【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #6
『鬼滅の刃』が生むバリアフリー的“無限”の創造力●村西亜矢子(バリアフリー事業部ディレクター)
『ハイキュー!! TO THE TOP』『おそ松さん』『呪術廻戦』『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』など、この秋も推せるアニメ作品が山ほどある。自宅のハードディスクの容量がいつの間にかなくなっているほどだ。このコラムも10月期アニメ談話といきたいところだが、今の時期に避けては通れない話題がある。そう、『鬼滅の刃』だ。公開17日間で観客動員1180万人、興行収入157億円を突破した(※1)『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が空前絶後の大ヒット。こんな事態になっていようとは!よもやよもやだ!(煉獄杏寿郎風に)(※2)
『鬼滅の刃』の簡単なあらすじは以下のとおりである。
時は大正時代、鬼の始祖・鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)によって家族を惨殺された主人公 竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が鬼と化した妹の禰豆子(ねずこ)を人間に戻す方法を探すため、鬼殺隊(鬼狩りの組織)に入隊し、無惨を追いながらさまざまな鬼と戦っていく。
鬼は身体能力が高く、体の形を変えたり異能を持ったりもする。鬼を殺すには、太陽の光を浴びさせるか、特別な鋼で作られた日輪刀(にちりんとう)で首を切り落とすしかない。そのため、劇中の鬼との戦闘シーンは夜、つまり日光がない時間帯しか描かれない。
ひと言で“夜”といっても、夕闇、闇夜、夜更け、未明、残夜など時間帯や季節によって夜を表す言葉は多く存在する。映像を言葉で伝えるのが音声ガイドの役目だが、「この場面では宵闇が正しいだろうか?」「月に善逸(ぜんいつ)のシルエットが浮かぶ、という文章で位置関係が伝わるのかな?」など、つい原稿制作者の目線で作品を観てしまう(無自覚だから、もはや一種の職業病かもしれない)。
特に山や森で鬼と戦うシーンは、どのような情景描写にすれば目が見えない・見えづらい方にも楽しんでもらえるのかと常に考えをめぐらせている。人間(=鬼殺隊の面々)の外見なら説明しやすいが、鬼となるとどうだろうか。腕が複数生えている鬼、ネズミほどのサイズの極小の鬼、全身に入れ墨模様がある鬼など、多種多様だ。そんな鬼たちをどのように表現できるか、頭の中で次々とアイデアが湧き、思いをはせている。
私にとって『鬼滅の刃』は想像力が豊かになり、創造力がかきたてられる作品である。今後もより多くの人々に映像コンテンツを楽しんでもらえるよう、心を燃やして取り組んでいきたい。
(※1)
鬼滅の刃 公式ツイッター:https://twitter.com/kimetsu_off/status/1323100210361298945
オリコンニュース(2020/11/2付):https://www.oricon.co.jp/news/2175834/
(※2)
煉獄杏寿郎の「煉」は「火」に「東」が正式表記。
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Written by 村西亜矢子
むらにし・あやこ●JVTAバリアフリー事業部ディレクター。MASC×JVTA バリアフリー視聴用音声ガイド&字幕ライター養成講座のアニメ字幕の講義を受け持つ。
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