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【コラム】JUICE #32「LAのフシギな暮らし」●當麻さやか

【コラム】JUICE #32「LAのフシギな暮らし」●當麻さやか

ロサンゼルスに来て、はや8年強。これだけアメリカにいてやっと、自分がかなり不思議な環境で生活していることに気づいた。日本ではまず起こり得ないようなエピソードをいくつか紹介したい。
 

①たくあんは甘いのか?
先日、日系スーパーの漬物コーナーを通りかかったところ、日本語が読めないアジア系のおじさんに話しかけられた。「ねぇ、このたくあん“甘い”って書いてある?」。“たくあんが甘い”とはどういうことなのか? と一瞬戸惑ったものの、テキトーな私は確かにたくあんってほんのり甘いかも、と思い直し、「そういえば、たくあんってなんとなく甘いかもね。だから“甘い”って書いてないやつもきっと全部甘いんだよ。でも、たくあんって全部味同じじゃないの?」と答えた。しかし、おじさんによるとハワイで食べたたくあんは甘みがなくてしょっぱいだけらしい。なるほど。確かにどちらかといえばしょっぱい味だ。ちょっと甘いといっても、塩気の方が強い。欧米人は、ほんのりした甘さは“甘い”と感じなさそうな気もする。しかし、「SWEET」と堂々と書いてあるたくあんは並んでいる中では一種類のみで、ラベルが日本語表示の“輸入物”は「甘い」と書いてあるものはなかった。後日、買ったお弁当にたまたまたくあんが入っていたので食べてみたが、甘いのかしょっぱいのか、ますます分からなくなった。
 

②吉野家でジンジャー事件
珍しく牛丼が食べたくなったので、数年ぶりに「YOSHINOYA」のドライブスルーを利用。注文するまでに10分も待たされたことはさておき(ドライブスルーの意味がない)、受け取りの窓口で店員が一言、「Any condiments? Soy sauce or ginger?」と聞いてきた。普段行かない店ということもあるが、ボーっとしていた私はgingerをガリかと思い、いらないと言ってしまった。牛丼についてくる生姜といえば紅生姜に決まってるでしょ! と思うかもしれないが、普通に欧米系のスーパーでも寿司が売られているようなロサンゼルスでは、日本食についてくる生姜は9割方ガリのことを意味するので、つい間違えたのだ。タダだし、とりあえずもらっておけばよかったと後悔。ちなみに、アメリカの牛丼はデフォルトでつゆだくである。
 

③天つゆはソースらしい
天丼を買ったところ、「Would you like the sauce on the side?(ソースは別添えにしますか?)」と聞かれた。天丼のソース? と一瞬考えたが、どうやら天つゆのことらしい。天つゆはテンプラソースか…なるほど。個人的には、天つゆぐらいサラサラしたものはsoupで、もっとドロドロしたものがsauceだと思っていたのだが。天ぷら定食とかだとディップするからdipping sauceということなのだろうか。それとも味が濃いから? こういった細かい基準や定義は、いつまでたっても勉強あるのみである。
 

④海藻は何でもかんでもひとまとめ
海藻は全部seaweedと呼ぶ。海苔もワカメもひとまとめで、相当雑である。日系の寿司店はさすがに知っているだろうと思い聞いてみると、日本語は呼び分けるものの、彼らも英語ではseaweedと呼んでいるそう。強いて言うなら海苔はdried seaweedといえるのだが、お店の日系人同士で一度失敗があったらしい。たまたま英語で会話していたため、何も考えずseaweedを買ってきてほしいと同僚に頼んだところ、海苔が欲しかったのにワカメを買ってこられたそう。“dried”って言い忘れた! と言っていました。ちなみに、アメリカの安い海苔はあまり質がよくないのか、噛み切れないからという理由で嫌うアメリカ人もいる。そのため、ソイペーパーという大豆由来のシートに変えるオプションがある。特に味はしないので、“寿司ブリトー”(大胆な具の入った、すごい大きさの太巻き)にも使われる。
 

⑤名前は日本人、中身はベトナム人
店員のネームプレートに「Mai」と書かれていたので日本人か聞いてみたところ、ベトナム人だった。しかしこの方、なんと旦那さんが日本人。そのため、日本語が全く話せないのに、名前だけ聞くと完全に日本人という状況なのである。違う国出身のアジア人同士が結婚するとこんなミラクルも起こり得る。
 

⑥日本語が話せる謎のアメリカ人
100%白人なのに、少し日本語が話せるという人に出会った。アニメや日本のコンテンツが好きそうな感じがしなかったので、なぜ日本語が話せるのか聞くと、なんと父親の再婚相手が日本人だったそう。こんなこともあり得るとは…。離婚の多いアメリカ&国際結婚の多いロサンゼルスならではの話だ。個人的には、ミックスでもないのに異文化を学びながら育つのはうらやましい。
 

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そういえば、昔、日本好きなアメリカ人の友達にお好み焼きを作ってあげたら、おもむろにナイフとフォークで食べだした。相当変な光景に見えたが、要は、アメリカという国は人に迷惑をかけなければ何でもアリなのだ。もうちょっとこの不思議な環境に身を置いて、英語と日本語の違いを楽しみながら語学スキルを磨きたい。
 

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Written by 當麻さやか
 

たいま・さやか●JVTAロサンゼルス校講師。映像翻訳者。教壇に立つ傍ら、修了生のための就業支援部門「MTC」で翻訳実務受発注業務も受け持つ。

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