【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #26 空の青さを伝える時に●小笠原尚軌(バリアフリー事業部 ディレクター)
「生まれた時から目の見えない人に 空の青さを伝える時 何て言えばいいんだ?
そんな簡単なことさえ言葉にできない俺は芸人失格だよ」
SNSをよくご覧になる方は、一度見たことのある言葉かもしれない。タレントの江頭2:50さんが語ったといわれていた“名言”だ。一見破天荒な彼の、人間らしさをあらわす言葉として、まことしやかに流れていた。でも、これは全くのデマ。オフィシャルの動画「ネットの江頭伝説は本当なのか?(名言編)」で、本人が否定している。
このうわさがちょっとしたネットミーム(インターネットで次々にコピーされて広まるフレーズ・画像など)として広まったことは、誰もが一度はこう思うからなのかもしれない。“目の見えない人に 空の青さを伝える時 何て言えばいいんだ?”。
白井崇陽さんの曲を聴いて
2022年6月末に、JVTAのバリアフリー講座修了生・彩木香里さんが主宰する東京の演劇集団「ものがたりグループ★ポランの会」の公演を観た。タイトルは『手話と音楽と語りで綾なすライブセッション わたくしという現象』。朗読と、“視覚的に楽しめる手話”で宮沢賢治の世界を届ける舞台だ。その演目の中にはバイオリニスト・白井崇陽(たかあき)さんの演奏もあり、盲目の彼が空をテーマに作った曲「蒼き天馬のように」を聴く機会に恵まれた。
【開演前の様子。教会の会堂でもある「ルーテル市谷ホール」で行われた】
音色が会場に響く。まぶたに浮かんだのは、うっすら雲がかかった青い空を、毛並みの艶やかな馬が駆けていく映像だった。「空の青さは人それぞれで、誰にでも伝えることができるものだ。そして、伝えようとする熱量が見せたいものをより鮮明にするんだな――」。示唆に富んだ体験は、今の仕事に生かせると思った。
JVTAの「バリアフリー部門」は、“映像のバリアフリー化”に取り組んでいる。見えにくい人のための音声ガイド(副音声/AD=Audio Description)、聞こえにくい人のためのバリアフリー字幕(クローズドキャプション/SDH=Subtitles for the deaf and hard of hearing)で映像作品のアクセシビリティを高める仕事だ。それは、視覚・聴覚をこえてコンテンツを届ける仕事ともいえる。教育プログラムを作ること、学んだ人の「音声ガイドディスクライバー」あるいは「バリアフリー字幕ライター」としての就業をサポートすること。この両輪で、分け隔てなく映画やドラマを楽しめる時間を増やしていきたい。そんな気持ちで、働いている。
空の青さを伝えてみようと思う時、あなたならどんな言葉を使うだろうか?「これだ」と思う表現が浮かんだらそれはあなた自身のものだから、自信を持って、大切にしてほしい。
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Written by小笠原尚軌
JVTAバリアフリー事業部ディレクター。「週刊TVガイド」「テレビブロス」などを発行する東京ニュース通信社で記者職・編集職に従事。その後、“映像のバリアフリー化”という言葉に引かれてJVTAの「バリアフリー講座」を受講。入社後、広報・PRの部門を経て、現在はバリアフリー事業部 ディレクター。字幕ライターと音声ガイドディスクライバーに必要なスキルを習得した修了生の就業サポートを行っている。
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「Fizzy!!!!! JUICE」は月に1回、SNSで発信される、“言葉のプロ”を目指す人のための読み物。JVTAスタッフによる、示唆に富んだ内容が魅力です。一つひとつの泡は小さいけど、たくさん集まったらパンチの効いた飲み物に。Fizzy! なJUICEを召し上がれ!
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