【コラム】JUICE #60「実は私…」●池田明子
実は私、アクセサリー職人である。
ラジカセで大好きな昭和歌謡のCDを流しながら、ビーズや金具などのパーツを組み合わせていく。まさに至福の時間だ。
日常的にメルマガの原稿を書く仕事とは全く違う思考回路だからいい。「表記を間違ってはいけない、嘘を書いてはいけない」と調べものを重ねる必要はない。綺麗で機能的だったらそれでOK。人に気を遣うこともなく、ただ黙々と無心になれる。それが快適なのだ。日々リサーチや言葉選びに取り組む翻訳者の皆さんなら、きっと分かってくれるだろう。
アクセサリーを作るとき、デザインは一切書かない。というか書けない。なんとなく頭の中でイメージをしたら、いきなり作り始める。あとは仕上がりを見ながら考えていけばいい。「軽さが欲しいのでリング状のメタルパーツを挟みこむ」「全体的に暗めのトーンになってきたから、透明や白、アイボリーなど加えて明るく」といった具合だ。色の組み合わせも楽しい。個人的にポール・スミスのようなマルチカラーが好きなので、沢山の色を使うことも多い。服で着るのは勇気がいる色でも、アクセサリーなら差し色として挑戦することができる。
アクセサリーは基本、身に着けるためのものだ。壁に飾って眺めるのではなく、肌や服の上にのせた時に完成する。だから私は、柄物のスカートに黒やベージュ、グレーといった無地のトップスを合わせて“キャンバス”を作るのが好きだ。そこにネックレスやペンダントで縦のラインをつくる。少し改まった場ならパール、華やかなパーティならスワロフスキー、個性的で高級感を出したいならベネチアンガラスなど、素材によって、同じトップスでもガラリと印象が変わる。同じ服でもいくつもの表情が生まれるのがいい。
こんなふうにアクセサリーを作り続けて、いつの間にか20年以上が経った。ご縁があり、2001年から代々木駅の近くにある「Import Select-shop O-two」さんの店頭に置いていただいている。フランスやイタリアなど海外ブランドのおしゃれな洋服や雑貨が人気のこの店は、今年(2000年)3月3日で開店25周年を迎えた。その歴史に少し寄り添わせていただいたことに感謝している。こんなに長く作り続けることができたのは、ひとえにこのお店のおかげなのだ。ショーケースや、個性的で素敵なワンピースにディスプレイしてもらえるのが嬉しくて有難い。
「Import Select-shop O-two」ブログはこちら
(※現在は木更津に移転)
眠っていたアイテムに息吹を吹き込めるのも、手作りのメリットだ。左利きの友人が使いづらいネックレスは、留め金を逆に付け替えてあげられる。片方失くしたイヤリングは、ネックレスに加工すればいい。デザインに飽きたら、パーツに戻して新たなものに蘇らせる。サイズも好みに調整できるし、気に入ったパーツがあればネックレスとイヤリング、ブレスレットなどをお揃いで作ることもできる。お店や知人から修理を頼まれ、ちょっとした作業で古いものが蘇るとき、とても幸せな気持ちになる
最近はイヤーカフが気に入っている。「耳たぶを挟むと痛くて長く着けられない、緩めると落としてしまう」というイヤリング派の悩みを見事に解消してくれる優れものだ。耳の形状のくぼみにひっかけるデザインなので安定感があるし、重ね付けすることも可能。さらにイヤリング派、ピアス派どちらもできるし、シンプルなデザインが多いので、プレゼントにもいい。今は多くの店舗でさまざまな種類が並んでいるので、ぜひお試しあれ。
※複数購入し、金と銀のコンビで重ね付けするのが好み。ちなみにイヤーカフは作ったことがない。
イヤーカフが流行る背景には、イヤリング派の増加がある。どうやら20代など若い世代にピアス派が減っているらしい。バブルの時代は“つま先が痛いのを我慢してヒールを履くのがおしゃれ”といった風潮があったが、今はそんな無理をするのは好まないという。少し前まで、お店で買えるイヤリングは地金系のシンプルなものか、パール系がほとんどでデザインが限られていた。だから、豊富なデザインを求めてピアスホールを開けた人も多いはず。しかし今は、個性的でおしゃれなデザインでもピアスとイヤリングの両方が置いてあることが多い。かくいう私もイヤリング派だが、この傾向はここ数年顕著で、既製品もデザインの幅が増えたのは嬉しい。私はお店の要望もあり、これまでもイヤリングをメインに作ってきた。イヤーカフも一時的な流行ではなく、今後定着していくのではないかと思っている。
受講生・修了生の皆さんにもきっと、「実は私…」という一面があるだろう。学生時代の部活や専攻分野、職歴、個人的な趣味かもしれない。映像翻訳者にとって、それは立派な得意分野になる。どこでどんな知識が生かせるか分からないのが翻訳という仕事の魅力なのだ。何も知らない人が必死でリサーチをして得た情報も、興味を持って長い間続けてきた経験には敵わない。作品そのものも、得意な人に愛を持って翻訳してもらえるのが一番幸せだし、視聴者も納得するものができるに違いない。だから、翻訳者として自分を売り込むPRシートには、どんな些細なことも書いたほうがいい。何げなく書いたことがディレクターの目に留まることがあるので、どんどんアピールしてほしい。言い続けることが夢の実現に繋がります!
実は私、JVTA昭和歌謡部の部員で、チョコホリックでもある。その話はまた次回。
※記事内の写真のアクセサリーは過去の作品のため、現在店舗にあるものとは異なります。ご了承ください。
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Written by 池田明子
いけだ・あきこ●日本映像翻訳アカデミー・コーポレートコミュニケーション部門所属。English Clock 、英日映像翻訳科を受講後、JVTAスタッフになる。“JVTA昭和歌謡部”のメンバーとして学校内で昭和の歌の魅力を密かに発信中。
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「JUICE」は日々、世界中のコンテンツと対面する日本映像翻訳アカデミーの講師・スタッフがとっておきのトピックをお届けするフリースタイル・コラム。映画・音楽・本・ビデオゲーム・旬の人、etc…。JVTAならではのフレーバーをお楽しみください!
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