Tipping Point Returns Vol.30 Aim for Higher Goals ~高きを仰ぐ~
2025年、皆さんはどのような目標を立てるだろうか。
それは前向きでやる気が湧くようなゴールかもしれない。それでももう一度見直してほしい。私はこう問いたいのだ。「その目標、ちょっと低すぎない?」
これは私自身の猛烈な反省点でもある。ここ数年、仕事上の年間目標にせよ短期目標にせよ、日常生活の目標にせよ、いつの間にか“近いゴール”を設定しがちになっていることに気づいた。例えば「来月までにクローゼットを整理する」とか、「老犬の散歩のコースと時間を短縮する替わりに回数を増やす」とか。(現実的かつ実効性のある目標で、いったい何が悪いの?)と思った人はいるかもしれない。
問題はこうだ。まず、そもそも目標が身近で手軽だという意識から、着手のタイミングを先延ばしにしがちになる。また、目標だけを一点集中で見つめるから全体の調和を見失う。クローゼットは片付いたが古着を詰めたダンボールが部屋の片隅に山積み…。そして最も危険なのは、本当の目的(Aim)を忘れてしまうことだ。老犬の散歩のパターンを変えるのは健康維持と長寿のためだ。必要なのは決めた通りに実行することではなく、日々老犬を見つめ、体調や気候に応じて時間帯や回数を調整することだろう。決めたことを実行するだけという思考停止に陥ると、むしろ老犬の寿命を縮めることになる。
よって正しい目標設定はこうだ。
☞ 「最高に居心地のいい部屋に変える」
☞ 「老犬と一日でも長く、楽しく過ごす」
クローゼットや散歩は数ある手段の一つに過ぎず、目標でもマストと決めつけるものでもない、単なる「To Doリスト」だ。
私のクローゼットや犬の話なんてどうでもいいと思わないでほしい。大事な仕事であっても社会的な活動であっても同じことが言える。今、日本社会に「目標設定とは現実的かつ実行可能なものであるべきだ」という考え方が急激に広がっている。コスパやタイパという価値観がブームを超えて常識になりつつあることも、この潮流上にある現象だと私は見ている。(きっかけはコロナ禍に生じた先行きへの不安感と抑制された行動範囲にあると見ているが、その話は別の機会に譲ろう)
もちろん「手が届く範囲の目標設定」で思い通りの道が開けるならば言うことはない。しかし現実は違う。「頑張っているのに結果が出ない、評価されない」と悩む人は多い。その少なからずの原因が“目標設定の低さ”にあると私は感じている。真面目に生き、仕事に対して真摯に取り組もうとする人ほど、こうした悩みを抱えがちだ。とても悲しく思う。
でも大丈夫だ。問題の解決法はそう難しくはない。目標設定に際し、「Aim for Higher Goals。高きを仰げ」とアドバイスしたい。突飛に聞こえるかもしれないが、これは私の勝手な論ではなく、世界のビジネス研究書などでもよく語られていることだ。
目標を高く設定すると、3つのいいことがある。
まず、それを考えるとワクワクして気持ちがいい。手を動かしていなくても、そのための作業をしていない時でも、達成して周囲に笑顔でがんばったねと言われる自分を想像すればエネルギーが湧き、前向きになれる。
2つ目は、スタートが上手くいく。近くの公園に出かけるのと海外旅行に出かけるのを比べたらよくわかる。前者では何時でも大丈夫、何かあれば家に戻ればいいという油断から、意外に大きな失敗をすることがある。待ち合わせしていた友達が10分の遅刻に驚くほど腹を立てたとか、家の鍵をかけ忘れたとか。一方、後者では念入りに準備をし、健康管理にも気遣い、当然のことながら時間に対して正確に動く。だから気持ちよく進める。
3つ目は、これが一番大事なことだが、失敗が気にならなくなる。むしろ失敗やつまずきをプラスにとらえるマインドが醸成される。目標が遠ければ、到達するルートは様々だ。やってみて上手くいかなくても(この道は行き止まりだな。別の道を行こう)となる。しかも、上司や周囲は高いゴールをしっかり見据えて進む人の失敗を咎めない。「しょうがないなぁ。次がんばろう」で済むか、ケースによっては「失敗は成功の女神だね」などと評価が上がることさえある。
いかがだろうか。共感できる点がもしあったら、2025年の目標を高めに描き直してみてはどうだろう。Aim for Higher Goals。高きを仰ぐ。そうすることで、一歩目の踏み出し方から何かが変わるはずだ。
このコラムを読んでいただいた皆さんの2025年が実り多きものになりますよう、心から願い、応援しています。どうぞ良いお年をお迎えください。(了)
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Tipping Point Returns by 新楽直樹(JVTAグループ代表)
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。
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