【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #32「自分の考え方」を持つことの大切さ●塩崎邦宏(管理部門スタッフ)
『スター・ウォーズ』が大好きなことや『韓流ドラマ』にハマっていることは過去に書いたが、昨年より新たにハマっているものがある。大きく括ると少女漫画だが、『パタリロ!』(魔夜峰央/白泉社)から始まって、『ポーの一族』(萩尾望都/小学館)を読み、今では『王家の紋章』(細川智栄子あんど芙~みん/秋田書店)を読んでいる。
『王家の紋章』は1976年より『月刊プリンセス』に連載されており、今もなお続いている長寿漫画だ。主人公キャロル・リードは考古学を学ぶためにエジプトに留学している16歳の女の子。キャロルは新しく発見された王墓を訪れたとき、呪いにかかってしまい4,000年前の古代エジプトにタイムスリップをしてしまう。そこで、出会ったファラオ(王)と恋に落ち、妃となる。ここだけ書くとシンデレラストーリーでお星さまがキラキラしているラブストーリーだがそれだけではない。キャロルは古代エジプト人には珍しい容姿や現れ方で「ナイルの娘」と呼ばれ神格化される。また、エジプトだけでなくエジプトをわが物にしようと企む隣国の王たちからも狙われている。狙われるといっても命を狙われるのではなく、大国エジプトを手に入れるために自分の妃として狙っているのである。つまりキャロルは多くのイケメン王たちから狙われているのである(笑)。ただの少女の恋愛ストーリーだけでなく、国と国とがあらゆる策を考えて領土を広げていく歴史ロマン漫画になっている。
キャロルは常にピンチに陥っている。そして、いつもファラオや彼女を慕うキャラクターたちに助けられる。その繰り返しがずっと続いている。そんなハラハラドキドキが40年以上も続いている。
キャロルのすごいところはどんなピンチになってもポジティブに物事を考えて、常に自分の信念や考え方を曲げないところだ。時としてファラオにビンタすることもある。普通なら即刻、処刑されてしまうだろうがそこは少女漫画、ファラオもそんな強気の「ナイルの娘」キャロルにメロメロなのである。現代にいる時に学んでいた歴史の知識や21世紀の倫理観、知識を持って彼女はピンチを乗り越えていく。
「自分の信念」を持って古代エジプトを強く生きている。
「信念を持つ」や「自分の考えを持つ」ということは、なかなか難しい。
それは「我を通す」とは全く違う。そう言われると違うことは多くの人が知っていることだと思う。では、どのような過程で「自分の考えを持つ」と「我を通す」に分かれてしまうのだろうか? 一つはどれだけ広く深い知識を持っているかではないだろうか? 多くの知見を持っていれば自然と考え方も柔軟になり、いろいろな角度から考えたことを集約して自分の考えにすることができる。一方、広く深く物事を見ることができなければ、考えは狭いものになる。結果、それは自分だけのことを考える結論になり、独りよがりの「我を通した考え」と周りに思われてしまうのではないだろうか。
「自分の考えを持つ」と「我を通す」が違うように「自分の仕事をこなす」と「自分に与えられた仕事だけをこなす」は違うと思う。一人で完結する仕事は世の中にほとんどないのではないだろうか? 例えば映像翻訳の仕事は自分とPCがあれば完結しているように見える。でも実際は映像を制作する人、翻訳を発注する人、受注する人、チェックする人、その作品を観る人など多くの人が関わって一つの作品として成り立っている。つまり一人だけで完結していないのである。それに気が付けば「我を通す(自分だけが満足する翻訳)」と「自分の考えを持つ(自分の考えた翻訳だが、多くの人が共感する翻訳)」の違いは自然と分かっていくのではないだろうか?
そのためにもより多くのものを見て聞いて知って、自分の考えを持つことに力を注いでいきたい。それは翻訳の仕事だけではなく、すべての仕事にも通じることのような気がする。
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Written by 塩崎邦宏
しおさき・くにひろ●日本映像翻訳アカデミー・管理部門。英日映像翻訳科修了生。
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