発見!キラリ スイーツ界の落ちこぼれ:駄菓子屋ノスタルジー
2月のテーマ:スイーツ
試しに「スイーツ」を画像検索してみてください。ピンクを基調としたパステルカラーのケーキやタルトが画面を覆い尽くすはずです。まず出てこないのは駄菓子。スイーツ女子(死語?)の眼中にはないのでしょうね。安いし体によくないし、可愛さにも欠ける。確かにいい大人が食べる物ではありません。でも私はそんな駄菓子が大好きです。もちろん、この歳になって家に常備しているわけではありませんが、ごくたまにスーパーなどで目に入ってしまうあの瞬間です…。無性に欲しくなる。で、買ってしまう。いまだに。
理由は単純で、駄菓子は私にとって子供時代の一番の思い出だからです。幼少期からアメリカで暮らしていたため、家族で一時帰国できる機会といえば夏休みしかありませんでした。長旅を経て会津若松の田舎にある祖父母の家に着くと、荷物を置いて親戚に挨拶するや否や、真っ先に近所の駄菓子屋に飛んで行く。それが年に一度の楽しみでした。本当に小さい頃は「日本に帰る=駄菓子屋に行く」と思い込んでいた気がします(笑)。
そこはササキ屋というお店でした。駄菓子屋に入ったことがない方も想像はできるでしょう。そのイメージ通りです。『ALWAYS 三丁目の夕日』とまではいかない、ほどほどのレトロ感。外観は一軒家で、玄関を通るともうそこが商品売り場。4畳ほどの薄暗いスペースにあらゆる駄菓子や玩具が所狭しと並び、薄いホコリの膜が一面を覆っているような店内でした。今思い出すとたしかそんな様子だったかと…。でも当時、目に映っていた光景はまるで違って、そこは楽園そのものでした。
甘い物に絞って挙げると、フィリックスガム、ヨーグル、すもも、きなこ棒、プチプリン(プッチンプリンではなく)などが好みでした。中でも好物だったのがさくらんぼ餅。透明なプラスチックケースに入った四角くて小さなピンク色の餅。爪楊枝で食べる“あれ”です。
あとは夏休みといえばやはりアイス。私はもっぱらスイカバーとガリガリ君しか食べませんでした。味も好きでしたが、なによりこの2つは当たり付きだったからです。滅多に出ませんが、当たった時は気絶するほど嬉しいことでした。ロングセラーでまだまだ健在ですが、今でも当たり棒は入っているんでしょうか? 仮に当ったとしても、これまたいい大人がコンビニの店員さんに「当たりました! もう1本ください」とは言いにくいですよね…。
ササキ屋の番人は、店の奥に一人ひっそりと佇む無愛想なおばちゃん。年がら年中、炬燵にあたりながら入り口のほうを眺めていたように記憶しています。夏だったのでそんなはずはないのですが…。炬燵だったか低いテーブルだったか定かではありませんが、レジはその上に置いてあり、そこから離れることなく上半身だけで切り盛りできるような配置になっていました。炬燵と一体化したおばちゃんのふくよかなフォルムは、『機動戦士ガンダム』に出てくるジオングというモビルスーツにそっくりで、その近寄りがたい存在感も含めて、私は密かにファンでした。
年々、ササキ屋に立ち寄る頻度は減り、高校生になる頃にはすっかりご無沙汰になります。それでも年に一度、帰国してお店の前を通る度にあの頃と同じ懐かしさが蘇りました。それが昨年末、久しぶりに会津に戻るとお店がなくなっていました。もしかしたら私が気づかなかっただけで、だいぶ前に閉店していたのかもしれません。もう何年もお店に行っていなかったくせに、急に大切なものを失ったような悲しさが一気に込み上げてきました。何よりもおばちゃんの行方が気がかりです。
ネットで調べてみましたが、予想通りササキ屋の情報は何もヒットしません。その代わりに嬉しいニュースを見つけました。記事(※)によると、会津に住む子どもが「駄菓子カフェ」なるものを発案し、タイムリーなことについ先日の1月28日に開店したばかりみたいです。町興し事業の一環として「商店街のにぎわいを創出、古里への愛着を育むのが狙い」とのこと。
駄菓子と一口に言っても、時代や地域によってそのイメージは異なるかもしれませんが、大人になっても心に残るあの懐かしさは共通している気がしますね。「駄菓子カフェ」を作った子供たちが今、かつての私のように同じ故郷でその思い出づくりの真っ最中だと思うと何ともワクワクしてきます。会津若松は、野口英世ゆかりの地である前に、白虎隊が戦った地である前に、私にとっては大好きな駄菓子屋に通ったノスタルジーの楽園であり続けます。
(※)記事はこちら
子ども発案「駄菓子カフェ」会津若松にオープン にぎわい創出へ
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20170129-144979.php
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Written by 相原 拓
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[JVTA発] 発見!キラリ☆ 2月のテーマ:スイーツ
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。