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言葉にすらなっていない“自然”を翻訳するということ ~自然を案内する職業「インタープリター」の研修に参加してみた!~

言葉にすらなっていない“自然”を翻訳するということ ~自然を案内する職業「インタープリター」の研修に参加してみた!~

7月のテーマ:意外
 

それは今年の春、ある水族館でのこと。小笠原諸島に生息するウミガメの赤ちゃんの展示を見て感動した僕は、一気に日本の“自然”のとりこになってしまった。日本で生まれたアオウミガメの美しさを知る感動があるように、日本には驚くような自然にまつわる物語がたくさん埋まっているのだろう。
 

「一部の日本人しか知らないような、“自然”の魅力を自分のメディアで発信できたら絶対に楽しいはず!」
 

水族館の展示に触発されたアイデアをもやもやと抱えて過ごしていた僕が「インタープリター」という言葉と出合ったのは、そんな時だった。
 

映像翻訳を知り、学んでいる人なら「インタープリター」と聞いてまず思い浮かべるのは「通訳者(interpreter)」のことだと思う。でも、ここで伝えたいのは日本ではまだまだマイナーな職業「インタープリター(自然案内人)」のことだ。言葉にすらなっていない“自然”から記事を編み出し、情報を発信するにはどうしたらいいのか? そのヒントを求めて、僕はインタープリターの研修に参加してみたのだ。
 

サブ画像
 

インタープリターは
映像翻訳者と似ている

 

一般社団法人「日本インタープリテーション協会」の設立趣意書によれば、インタープリターが行う“インタープリテーション”とは「自然公園や歴史地域、ミュージアム等における、体験を重視した教育的なコミュニケーション」だと定義している。1900年代の初めに米国の国立公園で始まったこの活動は、日本では1980年代から急速に普及。公立の施設や民間の自然学校などにおいて多くの取り組みが行われてきたという。
 

他にも、インタープリターという仕事にはさまざまな説明の仕方がある。ある本(※1)には「自然のささやきを訳して人に伝える仕事」とあるし、研修地・奥多摩にあった訪問者向けの掲示板には「自然が発するメッセージを皆さんにわかりやすく伝える」とある。「コミュニケーションのアプローチの一つ」という人もいる。
 

実際に研修を受ければ、これらの説明のどれもが間違いではないと、はっきりと分かる。だが、JVTAで映像翻訳を学んだことがある自分になら、こうも言えると思うのだ。「インタープリターって映像翻訳者とすごく似ている!」と。
 

一つ目の共通点。それは、どちらともコンテクスト(文脈)を理解し、人に伝えようとする点だ。自然の中には一言では語れないコンテクストがある。例えば動物の足跡。一見、取るに足らない地面のくぼみも、インタープリターが見れば、そこでどんな動物が、どのように過ごしたのか透けて見える。そんな“文脈”から、自然案内人である彼らは自分が聴衆に伝えたいメッセージを切り出し、分かりやすく伝えようとする。
 

もう一つの共通点が、作業自体に含まれるエッセンス(要素)。1992年に『環境インタープリテーション』(英題:Environmental Interpretation)を出版したハム(※2)は、インタープリテーションには、他のコミュニケーションとは異なる4つの要素「TORE」があると提唱している。それは①「テーマがある(Theme)」、②「構成がある(Organized)」、③「受け手と関連性がある(Relative)」、④「楽しい(Enjoyable)」の4つだ。
 

これら二つの共通点にどこか聞き覚えはないだろうか? 僕は英日総合コースⅠの講義で、映像作品のコンテクストを理解することや、言い方は違っていても、“TORE”と同じことが映像翻訳には大切だと講師たちから教えてもらった。
 

きっと映像翻訳も、幾多あるコミュニケーションのアプローチの一つなのだ。誰かを想定し、適切なトーンやマナー、ストラクチャーで映像作品のメッセージを届ける。それが映像翻訳というものなら、インタープリテーションは、その“自然”バージョン。言葉にすらなっていないものの魅力を誰かに伝える翻訳作業だといえよう。言葉にすらなっていないものを伝える方法のヒントは、インタープリターの研修地・奥多摩にもあったし、映像翻訳者になるための職業訓練校・JVTAにもあったのだ。
 

最後に一つ思ったことを。“伝える”のヒントはJVTAが今年の4月から運営している国際コミュニケーションアーツ学院〈GCAI(ジーカイ)〉にもあふれている。
http://gcai.jp/
 

英語を使う30億人に向けて、自分の想いやメッセージを伝える方法をトレーニングするこの学校では、そのコミュニケーションのアプローチを「グローバル・パブリシティ」と名付けている。インタープリテーションはグローバル・パブリシティとも似ていると、僕は思う。どちらも、紹介したいもののコンテクストを大切にするし、グローバル・パブリシティにも前述の「TORE」、すなわち、テーマ(Theme)、構成(Organized)、相手を引きつけるための“関連性(Relative)”の構築法や、発表する本人の楽しさ(Enjoyable)といった要素があるのだ。
 

今なら無料のワークショップも開催している。ぜひ、参加してみてはいかがだろうか? あなたの琴線に触れる、意外な発見があるかもしれない。
 

<3種から選べる参加無料のGCAI〈ジーカイ〉ワークショップ>
 

◆動画制作ワークショップ 
iPadで気軽にチャレンジ! 動画編集ソフトで作る英語の動画
http://peatix.com/event/184339/view
 

◆英語ライティングワークショップ 
EメールやSNSはシンプルで力強い1文が決め手! すぐ使える「トピックセンテンス」の書き方
http://peatix.com/event/184697/view
 

◆英語プレゼンワークショップ 
英語に自信がなくても大丈夫! どんなプレゼンにも使える6センテンス・テンプレートを学ぶ
http://peatix.com/event/184699/view
 

◆“英会話を学ぶ”のではなく「英語の使い方」を身につけ会話力を高める
「アクティブ・デリバリング アドバンス講座」8月3日(水)開講
http://gcai.jp/step/active-delivering
 

(※1)『お仕事熱血ストーリー 感動する仕事!泣ける仕事! 第2期 ⑧大切にしたい!自然のチカラ』(学研出版刊)
 

(※2)サム・ハム (Sam H. Ham)。米アイダホ州立大学天然資源学部資源レクリエーション&ツーリズム学科の教授。
 
ザトウムシ写真
 

インタープリターは前述の「TORE」の原則に則りながら、自分が面白いと思った“自然”を聴衆に向けて情報発信する。写真は映画『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)に登場する“釜爺”のモデルのザトウムシ。
 

Written by 小笠原 尚軌
小笠原写真

エンタメ系情報誌の記者・編集を経てJVTA英日総合コースⅠ、バリアフリー講座を修了。フリーランスとして活動した後、現在はJVTAのPRチームに所属する。
 

[JVTA発] 発見!キラリ☆  7月のテーマ:意外
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。