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「これがイチ押し、アメリカン・ドラマ」 第18回 “The 100”

「これがイチ押し、アメリカン・ドラマ」 第18回 “The 100”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第18回“The 100”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社にその道の才人たちが集結し、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

これでもSF?
“The 100”には異星人、宇宙戦艦、レーザー銃、ワープ、テレポーテーションなどは登場しない。これでもSF? いや、それどころか、本作は“Battlestar Galactica”以降で最もエキサイティングなSci-fiアクションドラマだ!
 

“The 100”とは?
“The 100”とは、放射能に汚染された地球に送りこまれる100人の未成年受刑者を意味する。
なぜそんな事態が起こったのか。

 

今から97年前、大規模な核戦争により人類はほぼ全滅した。だが12の宇宙ステーションにいた約2400人の老若男女は生き残った。彼らはステーションをひとつに連結して“Ark”と呼び、統治者ジャハの下で3世代にわたり生存してきた。食糧や医薬品などあらゆる物資が限られている“Ark”内の規律は極めて厳格で、18歳以上の犯罪者はすべて極刑の対象となり、宇宙に放出される。

 

今、“Ark”の生命維持装置に不具合が生じている。このままでは半年で生存者全員が死亡するため、人口を減らすために段階的処刑を始めなければならない。ジャハは窮余の一策として、“Ark”に収容されている18歳未満の囚人100人を、小型宇宙船に乗せて地球に送りこんだ。彼らの使命は地球が居住可能かどうか調査を行うこと。つまり、“The 100”は’消耗品’であると同時に人類最後の希望なのだ!
 

魅惑の若手アクターたち

この難局に挑むのが、医療の知識を持つ女囚クラーク・グリフィン(イライザ・テイラー)、クラークと魅かれ合うクールガイのフィン(トーマス・マクドネル)、化学に強いジャスパー、メカ・コンピューターおたくのモンティ、それに怖いもの知らずのオクタヴィアだ。だがオクタヴィアの実兄ベラミー(ボブ・モーリー)とその右腕の凶悪犯マーフィーを中心とした大多数は、“Ark”の幹部が決めた使命など意に介さず、クラークたちと対峙する。
 

これらの若手アクターは日本では無名だがいずれも実力派だ。なかでも、憎み合いながらも人として、リーダーとして、日々成長していくクラークとベラミーを演じるイライザ・テイラーとボブ・モーリーの存在感は群を抜く(二人ともオーストラリア出身で共演経験もある)。

 

脇を固めるベテラン俳優も適材適所だ。カリスマ性のある“Ark”の統治者ジャハを演じるのは、“Grey’s Anatomy”の天才外科医バーク役で名高いイザイア・ワシントン。クラークの母親で医療責任者アビー・グリフィン役が“Person of Interest”のペイジ・ターコー。さらに、“Lost”のヘンリー・イアン・キュージックが軍隊出身で“Ark”のナンバー2である冷酷非情なリーダー、ケインを演じている。
 

高いドラマ性とWatchability
“The 100”のメンバーは放射能汚染、酸性霧、正体不明の怪物たちに遭遇する。また高度な組織力と戦闘能力を持つ先住民“Grounders”、凶暴な人喰い種族“Leapers”、さらに秘密のベールに閉ざされたウェザー軍事基地に住む”Mountain Men”との戦いを余儀なくされるのだ。

 

リーダーとしてクラークは、自らの判断に対してその正当性を問われる。
「味方を救うためなら敵を何百人も殺していいのか?」
「味方を100人救うためなら10人を犠牲にできるのか?」
殺すのはゾンビではなく生身の人間、これはサンデル教授の「ハーバード白熱教室」が必要なくらい重いテーマだ。

 

脚本はシーズン1の後半からステレオタイプのキャラクター造形が影をひそめ、がぜん面白くなる。極限状況の中で登場人物の人間性がむき出しにされ、ヒーローがアンチヒーローに、アンチヒーローがヒーローに変わるのだ。宿敵“Grounders”との関係も単なる’善’対’悪’の構図にとどまらず、双方の心理描写に手抜きがないので、ストーリー展開に説得力がある。

 

“Grounders”の戦士リンカーンとオクタヴィアの恋は、「ロミオとジュリエット」、「ウェストサイド・ストーリー」的設定だが甘える余地はない。クラークとフィンの行く末には、涙なしでは見られない感動のエピソードが待っている。どちらも取ってつけたようなロマンスではなく純愛物語として成立していて、作品に深みと彩りを与えている。

 

見どころ満載の本作だが、真骨頂は迫真の人間ドラマが生み出す“watchability”(観始めたらやめられない度)の高さにある。決してB級SFドラマっぽい体裁に騙されてはいけない。
最後に、イライザ・テイラーが本作で“E! Online; Best Kiss Award”を受賞したことをつけ加えておこう(意外な相手は観てのお楽しみ!)。
 

製作はCBSとWarnerが出資しているCW。民放としてはマイナーでティーンエイジャー向けドラマ中心だが、最近は本作に加えて、“Arrow”、“The Flash”など面白ドラマを連発していて元気がいい。
“The 100”は本国ではシーズン3を放映中で、シーズン4の製作も決まった(日本ではシーズン2までNetflixかDVDで観られる)。
これをアメリカのティーンエイジャーだけに見せておくのはもったいないぞ!

 

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