワイルダー、O・ヘプバーンがW・ホールデンとH・ボガートに求愛されるロマコメの傑作!
●『マーティ』(”Marty”、1955)
E・ボーグナイン主演、徹底的にモテない青年の可笑しくて悲しくて優しいラブストーリー!
●『傷だらけの栄光』(”Somebody Up There Likes Me”、1956)
監督R・ワイズ、P・ニューマンが元世界王者ロッキー・グラジアノを演じた粋なボクシング映画!
●『十二人の怒れる男』(”12 Angry Men”、1957)
S・ルメット監督、陪審員を演じるH・フォンダがアメリカの良心を体現する社会派ドラマの金字塔!
●『リオ・ブラボー』(”Rio Bravo”、1959)
監督H・ホークス、J・ウェイン&D・マーティン&W・ブレナン共演による娯楽ウェスタンの最高作!
 
(1960年代:7作品)
●『ナバロンの要塞』(”The Guns of Navarone”、1961)
A・マクリーン原作、G・ペック&D・ニーヴン&A・クインによる戦争アクションの比類なき傑作!
●『アラバマ物語』(”To Kill a Mockingbird”、1962)
G・ペックが黒人差別と闘う弁護士を演じた、法廷ドラマの代表作!
●『シンシナティ・キッド』(”The Cincinnati Kid”、1965)
”King of Cool”ことS・マックイーンがポーカーの帝王E・G・ロビンソンに挑む、会心のギャンブル映画!
●『ブリット』(”Bullitt”、1968)
S・マックイーン&J・ビセット(!)共演、カーチェイス・シーンで名をはせた爽快な刑事アクション!
●『愛すれど心さびしく』(”The Heart Is a Lonely Hunter”、1968)
A・アーキンの名演が心に残る、絶望的に孤独なろうあの青年の切ないラブストーリー!
●『明日に向って撃て!』(”Butch Cassidy and the Sundance Kid”、1969)
P・ニューマン&R・レッドフォードによる、粋で優雅な「アメリカン・ニュー・シネマ」の決定打!
●『ワイルドバンチ』(”The Wild Bunch”、1969)
W・ホールデン&E・ボーグナイン共演、老いたカウボーイたちの友情と殺戮を描くS・ペキンパーの最高作!
 
(1970年代:10作品)
●『おもいでの夏』(”Summer of ‘42”、1971)
J・オニールの美しさとテーマ音楽が忘れがたい、「青年の初体験映画」の決定版!
●『ダーティハリー』(”Dirty Harry”、1971)
職人監督D・シーゲルとC・イーストウッドの黄金タッグによる、刑事ハリー・キャラハン・シリーズ第1作!
●『探偵<スルース>』(”Sleuth”、1972)
L・オリヴィエとM・ケインの演技が激突、凝りに凝った構成で唸らせる至高の推理映画!
●『シャーロットのおくりもの』(”Charlotte’s Web”、1973)
蜘蛛のシャーロットと子豚のウィルバーを通じて生き物の生と死を考えさせる、心温まる不朽の名作アニメ!
●『ブレージングサドル』(”Blazing Saddles”、1974)
笑いの鉄人M・ブルックス監督の最高作は、尊大な白人社会を豪快に笑い飛ばすパロディ西部劇!
●『カッコーの巣の上で』(”One Flew Over the Cuckoo’s Nest”、1975)
M・フォアマン監督作、J・ニコルソンの凄さを世界に知らしめた衝撃のヒューマンドラマ!
●『狼たちの午後』(”Dog Day Afternoon”、1975)
S・ルメット監督、A・パチーノ(当時35歳!)のパワフルな演技に圧倒される迫真のクライムドラマ!
●『グッバイガール』(”The Goodbye Girl”、1977)
R・ドレイファスとM・メイソンがマンハッタンを舞台に繰り広げる、優しくて真摯な大人のロマコメ!
●『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(”Star Wars: Episode IV – A New Hope”、1977)
オープニングの巨大な”Star Destroyor”に度肝を抜かれた、筆者の「アメリカ映画館初体験作品」!
●『セイム・タイム、ネクスト・イヤー』(”Same Time, Next Year”、1978)
E・バースティン&A・アルダによる、心にしみる不倫ラブストーリー!
 
(1980年代:7作品)
●『ブレードランナー』(”Blade Runner”、1982)
監督R・スコット&主演H・フォード、レプリカント役のR・ハウアーが大ブレークしたSci-Fi巨編!
●『遊星からの物体X』(”The Thing”、1982)
K・ラッセル主演、J・カーペンターの最高傑作は極寒の南極を舞台に圧倒的な恐怖を描くSci-Fiホラー!
●『ターミネーター』(”The Terminator”、1984)
シュワちゃんの代表作となった破壊的Sci-Fiアクション(カイル・リースのラブストーリーでもある)!
●『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(”Back to the Future”、1985)
R・ゼメキス監督、M・J・フォックスの人気を決定づけたスリリングなSci-Fiコメディ!
●『シルバラード』(”Silverado”、1985)
監督L・カスダン、K・クライン&K・コスナー&S・グレンによる痛快な西部劇!
●『リーサル・ウェポン』(”Lethal Weapon”、1987)
娯楽の鉄人R・ドナー監督作、M・ギブソン&D・グローヴァーによる刑事アクション・シリーズ第1弾!
●『ダイ・ハード』(”Die Hard、1988)
B・ウィリスを一気にスターダムに押し上げた、近代アクション映画の金字塔!
 
(1990年代:6作品)
●『許されざる者』(”Unforgiven”、1992)
C・イーストウッド監督・主演、G・ハックマン&M・フリーマン&R・ハリス共演による極上の西部ドラマ!
●『忘れられない人』(”Untamed Heart”、1993)
C・スレーター&M・トメイ主演、悲しくて切なくて号泣するしかないラブストーリー!
●『アポロ13』(”Apollo 13”、1995)
主演はT・ハンクスだが、NASAの主席管制官を演じたE・ハリスの熱演が忘れがたい迫真の実話ドラマ!
●『ブギーナイツ』(”Boogie Nights”、1997)
M・ウォールバーグ主演、‘70年代のポルノ業界をクセ者揃いのキャストで活写するご機嫌なドラマディ!
●『グリーンマイル』(”The Green Mile”、1999)
原作S・キング、M・C・ダンカン&T・ハンクスによる刑務所が舞台の超自然ヒューマンドラマ!
●『アイアン・ジャイアント』(”The Iron Giant”、1999)
WB制作、後にアニメの巨匠となるB・バード監督による感動のロボットアニメ!
 
(2000年以降:4作品)
●『グラディエーター』(”Gladiator”、2000)
R・スコット監督作、R・クロウが大ブレークした魂を揺さぶる壮大な歴史巨編!
●『メメント』(”Memento”、2000)
C・ノーラン監督&G・ピアース主演、記憶障害の男が執念で妻の殺害犯を暴く究極のパズルドラマ!
●『ミリオンダラー・ベイビー』(”Million Dollar Baby”、2004)
C・イーストウッド監督・主演、H・スワンクとM・フリーマン共演によるパワフルで切ないヒューマンドラマ!
●『ラ・ラ・ランド』(”La La Land”、2016)
E・ストーン&R・ゴズリング主演、極上の音楽とほろ苦いロマンスに乗せて贈る現代ミュージカルの最高峰!
 

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。