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【コラム】JUICE #18「『7つの習慣』を読む(ただし、格闘技しながら!)」●小笠原尚軌

【コラム】JUICE #18「『7つの習慣』を読む(ただし、格闘技しながら!)」●小笠原尚軌

昨年末、「K-1アマチュア全日本大会~アマチュア日本一決定オープントーナメント~」に初めて出場した。「子どもの頃から格闘技に親しんでいた」なんてバックボーンは僕には全くなく、エクササイズ目的で始めた週一回、1時間のキックボクシングだ。だが、踏み込んだことのない世界に興味が湧いて、半年本気で練習して、挑戦してみたのだ。
 

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会場の写真
 

7ポイント先取制の試合で、結果は1対6の惨敗。半年間、ちょっと練習したくらいで勝てるほど、フィジカルな闘いの世界は甘くなかった。それでも、一発だけ相手の顔真ん中にパンチが入った感覚は僕の手に残っており、その時の気持ちはなかなか一言では伝えられない。
 

練習中、指導していただく方(上の写真後ろで座っている人)からよく言われることがある。
 

「小笠原くん、打つ前にあれこれ考えたら(逆に)打たれるで!」
 

この言葉は格闘技だけに当てはまるもの、ではないのではなかろうか。
僕たちが日々対峙する“現実”は、容赦なくジャブやボディブローを放ってくる。
 

そこで、『7つの習慣』である。この本には“リングの外”で闘うためのヒントがたくさん書かれている。
 

* * *
 

スティーブン・R・コヴィーが書いた『7つの習慣』はいわゆる自己啓発書に分類されるロングセラーだ。そして、世間にはびこる軽薄な自伝ではない。コヴィーが、米国で出版された「成功」をテーマにした書籍を200年分さかのぼって調べていくうちに見つけたパターンを体系的にまとめた解説書だ。
 

7つの習慣
 

一七七六年のアメリカ合衆国独立宣言以来これまでに米国で出版された「成功に関する文献」の調査に夢中になっていた。
(中略)
最近の五〇年間に出版された「成功に関する文献」はどれも表面的なのだ。それでは、私たち夫婦が息子のことで感じていた痛み、私自身がこれまでに経験してきた痛み、仕事で接してきた多くの人たちの痛みには、まるで効きそうにない。
 

これとはまるで対照的に、建国から約一五〇年間に書かれた「成功に関する文献」は、誠意、謙虚、誠実、勇気、正義、忍耐、勤勉、質素、節制、黄金律など、人間の内面にある人格的なことを成功の条件に挙げている。
 

(スティーブン・R・コヴィー「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」キングベアー出版 Kindle版 597-599より)

 

翻訳者の力にもよるのだろうが、本に書かれた言葉の一つひとつに重みがあり、すぐに飲み込むことは難しい。だが、消化できたと感じた時は確かに言葉が自分の血肉になっていることを実感できる。コヴィーは子どもの頃からずっと教会に通っていたクリスチャン。読み進めると、行間からキリスト教的な価値観がにじみ出てくることは、事前に頭に入れておきたい。それでも、何かと対峙する時のスキルとして、この本に書かれていることを身につけておくことはお勧めだ。
 

主体的であることが、何よりも先に立つ
本書は大きく分けて3つのパートに分かれている。一つ目が第1から第3の“習慣”を解説する「私的成功」と題するパート、二つ目が第4から第6のそれを解説する「公的成功」と題するパート、そして最後に第7の習慣を解説する「再新再生」と題するパートだ。これら7つの習慣は倒れないジェンガのように互いを支え合い、有機的につながっている。そのディテールは次の通りだ。
 

第1の習慣:主体的である
第2の習慣:終わりを思い描くことから始める
第3の習慣:最優先事項を優先する
第4の習慣:Win-Winを考える
第5の習慣:まず理解に徹し、そして理解される
第6の習慣:シナジーを作り出す
第7の習慣:刃を研ぐ
 

1から3の習慣は4以降の習慣(=スキル)が正しく機能する“土台”のようなもので、自身の“心構え”に関係している。その中でも、第1の習慣「主体的である」ことは頭で分かっていても、実践し続けることはなかなか難しい。主体的であることは、コヴィーの言葉を借りるなら、「人間としての自分を“自覚”し、自分の振る舞いを選ぶ」ことだからだ。
 

この本を読んでいる自分の姿を想像してみてほしい。意識を部屋の隅に置いて、そこから自分を眺めてみる。頭の中であなたは、まるで他人であるかのように自分自身を見ているはずだ。
(中略)
あなたが今行ったことは、人間にしかできないことである。動物にはできない。それは人間だけが持つ能力であって、「自覚」というものだ。自分自身の思考プロセスを考えることのできる能力である。
 

(同 1495-1497より)

 

もしそうなら、主体的であることって、かなり難しい。遭遇した出来事が強烈であれば、自分の状況を把握するのに時間がかかるし、その上で泣くのか笑うのか、悪態をつくのか行動を起こすのか選ぶのだから。時間は待ってくれないし、事態は次々と変化していく。
 

そんな時、僕はやっぱりあの言葉を思い出すのだ。「あれこれ考えたら打たれるで!」。
 

ツラい“現実”が繰り出すパンチは、かなり痛い。だからこそ、この本はざっと通しで読むのではなく、コヴィーが紹介する訓話ともいえるエピソードを自分に置き換えながらじっくりと読むのがいい。本の言葉を心の筋肉に変えておけば、判断する時間が少ない場合でも、きっと良い結果にたどり着けるはずだ。
 

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Written by 小笠原尚軌
 

おがさわら・なおき●エンタメ系情報誌の記者・編集を経てJVTA英日総合コースⅠ、バリアフリー講座を修了。フリーランスとして活動した後、現在はJVTAのPRチームに所属する。
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