発見!キラリ ハーバード大学はなぜ400年も前に設立されたのか?
2月のテーマ:リバイバル/リメイク
昨年の10月に日経ビジネス編集部のお声掛けで『超・反知性主義トークライブ』というイベントを当校で行った。人気コラムニストの小田嶋隆さんとICUの副学長であり、宗教学の権威でもある森本あんり先生とのトークがイベントの中心だったのだが、前半の森本先生の講演も非常に興味深かった。森本先生は「なぜ米国では反インテリの風潮が強いのか?」「なぜ政治が極端な道徳主義に走るのか?」という疑問を米国の歴史や過去の大統領選挙から鮮やかにひもといてレクチャーしてくれた。
中でも僕が興味を引かれたのは、1600年代のピューリタンの入植したニューイングランド(米北東部の6つの州の総称。中心地はボストン)には、大学卒業者が異常なほどに多かったという話だ。1646年までにアメリカにたどり着いたピューリタンのうち、大学卒業者は130名で、そのうちケンブリッジ大学出身者が100名、オックスフォード大学出身者が32名(重複あり)おり、これは当時の植民地人口からするとおよそ40家族に一人という割合になるという。そして彼らの大半は教会の牧師だったそうだ。面白いのは、こうした高学歴の牧師たちがピューリタンの牧師を養成することを第一の目的に、ハーバード、イエール、プリンストンという現代でも世界の大学ランキングで常にトップを占めるような大学を驚くほど昔に設立していたことだ。例えば、ハーバード大学が設立されたのはなんと1636年! 植民地の人口はまだ1万人にも満たず、人々はようやく自分の家を建て、何とか自治政府の体制を整えたというばかりの時代だ。なぜそんな時代に彼らは大学を作ったのか? 森本先生によると、彼らは自分たちが死んでしまった後に、誰が教会で説教をするのかということを非常に心配し、恐れていたためだという。つまり、もしニューイングランドに大学がなければ、牧師になるためにわざわざ大西洋の向こうの旧世界(英国)へ戻り、大学を出て帰ってこなければならない。そんな苦労や危険を彼らは何としても避けたかったからだというのだ。
僕は以前、仕事でハーバード大学について簡単にまとめなければいけない原稿を書く機会があったのだが、この時、米国の歴史を考えると創立年があまりに古くびっくりした記憶がある。その理由が森本先生の話でよく理解できた。たまたま個人的にはこの部分が面白かったが、もちろん冒頭で書いたような話も本当に興味深く、非常に楽しい時間だった。もし、少しでも冒頭の答えを知りたいと思われたら、ぜひ森本先生が昨年出された著書『反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮選書)を手に取っていただきたい。独立前のアメリカ全土を席巻した「信仰復帰運動」(リバイバリズム)が米国の「反インテリ」「極端な道徳主義」の出発点になっていることが分かり、きっと驚かされるはずだ。
—————————————————————————————–
Written by 丸山 雄一郎
—————————————————————————————–
[JVTA発] 発見!キラリ☆ 2月のテーマ:リバイバル/リメイク
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。