【コラム】JUICE #40 「目指すはヴァイオリンのストリートミュージシャン!?」●板垣七重
最近、子どもの頃に習っていたヴァイオリンの練習を再開した。もともと毎日の練習がつらくてやめてしまったのだが、エンターテインメントとしてのヴァイオリンの存在感を意識するようになってから、またどうしても弾きたいという衝動が湧いてきた。
まず、クラシックの名曲は映画に欠かせない。「2001 年宇宙の旅」の「ツァラトゥストラは、かく語りき」や「プラトーン」の「弦楽のためのアダージョ」は、誰でも一度は聞いたことがあるはず。去年、友達に誘われて参加したアマチュアのオーケストラの演奏会では、ベートーヴェンの「交響曲第7番」を弾いた。4つある楽章のうち、第2楽章は大好きな映画「英国王のスピーチ」で使われている。
オーケストラが演奏するオリジナルの曲を使っている映画も数知れない。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、「スター・ウォーズ」、「ジュラシック・パーク」、「パイレーツ・オブ・カリビアン」、「ゲーム・オブ・スロー ンズ」などは、オーケストラの音色が壮大な世界観を作り上げている。
クラシック音楽をテーマにした映画もたくさんある。一番好きなのは、フランスの映画「オーケストラ!」。一度は音楽をあきらめざるを得なかった名指揮者が昔の仲間を集めてオーケストラを再結成するというストーリーで、終盤で演奏されるチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」は、物語のクライマックスと相まって体が震えるほど感動する。
もちろん、ヴァイオリンはオーケストラの曲以外にもさまざま。私が挑戦してみたいと思っている「チャルダッシュ」は、酒場をイメージしていて、酔っ払いを連想させるようなだらしない奏法を使う遊び心のある曲だ。日本人の男性3人組ユニット「TSUKEMEN 」が演奏するこの動画は、掛け合いをするように弾いているのが面白い。
ヴァイオリンというとクラシックのイメージが強いと思うが、ポップスの演奏にも向いている。ピアノやビオラ、チェロと演奏することは多いし、他にもいろいろな楽器と合わせられる。たとえばこれは、アコースティックギター、ドラム、ヴァイオリンで路上ライブをする韓国のバンド。演奏するのはマイケル・ジャクソンの「Smooth Criminal」。
こちらはアメリカで活動するソロのエレキバイオリニスト。ソロだけど、メロディーをループさせる機械を使って何層にも重なる音楽を作っている。
これはおまけのクロアチア出身のチェロのデュオ「2Cellos 」。クラシック音楽とロックを組み合わせた演奏が斬新で、ミュージックビデオもかっこいい。
好きな映画のシーンを思い浮かべながら弾くクラシックは気持ちいいし、他の楽器と演奏するポップスは憧れだ。子どもの頃は想像できなかったヴァイオリンという楽器の持つ可能性に気づいた今は、地味な基礎練習が以前よりも少し面白く感じられる。長く続けられる趣味にして、いつかは路上で演奏できたら、なんて考えるとわくわくしてくる。
—————————————————————————————–
Written by 板垣七重
いたがき・ななえ●映像翻訳ディレクター。日本映像翻訳アカデミー修了生。課外講座「120分でマスター! 最強の調べもの術」などの講義も受け持つ。
—————————————————————————————–
「JUICE」は日々、世界中のコンテンツと対面する日本映像翻訳アカデミーの講師・スタッフがとっておきのトピックをお届けするフリースタイル・コラム。映画・音楽・本・ビデオゲーム・旬の人、etc…。JVTAならではのフレーバーをお楽しみください!
バックナンバーはこちら