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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第24回 「発表!Best of the Best Drama 2000-2015」 Part III

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第24回 「発表!Best of the Best Drama 2000-2015」 Part III

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第24回「発表!Best of the Best Drama 2000-2015」 Part III
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

ドラマは「楽しんだ者勝ち」!
ドラマは映画に対して「時間の制約がない」という最大の強みがあります。人気があれば何年でも続けることが可能だからです。しかも視聴者の顔色をうかがいながらキャラクターの深掘り・変更・追加や、ストーリーの深化・横展開が自由にできるので、視聴者が「ハマる」という状況を創り出せます。人気ドラマ・人気キャラはスピンオフして姉妹番組にするという離れ業も、今では珍しくありません。一方で常にライバル番組との厳しい競争にさらされていて、人気がなければ数週間で打ち切られます。とにかく、面白い作品だけが勝ち残るのです。
 

人気ドラマは複数の脚本家がストーリーを次々と書き加えて行くので、様々なアイディアが盛り込まれる反面、「細部に矛盾が出る」、「キャラクターの言動が首尾一貫しない」などの欠点がありがちです。これは副作用なので、ファンに深く突っ込まれないようにスピード感でごまかします。俳優とギャラの折り合いがつかず、人気キャラが突然死亡・消失するケースも後を絶ちません。また、引っ張り過ぎてファイナルシーズンでコケる残念な作品も散見されます。引き際も肝心ですね。
 

従って、作品に完成度や芸術性を求める人は、観る時点でエンディングが決まっている映画を好むように思います。また、「思い出」として残るのはやはり劇場で観た映画でしょう。
尚、英語のリスニング強化には、同じ設定・登場人物を繰り返すドラマの方が、ストレスなく物語に入っていけます。民放(NBC/CBS/ABC/FOXなど)のドラマなら品のない言葉が使用されないので安心です。
 

「取り敢えず面白ければ多少の欠点には目をつぶる」という筆者のようなタイプの人は、映画からドラマにシフトしていく傾向があるようです。ドラマは「四の五の言わず楽しんだ者勝ち」です!
この先アメリカン・ドラマを取り巻く環境がどう変化し、どんな作品が生まれてくるのか興味が尽きません。現在のドラマ黄金時代が末永く続くことを祈りながら、また1話、もう1話と観る毎日です(「こんな生活を続けていていいのか?」とよく自問するのですが、「ま、いいか」と自答します)。
 
 

過去15年間のジャンル別ベスト3&総合トップテンを選ぶ!
それでは、残り3ジャンル<Crime>、<Young Adult>、<Human Drama>のベスト3です!
 

<Crime>
ひと言コメント:ここが最激戦区、“The Americans”も入れたかった!
 

6 crime 文字入り

第1位:“Sons of Anarchy” (2008-2014)
“Sons of Anarchy”とは、表向きはカリフォルニアにあるアイルランド系白人によるバイククラブだが、本業は武器の密輸販売。対立するヒスパニック・ギャング、黒人ギャング、中国人ギャング、供給元のIRA、さらに警察、FBI、地検を相手に交渉と暴力、嘘と脅し、そして起死回生の逆転劇がさく裂する。緻密な脚本に支えられた迫真の知的バイオレンスドラマだ。
*第5回参照

 

第2位:“Breaking Bad” (2008-2013)
余命半年と宣言された高校の化学の教師(ブライアン・クランストン)が、家族にひと財産残すために、麻薬ディーラーの学生(アーロン・ポール)と組んで最高純度のメタンフェタミン(覚醒剤)を密造する。比類をみないサスペンスで緊張感が高まる中で、破滅に向かってひた走る男たちの友情と裏切りが壮絶に描かれる。米国で「史上最高のテレビドラマ」と評価された至高の一品。

 

第3位:“The Blacklist” (2013-present)
世紀の犯罪王レイモンド・レディントン(ジェームズ・スペイダー)とFBIの新人捜査官リズ・キーン(メーガン・ブーン)が、「存在さえ知られていない凶悪犯やテロリスト」をマンハントして行く極上の犯罪アクションドラマ。魅力的な悪党たち、暴かれるリズの出生の秘密、そしてオーラをまとうスペイダーの演技と見どころ満載だ。レディントンはハンニバル・レクター以来最高のアンチヒーローとなった!
*第11回参照
*9月からスピオンオフの“The Black List: Redemption”がスタート!

 

(ノミネート作品)
 
“The Americans”、“Better Call Saul”、“The Blacklist”、“Boardwalk Empire”、“Breaking Bad”、“Homeland”、“How to Get Away with Murder”、“Mr. Robot”、“OZ”、“POWER”、“PREACHER”、“Prison Break”、“Scandal”“Sons of Anarchy”
*太字は本コラムで紹介した作品

 

<Young Adult>
ひと言コメント:若き才能が縦横無尽に活躍するこのジャンルは、大人にももっと注目されていいはずだ。
 

7 young adult 文字入り

第1位:“Glee” (2009-2015)
アメリカン・ショービジネスの底力をこれでもかと見せつける学園ミュージカル・コメディ。新旧取り混ぜた選曲の妙、豪華なゲスト、才能あふれる若手アクターたちのパフォーマンスが最大の魅力だ。オリジナリティあふれるエンターテインメントに、ゲイや身障者の差別問題まで踏み込む製作者の高い志が吹き込まれた、社会性にも富んだ傑作。
 

第2位:“Friday Night Lights” (2006-2011)
テキサスの寂れた町にあるディラン高校アメフト部のコーチ、選手、家族それぞれの人生を映し出す青春ドラマ。不安と挫折の中で将来を不器用に模索する若者たちがヴィヴィッドに描かれた本作は、’04年の映画版よりずっと深みがある。最終回でコーチのタイラー(カイル・チャンドラー)が選手に贈った言葉、“Clear eyes, full hearts, can’t lose!” は全米で感動を呼んだ。
 

第3位:“The 100” (2014-present)
はるか昔、核戦争で地球はほぼ死滅し、生き残ったのは宇宙ステーションの住民のみ。生命維持装置の不具合で全滅の危機にさらされる人類は、生存可能調査のために100人の未成年受刑者を地球へ送り込んだ。人類最後の希望となった“The 100”は、放射能汚染に苦しみ、さらに高度な戦闘能力を持つ先住民“Grounders”から襲撃される!
*第18回参照

 

(ノミネート作品)
“The 100”、“Friday Night Lights”、“Glee”、 “Party of Five”、“That ‘70s Show”、“True Blood”、“Veronica Mars”
 

<Human Drama>
ひと言コメント:このジャンルにおける“The West Wing”は、<Legal>における“Law & Order”の存在に匹敵する。
 

8 human drama 文字入り

第1位:“The West Wing” (1999-2006)
マーティン・シーンが気骨あるアメリカ合衆国大統領バートレットを演じた、圧倒的な臨場感を持つ政治ドラマの最高峰。才人アーロン・ソーキンの脚本と最優秀助演賞の6名を含め、エミー賞の通算最多受賞記録を持つ。’05年には、アラン・アルダとジミー・スミッツが演じる次期大統領候補によるディベートをライブで放送した。邦題は『ザ・ホワイトハウス』。
 

第2位:“ER” (1994-2009)
NBCの看板番組として15シーズン君臨し、ジョージ・クルーニーなど多くのスターを生んだ、シカゴを舞台にした医療ドラマの決定打。’94年9月18日午後10時、本作と“Chicago Hope”(ライバル局のCBSによるやはりシカゴを舞台とした病院もの)が同時にスタート。この頂上対決は、キャラクターの魅力とスピード感で勝る本作が圧勝した。
 

第3位:“Mad Men” (2007-2015)
‘黄金の’60年代’のNY。生き馬の目を抜く広告業界で、権力争いに明け暮れる身勝手な男たちと、男を利用してのし上がるしたたかな女たち。陰謀、欲望、欺瞞が渦巻く世界で、孤高の男ドン・ドレイパー(ジョン・ハム)は成功への階段を着実に上っていくが…。3年連続でエミー賞&ゴールデングローブ賞の最優秀作品賞に輝いたヴィンテージドラマ。
  

(ノミネート作品)
“Chicago Fire”、“Chicago Hope”、“Chicago Med”、“Early Edition”、“Empire”、“ER”、“Grey’s Anatomy”、“HOUSE M.D.”、“House of Cards”、“Jericho”、“Mad Men”、“Necessary Roughness”、 “The Pretender”、“The West Wing”
 

ベスト3の絞りこみ作業はまさに苦渋の選択で、泣く泣く外した作品には思わず手を合わせてしまいました。ノミネート作品はいずれもアメリカ駐在時代から現在まで、筆者を心から楽しませてくれた作品なので、皆さんのドラマ選びの参考にしていただけると幸いです。
 

いよいよ、「総合トップテン」の発表です!

◆第2部 「発表!総合トップテン」

walking dead 01

第1位:“The Walking Dead”
 
第2位:“Sons of Anarchy”
 
第3位:“Breaking Bad”
 
第4位:“MI-5”(英)
 
第5位:“Law & Order”

 

第6位:“The West Wing”
第7位:“N.Y.P.D. Blue”
第8位:“The Big Bang Theory”
第9位:“24”
第10位:“Glee”

 

ノミネート総数98作品(Part Iで92作品と書きましたが6作品追加)の頂点に立ったのは、トップファイブの中でもよりエンターテインメント性が高く、視聴者のレンジが広く、中毒性が強く、そして異次元の緊迫感をもつ “The Walking Dead”。4月に終了したシーズン6のラストシーン15分は、心臓が飛び出すかと思いました。
 

結果はいかにも男が選んだトップテンという印象ですが、まあ、遊びなのでご勘弁を。女性のドラマファン、JVTAの受講生・卒業生によるトップテンも知りたいですね。
 

<今月のおまけ> 「ベスト・オブ・クール・ムービー・ソングズ」 ⑤
Title: “Now and Forever”
Artist: Richard Marx
Movie: “Getaway” (1994)


映画の出来はS・マックイーンのオリジナルに遠く及ばないが、このバラードは心に沁み入る。

 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 
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