2020年の東京五輪では訪日観光客も急増しディープな興味や質問も増えるだろう。日本人一人ひとりが彼らと接するときに、この国のことをどの程度理解した上で伝えられるか。これも、日本の価値の一部だと思う。
 

先日、友人と飲んでいる時に女性天皇の話題になった。どういう考えを持つかは各人の自由だが、歴史的事実について理解しておくといいだろう。日本の歴史において長期間在位し活躍した代表的な女帝は、33代推古天皇、41代持統天皇、46代孝謙天皇など。それぞれ35年、7年、15年と天皇として実際に政治にあたっていたといわれる。
 

自分がこういった歴史的事実にこだわるのは、くだらないようだが、彼女たちを描いたマンガをとても愛読していたからだ。ここでは、日本には決して“中継ぎ”や“お飾り”でない女性天皇たちが確かに存在していたことを伝える作品を4つ紹介したい。
 

●『日出処の天子』山岸凉子著　白泉社
推古天皇については、聖徳太子が主人公であるマンガ「日出処の天子」に描かれている。

西暦583年、時代は飛鳥、蘇我氏と物部氏が権力を争う時代。ある春の日、14歳の蘇我毛人(そがのえみし)は天女と見まごう美しい女童に偶然出会い、ほのかな恋心を抱く。それは厩戸皇子(うまやどのおうじ、のちの聖徳太子)であった。皇子は天才的な頭脳と教養、非凡な政治的手腕と洞察力を発揮、わずか10歳ながら、朝廷では誰もが一目おいていた。しかし、家族の中では距離を置かれていることに毛人は気づく。

出典：【3分で分かる名作漫画】日出処の天子（山岸凉子）https://shiroyagi-bacchanale.com/comic_rising_sun/
 

●『天上の虹』里中満智子　講談社
里中満智子作の女帝三部作『天上の虹』は、持統天皇が主人公だ。

中大兄皇子（後の天智天皇）の娘として生まれ、父の同母弟である大海人皇子（後の天武天皇）に嫁いだ讃良（さらら）皇女、のちの第41代天皇・持統天皇を主人公とした物語。（中略）持統天皇は夫の即位後は皇后として夫を助け、夫の死後は自らが即位して大宝律令の制定や、日本書紀の編さんなどに関わるなど政治手腕を発揮。夫と父の確執など女性としての愛や苦悩とともに、日本の仕組みを作った時代のキーマンとしての顔も持つ。女性の生き方の一つの原型としても興味深く読める。

出典：これも学習漫画だ！『天上の虹』http://gakushumanga.jp/manga/天上の虹/
 

●『長屋王残照記』里中満智子　中央公論新社
元明、元正天皇が登場する。

律儀で真面目な皇族の長屋王は、元正天皇や元明天皇と共に皇族主導の政治を目指して執務をとるが、実力主義の藤原不比等と対立していく。平城京遷都や貨幣制度の構築など、奈良時代の政治の流れを、長屋王の生涯を通して描いていく。

出典：マンガペディア『長屋王残照記』マンガペディア – MANGAPEDIA
 

●『女帝の手記　孝謙・称徳天皇物語』里中満智子　中央公論新社
孝謙天皇が主人公としてその人生が描かれている。

奈良時代、阿倍内親王は父親に聖武天皇、母親に光明皇后をもつ皇女であった。歴史的に史上唯一、立太子し、女性皇太子となった阿倍は、のちに孝謙天皇、重祚して称徳天皇になった女帝である。波乱の時代、彼女が独身を貫きながら、二度も天皇になってまでも守りたかったものは天皇としての威厳だけだったのか――。

出典：電子書籍のレンタルサイトRenta!「女帝の手記」内容紹介https://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/68150/
 

この4作品を読めば、飛鳥時代から奈良時代の約200年の日本古代史はほぼ全て頭に入るし、女性天皇たちの存在感も十分に理解できる。単なる知識の暗記ではなく、人物や出来事が絵とともに生きた記憶になって頭に残り、人に説明することもできるようになる。高校や大学の受験対策にもとても有効だ。
 

もちろんマンガでなくアニメでも映画でも、大河ドラマでも小説でもいいが、自分にとってはマンガが手軽であり最高の媒体だ。多くの人、特に若い人や外国人の方にもオススメしたい次第だ。
 

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Written by　筆谷信昭
 

ふでたに・のぶあき●日本映像翻訳アカデミー取締役 兼 JVTA, Inc(ロサンゼルス現地法人)代表取締役。

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