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【コラム】JUICE #19「goo辞書」●富岡修

【コラム】JUICE #19「goo辞書」●富岡修

元来ぐうたらの私にとって、文章を書く際にいわゆる「裏取り」をしたり、表現を吟味したりすることは苦痛でしかない。締切間際にならないと執筆に着手しない悪癖もあって、裏取りや推敲がままならないままデスクに提出することが、出版社勤務時代に多々あった。
 

しかし、そんな私でも文章を書く際に必ずやることがある。「goo辞書」で言葉の意味を調べることだ。私にとっては交通経路を調べる「乗換案内」や飲食店を探す「食べログ」と同じくらいなくてはならない存在である。紙の辞書を引くのは面倒だが、ネットだと調べたい単語を打てば瞬時に分かるので重宝している。
 

goo辞書
https://dictionary.goo.ne.jp/より
 

「悠久の歴史が旅行に駆り立てる」

辞書を引く重要性を認識したきっかけは、過去、原稿を書く際に「駆り立てる」と「かき(掻き)立てる」の意味を理解せずに使い、上司に怒られた経験があったからだ。「えっ、そんな違い、当然理解しているよ」という方は読み飛ばしてもらっていいが、「知っているつもりだけど、明確に答えられない」と思った人は調べてみてほしい。
 

goo辞書を引くと、「駆り立てる」の意味は「その人の意志に関係なく無理に行かせる」「そうせずにはいられない気持ちにしむける」。例文として「学徒を戦場に駆り立てる」「自責の念に駆り立てられる」がある。一方、「かき(掻き)たてる」の意味は「刺激を与えて、感情や行動を起こすように促す」とあり、例文として「関心を掻き立てる」とある。
 

つまり、歴史に魅力を感じて旅行したいという積極的な意味で書いたにもかかわらず、ネガティブな意味を持つ「駆り立てる」を使ってしまったのだ。「文章を書く際、辞書で意味を調べている?」という上司の発言と、私に向けられた冷ややかな視線に、私はただ沈黙するほかなかった。
 

その失敗以降、私はどれだけ時間がなくても、goo辞書で調べることを心がけている。辞書にある意味や例文を見ると、言葉の微妙な意味の違いが分かるようになる。表現力が「劇的」に高まるとまでは言えないが、少なくとも間違った言葉を使うことは大きく減った。
 

日常でよく使う言葉でも明確に理解していない場合が多い。例えば「使用」「利用」「活用」の使い分けなども意味を理解してこそ正しく使える。辞書を引く作業は、字幕翻訳においても有用だ。文字数制限がある中、より短く意味を的確に伝える言葉が見つかるかもしれないからだ。
 

最後にお願いがある。この原稿も締切間際に短時間で書いた。とはいえ、テーマがテーマだけに言葉の使い方に間違いがあってはならないと思い、入念に辞書を引いた。それでも間違いがあるかもしれないが、その際はこっそりと私に教えてほしい。
 

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Written by 富岡修
 

とみおか・おさむ●日本映像翻訳アカデミー・新規事業開発室長。出版社勤務を経て、入社。システム開発やデジタルマーケティングなどに従事している。
 

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