【コラム】JUICE #34「『美しい恋』のあとで~アイドルが魅せてくれる世界~」●満仲由加
今から3年ほど前、当時のスタッフブログ「発見!キラリ」で「美しい恋にするよ」というタイトルの記事を書いた。当時気になり始めたアイドルグループNEWSについてだ(当時の記事はこちらhttps://www.jvta.net/blog/20160826kirari/)。記事の最後は「いつかはDVDではなく、生でライブと花火を見てみたい。うちわを振るのはちょっと恥ずかしいけれど。」と締めている。あれから3年、今や恥じらいもなくうちわを振り、ライブのために北海道まで行くほどのオタクになった。そして去年、念願の「ライブと花火」を生で見ることができた。願いが叶ったことを記念してNEWSについて改めて紹介したい。
アイドルを好きになるとテレビやラジオ、雑誌などさまざまなメディアで姿を見ることができる。その中でも最も魅力を感じられるのは、何と言ってもライブだ。NEWSの近年のライブはちょっと独特で、1つのテーマを元に徹底的に世界観を作り上げる。例えば夢の国、宇宙旅行、仮想空間などをテーマにしてきた。生で歌やダンスを見られるというだけでも楽しいが、ライブで作り上げられるストーリー、舞台装置、照明、衣装、モニターの映像などすべてを含めてテーマパークに行ったかのような気分になれる。
そういったクセが強めなライブを始めたのは2017年。この年から4年にわたるアルバムプロジェクトが始動した。NEWSのアルファベットを頭文字にしたアルバムを1年に1枚ずつリリースし、ライブツアーを回るというものだ。その第1弾が2017年の「NEVERLAND」である。3月にアルバムが発売され、4月からライブツアー「NEWS LIVE TOUR 2017 NEVERLAND」がスタートした。「NEVERLAND」の名前どおり、夢の国がテーマの非常にファンタジックな作品である。メンバーはNEVERLANDの案内人、観客は夢の国の扉を開けて汽車で束の間の旅をする、という設定だ。NEVERLANDは光、水、音、炎という4つのエリアに分かれていて(ちゃんと地図も作られている)、それぞれのエリアに番人(メンバー)がいる。各エリアに行くとまず番人の歓迎(ソロ曲)を受け、エリアにちなんだ楽曲が披露される。もちろん舞台演出もそれぞれのエリアに合った特効が使われている。4つのエリアを巡り終わると現実世界に戻る時間がやってくる。旅とともにライブも終わるのだが、いったん締めたあとで再びメンバーが登場し、最後の一曲が披露される。アルバム「NEVERLAND」は全体的に幻想的な曲が多いが、最後の一曲「U R not alone」だけ泥臭いくらい直球の応援歌だった。その曲がライブの最後、夢の世界の旅が終わったあとに、現実世界で生きるための応援歌として届けられる。
ちなみにこのツアーの最終公演が私にとって初めてライブだった。東京ドームの端っこで、肉眼ではほぼ誰が誰だか判別がつかないくらい遠い席だったが、生の声の迫力とどんな席でも楽しめるように計算された演出、ファンの熱気を体感し大満足のライブだった。恐らくこのライブに行ったことで、本格的にハマってしまったのだと思う…。
その後、2018年は宇宙旅行をテーマにした「EPCOTIA」、2019年は仮想空間をテーマにした「WORDISTA」というアルバムを発表し、アリーナツアーを行なった。”NEWS”の文字うち3つが終わり、残すは”S”だけだ。”S”は「STORY」というタイトルだけ決まっているが、CDの発売時期などは未定だ。4年がかりのプロジェクトの集大成である「STORY」はファン参加型になるらしく、ロゴのデザインなどをファンから募っている。また、このアルバムプロジェクトとは別に”S”を冠したライブもある。それが2018年8月に味の素スタジアムで開催された15周年記念ライブ「Strawberry」だ。久々に野外で行なわれ、普段のコンセプチュアルなライブとは違い、ただ純粋に15周年を祝うお祭りムード満載のライブだった。セットやステージ構成もシンプルで、楽曲はシングル曲がメイン。暑さからか衣装もカジュアルなものが多かった。しかしその分、水や花火など野外ならではの演出があり、念願だった「ライブと花火」をやっと堪能できた。メンバー、そしてほかのファンの方たちと一緒に見たライブと花火はやはり格別だった。私の席の周りは比較的年配の方が多く、中には70~80代くらいかと思われる方もいらっしゃった。その方はずっとニコニコしながら座ってペンライトを振っていて、ここぞという時になると立ち上がっていた。その方にとってNEWSは元気の源のような存在なのかもしれない。
ファンになってから「好き」というポジティブな感情が持つ強さを知った。私はどちらかと言うとネガティブ思考に陥りがちなタイプで、落ち込みやすく精神的にも弱い。だがファンになってから格段に楽しいことが増え、その分ポジティブになれたと思う。多少の辛いことはライブに行くためだと思えば頑張れるし、嫌なことが起きても「ここで苦労した分、チケット運が上がるかも」とちょっと変な頭の切り替えをするようにもなった。ジャニーズなんて、とバカにされることもあるが、好きなものは好きなのだ。そしてそれぞれの人に、その人を明るく強くしてくれる「好き」があるのだと思う。例え自分には理解できないものだったとしても嘲笑したりせずに、「好き」という気持ちを尊重できる人でありたい。
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Written by 満仲由加
まんなか・ゆか●本科講師。映像翻訳スクール部門スタッフ。日本映像翻訳アカデミー修了後、日本語版制作会社で字幕制作、吹き替え版制作などに従事。その後、JVTAの就業支援部門「メディア・トランスレーション・センター(MTC)」のディレクターとして、J Sports、ナショナルジオグラフィックチャンネル、ディスカバリーチャンネルなどの担当を経て、現職。
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