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【コラム】JUICE #10「最初に見た日本、これから見たい『日本』」●シュト・アンナ

【コラム】JUICE #10「最初に見た日本、これから見たい『日本』」●シュト・アンナ

受講生、修了生の皆さん、こんにちは! 日本映像翻訳アカデミーのロシア事業部門を担当するアンナと申します。
ここでは、来日して20年以上になる私が見てきた日本のことや、「日本とロシアの架け橋になる」という私の目標についてお話ししたいと思います。
 

「あいうえお」を学んですぐに留学
来日のきっかけは、当時通っていた大学での日本語学習の誘いでした。「日本語を始めませんか?」と言われるのはまだ珍しく、私はすぐに応募し「あいうえお」を学ぶところから始めました。五十音をマスターしたらほどなく、先生から「日本に留学してみない?」と。新潟にある大学の人文学部でロシア人留学生を募集しているそうで、直接連絡があったというのです。私はこれをチャンスだと思って、迷わず日本への留学を決めました。その頃のロシアでは留学プログラムが少なかったんです。
 

私が最初に見た「日本」
新潟県柏崎市は、私が最初に知った日本でした。ちょうど今くらいの、春の季節に来日し、最初からとても良い印象でした。しかし、来日してから私の生活は急激に変化。「今まで習った自信があること」はあまり役立たず、言葉も通じず、小さい子どものように右も左も分からないまま海外生活を始めました。振り返れば、ハチミツの代わりになぜか味噌を買ってしまったり、サラダ油が欲しくて、間違えて酢を買ってしまったなんてことも――。
 

このコーナーに登場させていただくにあたり、過去の資料を見ていたら当時の自分が考えていたことが分かるこんな冊子が出てきました。
 

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【この丸枠内の写真、実は初めての「証明写真機」で撮ったもの。どこを見ればいいのか分からないまま撮ったもので、知らない間に学生課の人に冊子に使われてしまいました(笑)】
 

当時の自分のスピーチがまとめられています。そこには、こんな一文が。
 

――(バイト先のラーメン店の)マスターは一年のうち、長くても3日しか休まないそうです。私が分かったのは、日本が経済的にすばらしい発展をとげたのは国民の勤勉さのおかげです。(中略)もちろん、良く働くことは重要なことで、私も自分の仕事が好きであれば、暮らしも楽しいと思います。と同時に、人々にとって読書したり、絵を描いたり、つまり、自分の創造的能力を生かすためには暇も必要だと思います。――
 

大学を卒業してからちょうど20年が経とうとしています。社会人になってからJVTAで働くまでに、3つの日本の会社で働きました。総務部、営業部、経理部、ビジネス推進部――日本での社会人としての忙しい生活は当たり前になって、毎日が慌ただしく、テレビや映画を見る時間も飛行機の中しかない状態でした。「もっとクリエイティブな仕事がしたいな」と思っていた時に出会ったのが、学校長の新楽さんです。
 

私がこれから見たい「日本」
映像翻訳は好きな日本のコンテンツをロシアに伝えることができるし、ロシアの面白いコンテンツもまた、日本に伝えることができる――その話を聞いた時に、私は来日してからずっと思い描いていた「日露の架け橋になる」目標にまっすぐ進めるのではないかと思うようになりました。
 

日本とロシアは意外なところで共通点があったり、互いのコンテンツが好きだったりするんです。日本ではロシア生まれのチェブラーシカが今でも人気ですが、ロシアでは日本のアニメや村上春樹が人気。マトリョーシカはロシアの伝統的な民芸品ですが、元々はだるまさんがモチーフになっているという説もあります。
 

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【日本で上映された劇場版『チェブラーシカ』】
 

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【ロシア語版村上春樹『羊をめぐる冒険』】
 

互いのカルチャーを知れば、日本とロシアはもっと近い存在になれると思っています。そのための力になれたら嬉しいです。
 

それに、仕事だけでなく、これからは思い切り時間を作って、好きな映画を見たり、好きな絵、生け花などを再開してみようとも思っています。海外から働きにくる人も増える中、もっと外国人も働きやすい、バランスの良い働き方ができる日本の社会。それもまた、私が見たい日本のひとつです。

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Written by シュト・アンナ Anna Shut 
 

日本映像翻訳アカデミー「グローバル・コミュニケーション・サポート(GCS)」スタッフ。

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「JUICE」は日々、世界中のコンテンツと対面する日本映像翻訳アカデミーの講師・スタッフがとっておきのトピックをお届けするフリースタイル・コラム。映画・音楽・本・ビデオゲーム・旬の人、etc…。JVTAならではのフレーバーをお楽しみください!
 

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