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【コラム】JUICE #6「三日坊主なあなたへ」●大橋陽香

【コラム】JUICE #6「三日坊主なあなたへ」●大橋陽香

何を隠そう、私は三日坊主である。始めたはいいものの、すぐに飽きてしまったことが多すぎて、ここで例を挙げるのも面倒なほどだ。数えるのも飽きた。もちろん、継続することが大事だとは重々承知している。しかし、どうにも続かないのである。
 

イタリア語の“永遠のビギナー”
そもそも、「三日坊主になりがちなもの」とはなんだろう。なかなか習慣になりにくいものナンバーワンといっても過言ではないもの。それは、語学の勉強ではないだろうか。大人になってからは特に、なんだか記憶力も鈍ってくるし、毎日仕事で疲れているし――やる気満々でスタートしたはずなのに、いつの間にか習慣が途絶えてしまうことも多い。そう、私のことである。私というやつは、何度イタリア語の勉強を始めたか知れない永遠のビギナーなのだ。NHKラジオ講座のテキストを買い、毎日ラジオを聴き…という習慣が1週間か2週間で崩れ、女性名詞・男性名詞という未知の感覚に戸惑い、簡単に挫折すること数回。入門編の最初の方ばかりを何度も勉強しているので、挨拶ばかりが上達した。どう頑張っても、カフェでコーヒー1杯を注文することくらいしかできない。いや、ティラミスくらいならなんとかいけそうだ。でも数字が分からないから、お金は払えない。クレジットカードでなんとかしたい。
 

英語の勉強が三日坊主だと困る!
イタリア語ならまだそれでもいいかもしれないが、困るのが英語だ。何せ、仕事で使うのだ。翻訳をするときには、常に辞書を引いたりウェブ検索をしたりしているから、つい後回しにしていいような気になってしまう。だが、英語だって単語力や文法知識がある方が絶対にいい。英文解釈が速く正確になるので、結果として作業スピードが上がるのだ。と、講師の皆さんが口をそろえて言っていた。ただひたすら耳が痛くなる話である。まだまだ勉強が足りないと感じてばかりなのだから、おとなしく勉強すればいいのだ。なぜそれができないのだ私は、まったく。「よーし、通勤時間に英語のアプリで勉強するぞ」と思っても、気が付いたらツイッターのタイムラインを眺めていたりするようなやつだから困る。
 

諦めないうちは、まだやめていないのだ
だが、ここで諦めないのがポイントだ。まず、三日坊主になってしまった自分を絶対に責めない。自己嫌悪に陥ってもいいことはないのだから、ただ事実を受け入れるのみ。「あら~ちょっとサボっちゃいましたね~」くらいに留めておくべし。そして、もう一度始める。少し期間が空いてしまっても関係ない。ただ始めるだけでいい。ちょっとお休みしただけだ、ということにしておこう。「やめてしまった」と自分で諦めないうちは、まだやめていないのだ。ブリトニー・スピアーズは、髪を丸坊主にしてパパラッチの車を傘でぶん殴っていた頃でも「歌手のブリトニー・スピアーズさんが~」と報道されていたし、今でも立派な歌手ではないか。Coccoだって鬼束ちひろだって、休止した時期があっても歌手は歌手だ。多少の空白期間があろうとも、復帰しさえすれば実質やめていないのと同じなのだ。ちょっとお休みするくらい、長い目で見たら大したことないない! 無理に続けようとして、それ自体を嫌いになってしまったりするくらいなら、少しくらいお休みしたっていいと思う。おいしいごはんを食べて、ゆっくりお風呂に入って、たっぷり寝て、リフレッシュしてからもう一度始められたらそれでいい。そのくらいの感じで、たぶんちょうどいい。
 

始めた自分を褒めてあげよう
そう、何より大事なのは、とにかく始めることだ。始めなければ、やめることだってできない。三日坊主になった自分を責めるより、まず、始めた自分を褒めてあげよう。何かに興味を持った自分を、始めようと思った自分を、実際に始めた自分を。何かを始めることは、とても気力のいることだ。え、そうかな? と感じた方はラッキーだと自覚しよう。新しいことを始めようとする時、躊躇してしまう人は世の中にたくさんいる。そこをポンと飛び越えていけるのだから、それだけでも素晴らしいではないか。
 

90歳で英語の勉強を始めた高見澤摂子さんのこと
さて、ご存知の方もいるかもしれないが、昨年とある女性が有名になった。来年の東京オリンピックで通訳ボランティアをすることを目標に英語の勉強を始めた高見澤摂子さんだ。
 

驚くなかれ、なんと御年90歳! お孫さんとLINEのやり取りをすることで、一つひとつ英単語を覚えたり、例文を覚えたりしている。単語も文も全てカタカナで書かれているので、書き言葉としては成立していない。だが、通訳として英語を使いたいという、その熱意が伝わってくるのだ。「この年で…」などと思ってしまう人が多い中、夢に向かって歩き始めたその方に、私はとても感銘を受けた。スタートするのに遅すぎるということはないのだと励まされた気分になったからだ。
 

ポーランド語の勉強を始めました
実は、私は去年の4月からポーランド語を始めた(イタリア語のことはとりあえず寝かせておいているだけで、たぶん数年後にまた始める…諦めたわけでは決してない)。いつか行ってみたいとなんとなく思って始めたはいいが、これがまた、イタリア語がかわいいものだと思えるくらい難しい。ちんぷんかんぷんとしか言いようがない。ちっとも分からん。単語すらなかなか覚えられないので、言語レベルとしてはネイティブの1歳児にも負けそうだ。あまりに上達しないため「あ~、やってられないでござる~」という気持ちになって、ちょくちょくサボっている。そういう時には、「始めただけでも偉いよ!」と自分をなだめすかし、「90歳の方に負けてられないなあ」と思い直し、また勉強を再開する。騙しだましだが、なんだかんだでもうすぐ1年。少しずつではあるが、成長しているはずだ。途中でお休みしても、ささいなことしか取り組めなくても、無駄になんてならないのだと思う。というか、そうでないと私が困る。
 

とにかく、いつだって今がスタートラインだと思って、今からベストを目指せばいい。まず始めてみて、自分なりのペースをつかんでしまえば、続けていくのも苦ではなくなる。人生の「春」が来るかどうかは自分次第なのだから、三日坊主になってなんぼ、くらいの気持ちで何かにトライしてみてはいかがだろうか。新しく始めた何かが、きっとあなたの人生を楽しくしてくれるはずだ。
 

【参考記事】
90歳のおばあちゃんが東京オリンピックで通訳のボランティアを目指します!!
 

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Written by 大橋陽香
 

おおはし・はるか●日本映像翻訳アカデミー・映像翻訳スクール部門スタッフ。映像翻訳者。英日映像翻訳科「総合コースⅡ」、「日本語表現力強化コース」の教務を受け持つ。
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