発見!キラリ 映像翻訳の世界に入って10年
2月のテーマ:10年
10年前、人生を変える決断をした。会社を辞めて上京し、JVTAに通うことにしたのだ。10年前の今頃は新しい世界への期待と、本当に後悔しないだろうかという不安でいっぱいだった。
翻訳に興味を持ったのは高校生の頃。だが、仕事にするのは難しいと考えて翻訳とは関係のない仕事に就いた。仕事にも慣れてきて少し余裕が出てきた頃、ふとこのまま5年、10年と同じ生活をするのかなと考えた時に暗澹たる気持ちになり、「私にとっての一生の仕事ではないのかも」と感じた。そんな時に頭をよぎったのが映像翻訳だ。当時住んでいた地域には映像翻訳のスクールはなく、勢いのままに上京する勇気もなかったので、まずは通信講座を始めることにした(当時の通信講座は今のWeb講座とは全く別物で、VHSで課題を受け取り、郵送で解答を送るという超アナログ形式だった)。「最後までこの講座をやり遂げ、やっていけそうだったら上京しよう。最後まで続けられなかったらきっぱり諦めよう」と決意。無事に講座を終える頃には、映像翻訳の楽しさと奥深さにすっかり魅了されていた。
そうしてJVTAの通学コースに通い始めたのが2008年4月。通学中は課題に追われ、あっという間に時間が過ぎていった。そろそろ実践コースも終わろうかという頃、猛烈な焦りに襲われた。今までの課題を見る限り、自分の実力ではトライアル一発合格は難しいと感じていたからだ。「すぐに翻訳者になれなくても、映像翻訳業界に留まって経験を積む必要がある」。そう感じて何とか字幕制作会社に入った。字幕チェックの仕事を通して、字幕の良し悪しや引っ掛かるポイントなどが分かってくると同時に、自分の弱点も見えるようになってきた。トライアル合格までには予想より長い時間がかかってしまったが、制作会社で字幕を見まくった経験は無駄ではなかったと感じている。
今では再びJVTAに戻り、受講生や修了生の皆さんをサポートする立場にいる。しかも講師までさせてもらっているとは10年前には想像もできなかった。入学を検討されている方や受講中の方、トライアルに挑戦中の方などいろいろな方の話を聞く機会に恵まれているが、どの言葉もとても共感できるものばかりだ。「必ずうまくいきますよ」などと軽々しくは言えないが、語学や映像作品が好き、映像翻訳の勉強が楽しいという気持ちがあるなら、ぜひ映像翻訳の世界に入って、粘り強く居続けてほしい。今、ひとつ言えることは、10年前の決断は間違いではなかったということだ。
Written by 満仲由加
[JVTA発] 発見!キラリ☆ 2月のテーマ:10年
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。
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