今週の1本 『ファースト・クラス』
12月のテーマ:華
雑誌の中の世界は、いつも華やかだ。
綺麗でスタイル抜群のモデルさんたちが、「この仕事楽しい~!」と言わんばかりのキラキラした笑顔でページを飾り、読者を虜にする。
年の離れた姉の影響で、中学生のころから大人向けのファッション雑誌を読んでいた私はその華やかな世界に憧れ、自分の年齢よりも何倍も背伸びをして大好きなモデルさんを真似ていた。
だが、ドラマ『ファースト・クラス』は、そんな私の思いを裏切った。
物語は、下町の衣料材料店で働く主人公、吉成ちなみ(沢尻エリカ)が、ふとしたことから憧れのファッション雑誌の編集部で働くことになり、期待に胸を弾ませるところから始まる。しかし、ちなみが足を踏み入れたリアルな現場は“キラキラ”とはかけ離れたとんでもないところだった。編集長、エディター、モデルといったさまざまな立場の女たちが、自分が優位に立つために相手を貶める“マウンティング”=”人間の格付け”をしてくのだ。例えば、ライバルのモデルにマカロンを差し入れして太らせる、嫌いな女の彼氏を横取りする…。こんな謀略で日々マウンティングが繰り広げられていく。
このドラマのようなことが実際あるのかは分からないが(まあおそらくあると思うが)、自分の空想とあまりにもかけ離れた世界にショックを受けつつ、私は大好きな沢尻エリカが崖っぷちから這い上がっていくのを毎週応援していた。
「きれいなバラにはとげがある」という言葉があるように、人も物も、何事も2面性をもっているからバランスが取れているという話を大学の教授から教わったことがある。このドラマを見て、まさにそういうことなのかと痛感させられた。
強烈なキャラクターたちが繰り広げる壮絶な人間模様は毎回見応え充分。ドロドロしたドラマが好きな方にはぜひ見てほしい作品だ。
『ファースト・クラス』
製作:フジテレビ
脚本:渡辺千穂
出演:沢尻エリカ、佐々木希、菜々緒、田畑智子
製作国:日本
放送:2014年
Written by 稲沢知亜紀
[JVTA発] 今週の1本☆ 12月のテーマ:華
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。