【コラム】JUICE #17「タイムマシンに乗って 昭和~平成~令和」●小笠原ヒトシ
「子供のころに戻りたい」とか、「10年後の自分を見てみたい」とか、誰もが一度は思ったことがあるでしょう。現実的には絶対無理と分かっていることですが、もしもタイムマシンがあれば、なんてね。
『タイムマシン』H.G.ウェルズ
金原瑞人 訳 岩波少年文庫
イギリス人の小説家、H・G・ウェルズが1895年に発表した『The Time Machine』により広く知られるようになったタイムトラベルというコンセプトは、その後、多くの日本のエンターテインメント作品にも影響を及ぼしました。すぐに思い浮かぶのは『時をかける少女』と『戦国自衛隊』、最近だと『テルマエ・ロマエ』や『君の名は。』など。これらの作品ではマシンに頼らない時空移動が楽しめます。一方、タイムマシンといえば『ドラえもん』の空飛ぶじゅうたん型の乗り物が日本一有名で、世界レベルでは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場する銀色のスポーツカー、デロリアンでしょうか。平成ライダーで一番人気『仮面ライダー電王』のデンライナーは列車型でした。
映像作品の中に入り込めば、過去や未来を自由に行き来できるのです。長年映像の仕事に関わってきましたが、その“映像”こそが、現実世界におけるタイムマシンだということに、今更ながらに気がつきました。
『ベストヒットUSA』というテレビ番組があります。小林克也さんがVJをつとめる日本最古で最長の“洋楽番組”です。
1981年に始まったこの番組は、それまでレコードやラジオでしか聴いたことがなかった私にとって、海外アーティストの曲を動く姿付きで観られるという衝撃的なものでした。MTVの“ビデオクリップ”が日本上陸する3年も前の話。当時、北海道・函館で高校生活を送っていた私は、寮の規則で深夜番組を観ることができず、毎週末にわざわざ五稜郭近くのおしゃれなカフェ(喫茶店ではない)に足を運んで、店内で流されている録画映像を鑑賞していたのです。
番組内にはいろんなコーナーがあって、「COUNT DOWN USA」はビルボードのトップ20を紹介、「HOT MENU」ではそのときどきの旬なアーティストを取り上げ、「STAR OF THE WEEK」は話題のアーティストのインタビューです。そして「TIME MACHINE」が過去のあの日にヒットした曲やアーティストを紹介するというコーナー。80年代当時、ここで取り上げられるのは60~70年代のものが中心で、懐かしいというよりはむしろ新鮮な気持ちで観ていました。それが今は、80~90年代に“旬”だったアーティストたちが続々登場。まさにタイムマシンに乗って、当時の自分に出会っているような感覚になるのです。
1981年(昭和)にテレビ朝日で始まり、一時休止を経て2003年(平成)からBS朝日で復活。そして2019年(令和)の今も絶賛放映中。時代によって変化する音楽ですが、それを楽しみたいという気持ちは変わらず。今のヒット曲と過去の名曲を織り交ぜた30分間に身も心もゆだね、今日もまた“タイムマシン”を体感しています。
BS朝日で毎週金曜日の深夜0時(厳密には土曜日の0時)からの放送なのですが、なんと日本語バリアフリー字幕付き! ぜひご覧になってください。
なおこの原稿は、平成最後の平日に入稿し、令和最初のコラムとして読んでいただいております。
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Written by 小笠原ヒトシ
おがさわら・ひとし●JVTAバリアフリー事業部プロデューサー。ハリウッドでの映像制作などを経て、現在はバリアフリー字幕と音声ガイド制作の指揮をとるかたわら、MASC×JVTA バリアフリー視聴用音声ガイド&字幕ライター養成講座で字幕制作者の育成を行う。「M-1ビザLA留学コース」のアドバイザーも担当。
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