発見!キラリ 幸せのカギ、“オッサン叫び”のケイジくん
8月のテーマ:鍵
生きていると「うわああああああ――――ッ!!」と叫びたくなること、ありますよね。その気持ちを代弁するかのように叫ぶのは、今、メディアでも話題のフクロテナガザルのケイジくん。それほど動物マニアでない私でさえも、ケイジくんを初めてTVで観た時には、とりこになってしまいました。
その姿は、“自暴自棄になった人間”そのもの。
「うわああああああ――――ッ!!」に込められたヤケッパチぶりには、“(私の代りに叫んでくれて)ありがとう!”とすら言いたくなります。人とほぼ変わらないその感情表現に、類人猿は人類に最も近い動物なんだと改めて実感させられます。
ケイジくんに会えるのは、名古屋市東山動植物園。
愛知県人にとっては、子供の頃からおなじみの動物園です。
実は私、6歳になるまでこのすぐそばで生まれ育ちました。
幼少期は両親に連れられ、毎週通っていた思い出の地でもあります。
そしてこの動物園、なんと今年の3月で開園80周年を迎えたとのこと。
これもきっと何かの巡り合わせ――と勝手に思いこみながら、9歳息子と電車・地下鉄を乗り継ぎ、行ってきました、ケイジくんのもとへ!
東山動植物園を訪れるのは、かれこれ何年ぶりでしょう
(年齢がバレるのでとりあえず30年以上ぶり、としておきます…笑)。
入園門前をくぐると、かつて何度と見たであろう光景が広がります。リニューアルされ様変わりしているのでしょうが、なぜか懐かしい。父にしてもらった肩車や、毎度飽きずに買ってもらったオモチャ、入園門前の横断歩道の『通りゃんせ』のメロディ…おぼろげな記憶が断片的に浮かんできます。
園内は面積約60ヘクタール(上野動物園は14.3ヘクタール)ととにかく広く、動物園ゾーン、植物園ゾーン、遊園地ゾーンに分かれています。
ケイジくんの園舎へは徒歩15分ほど。午前10時のアスファルトの照り返しはかなり堪えましたが、あの声を聞き逃してはならないという焦躁感に駆られ、足早に向かいました。
ところがようやく着いた園舎の前、檻の中は空っぽでした。
ケイジくんと妻のマツさん、なんと猛暑のせいで屋内にこもりっきり…。一歩も屋外に出る気配を見せません。それどころかガラス越しのケイジくんは、見物客に向け舌をニョッキっと出し、得意のアッカンベーを始めています。まるで“そんなに簡単には聴かせないよ~”とからかっているかのよう。
(飼育員さん曰く、これは親しみの挨拶だとか)
そもそもケイジくんがこれほど大人気になったのは、マツコ・デラックスさんと村上信五さん(関ジャニ∞)が司会の人気バラエティ番組『月曜日から夜ふかし(日本テレビ系列で毎週月曜夜23時59分~放送))』の中で、「愛知県の動物園にいるフクロテナガザルの声が“オッサン”みたいだ」と紹介されたのがきっかけでした。
ケイジくんが叫ぶのは、警戒心を抱いたり敵意をむき出しにしたりする時――とのことで、番組でマツコさんと村上さんの写真パネルをケイジくんに見せ、どんな反応をするか実験をおこないました。マツコさんのパネルには好意を示したケイジくんでしたが(もしかしてメスと認識したのかもしれません)、村上さんのパネルを見ると猛反撃…あの“オッサン叫び”を始めたんです。
(ジャニーズ人気アイドルへの敵対心なのでしょうか)
そういった理由で、見物客たちはなんとかケイジくんに叫んでもらおうと、ケータイ画面に村上さんの画像を表示させ、ケイジくんに必死に見せていました。あいにく効果のほどは見られませんでしたが…。
今度こそ…と期待を胸に、時間を空けては何度かケイジくんのもとへ向かいましたが、いっこうに屋外へ出る様子はありません。おそらく撮影に来ていたであろう、どこかのテレビ局のカメラクルーも、重そうなカメラを担ぎあきらめて帰っていきました。
そして奇跡が!と言いたいところですが、結局この日は聞けずじまい。とても残念でしたが、息子と子供の頃の思い出の地を訪れ、かつて両親と共有した時を再現できたことは大きな喜びでした。
あの頃から回り続けている観覧車、さびれたミラーハウス、年季の入ったジェットコースター、ほとんどホラーのビックリハウス…、なつかしい乗り物に息子と一緒に乗りながら、デジャヴを見たような気持ちでした。
帰る際、園内ショップで開園80周年記念ロゼット(アーティスト高木耕一郎さんデザイン)とケイジくんの叫び声QRコード付きポストカードを買いました。
“思い出勲章”と名付けられたこのロゼットを眺め、「うわああああああ――――ッ!!」叫びを聞き、このやるせない夏の日に感じた幸せをときどき思い出します。(でもやっぱり生で聞きたかったな~、“オッサン叫び”)
「おっさんの叫び声」?フクロテナガザル人気 名古屋・東山動植物園
(2017/07/25 朝日新聞DIGITAL)
https://www.youtube.com/watch?v=6It4Lo21VoQ
東山動植物園 公式サイト
http://www.higashiyama.city.nagoya.jp/
※“イケメンすぎるゴリラ”のシャバー二くんにも会えます!
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Written by 中塚 真子
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[JVTA発] 発見!キラリ☆ 8月のテーマ:鍵
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。