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Tipping Point Returns Vol.9 働いていない時こそプロであれ! ~俳優、西田敏行の至言~

Tipping Point Returns Vol.9   働いていない時こそプロであれ! ~俳優、西田敏行の至言~

仕事を受注してパソコンに向かっている時だけがプロの映像翻訳者なのか。それは違う。友達と遊んでいる時も、眠っている時であっても、プロはプロらしくあるべきだ。
 

その道理からすれば、プロデビューとは「仕事を受注した瞬間」ではない。職業訓練を終えたら、その時こそがプロデビューの瞬間である。すぐに仕事が控えているか否かは関係がない。まずは自らがプロであることを自覚し、外に向かって宣言することが先なのだ。

 

プロ宣言をした人だから、顧客は仕事を依頼する。当たり前の話なのに間違えている人は多い。「多少仕事をこなしてからじゃないとプロだなんて恥ずかしくて名乗れないよ」と言う人は、謙虚で良識のある人ではない。プロじゃなくても顧客が付くと勘違いしている人か、仕事が上手くいかなかった時に「まだプロじゃないから」という言い訳を用意している人。いずれにしても前途多難だ。

 
私なら、たとえ受注経験がなくても目をキラキラさせながら「自分はプロ!」と名乗る人に出会った時、「お宝に出会えたかも!」と胸を躍らせる――。

 
<フリーランスとしての働き方>をテーマにした授業で、私は24年間そんな話をしてきた。「仕事をしていない時こそプロであれ! 日頃の振る舞いや言動に、プロとしての信頼を勝ち取る好機がある」。自分自身がそう信じているからそのように教えてきた。プロデビューのタイミングに限った話ではない。その道10年、20年選手にも当てはまると思う。そしてそれこそがフリーランサーにとっての‘営業の極意’だと考えている。

 
先日、この思いの正しさを再確認するシーンに出会った。あるエンタメ情報番組で新作映画『任侠学園』を紹介しており、主演の西島秀俊と西田敏行、伊藤淳史の3人が登場してインタビューに応じていたのだ。トークの話題はベテラン西田の俳優人生へと移っていく。そこで西田はこんなことを語った。

 
「(要約) 俳優やってればね、辛い、苦しいことはあるよ、いや、辛くて苦しいことばっかりと言ってもいい。でもそう思い込んだら終わり。自分の中の不安は外に出ちゃうからね。それは仕事の現場だけのことじゃないよ。まだ俺が売れてない頃、一つの仕事が終わって次のオファーがまだないなんてことがよくあった。そんな時期はほんとうに不安だよ。もう食えなくなるんじゃないかって。なんで役者になっちゃったんだろうって。
でもね、そんな時こそ自分にこう言い聞かせた。『役者でよかった。役者は楽しいなぁ、楽しい、楽しい』って。毎日、いつでもそう思うようにした。そうしていたらね、仕事が自然に舞い込んで来るんだよ。そんな経験を何度もした。若い俳優さんには伝えたいなぁ」。

 
神妙な面持ちで聞き入っていた伊藤は、「西田さんからこんな話を聞けてほんとうによかった。仕事がない時こそ役者であることを楽しめ、と。だから次の仕事は生まれるんですね。ありがとうございました」。新作の宣伝は何処へやら(笑)。でも、このシーンを見た私にも伊藤同様こみ上げるものがあった。

 
フリーランスのプロフェッショナルが街中を闊歩する社会はきっと豊かで夢のある社会だろう。これからは毎日、そう考えて過ごそうと思う。

 
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Tipping Point~My Favorite Movies~ by 新楽直樹(JVTAグループ代表)
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。
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