これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第38回 “TIMELESS”「Sci-Fiドラマ4連発!Part 1」
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第38回 “TIMELESS”「Sci-Fiドラマ4連発!Part 1」
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
アメリカの歴史を遡る、タイムトラベラーたちの大冒険!
今回から、タイプの異なるSci-Fiドラマ を4回連続で紹介する。(拍手!)
“TIMELESS”は、時空を超えた壮大な「Sci-Fi歴史アクションドラマ」だ。タイムトラベラー3人が、タイムマシンに乗ってアメリカの歴史を遡り、史実を改変しようとたくらむ別のタイムトラベラーを追跡する!
“Protect the past, save the future”
―1937年5月6日、米国ニュージャージー州
ドイツの大型飛行船ヒンデンブルグ号の爆発事故で36名が死亡。
―サンフランシスコ(現在)
気鋭の歴史学教授ルーシー・プレストン(アビゲイル・スペンサー)は、DHS(国土安全保障省)から緊急の呼び出しを受ける。連れて行かれたのは謎の巨大企業メーソン社の本社で、ルーシーはそこで驚愕の事実を知る。同社はテロリスト・グループに急襲され、CEOが誘拐されたうえに、最高機密の実験機が盗まれたという。その実験機とは、何と“Mothership”と呼ばれる実用可能なタイムマシンだった!
主犯格は元政府機関のエージェント、ガルシア・フリン(ゴラン・ヴィシュニック)と判明。フリンは自らの家族殺しの容疑者でもあった。“Mothership”で過去に戻り、アメリカの歴史を変えようとしているらしい。
ルーシーに加えて、デルタフォース(陸軍特殊部隊)のワイアット・ローガン(マット・ランター)、メーソン社の科学者ルーファス・カーリン(マルコム・バレット)が招集されていた。メーソン社にはもう1台のタイムマシン、プロトタイプの“Lifeboat”がある。“Mothership” と“Lifeboat”はCPUがリンクしているため、“Mothership”の行く先をトラッキングすることができる。
3人の使命は“Lifeboat”で“Mothership”を追い、フリンの企てを阻止すること。史実を守り、不変の未来を確保するのだ!
その頃、“Mothership”は1937年5月6日のニュージャージーにタイムトラベルをしていた。
“Rittenhouse”
ルーシー、ワイアット、ルーファスは、フリンを追って数々の歴史的イベントを目撃することになるが、その過程で“Rittenhouse”という名前に遭遇する。“Rittenhouse”は綿々と続く歴史を持つ秘密結社だった。だが3人は、“Rittenhouse”の役割、フリンとの関係、歴史改変の目的が何なのか、皆目つかめない。
史上最強の脇役陣は、歴史上の重要人物たち!
アビゲイル・スペンサーは、“SUITS”の主人公ハーヴィーの元恋人スコティ役が記憶に残る。チャーミングで頭脳明晰、芯の強いルーシーに適役だ。ワイアット役には“90210”のマット・ランター、ルーファス役のマルコム・バレットは初の大役。
このトリオは少し線が細いが、エピソードが進むに連れてケミストリーが高まっていく。
ゴラン・ヴィシュニックは、“ER”の医師コバッチュ役でブレークした元イケメン俳優で、影のある悪役フリンにうまくハマった。
そして、各エピソードで重要な役割を担うのが、歴史上の重要人物たち。デイビー・クロケット、グレート・フーディニ、アル・カポネとエリオット・ネス、リンドバーグ、ボニーとクライド、ジェシー・ジェイムズ、ヘミングウェイ、イアン・フレミングなどで、彼らはアメリカン・ドラマ史上最強の脇役陣だ!
縦横無尽、見どころ満載のストーリー!
ストーリーはヒンデンブルグ号爆発を皮切りに、リンカーン大統領暗殺、アラモの戦い、ウォーターゲート事件、アポロ13号の月面着陸、第二次世界大戦下のドイツなど、史実を巧みに取り入れながら縦横無尽に展開する。当初の単純なマンハントから、“Rittenhouse”を絡めた複雑なプロットへの変化も鮮やかだ。
複数のタイムマシンという設定も効いている。過去と現在を自由自在に行き来する2台のマシンの存在が、作品全体にスピード感を与えた。(ただし、このタイムマシンは既に搭乗者が存在する時代には戻れない)
さらに、ルーシーとワイアットのロマンス、黒人ゆえに過去の時代で人種差別を受けるルーファスの苦悩、バタフライエフェクトの問題(少しでも過去を変えると現在が大きく変わってしまう)、歴史を守ることへの倫理的疑問(例えば、目前で起こる大統領の暗殺を黙認できるのか)など、見どころ・考えどころが満載だ。
時代設定が一話ごとに異なるので、米国史を学びながらじっくり楽しむ手もあるし、ツイストの効いたシーズン・フィナーレまで全16話をイッキ観(“binge watching”)してもいい。
タイムトラベルものといえば、感動のヒューマンドラマ“Quantum Leap”(タイムマシンが登場しないのに「タイムマシーンにお願い」という最悪の邦題を頂戴した)と、スティーブン・キング原作の“11.22.63”(本ブログ第25回参照)が必見。映画では、『タイム・アフター・タイム』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『ある日どこかで』の3本がおすすめ。
製作は民放大手のNBCで、アメリカでは来春にシーズン2が放映開始だ。日本ではAXNがシーズン1を放送済み。
残る3作品も傑作ぞろいなので、お楽しみに。
<今月のおまけ> 「ベスト・オブ・クール・ムービー・ソングズ」⑰
Title: “Best That You Can Do” (“Arthur’s Theme”)
Artist: Christopher Cross
Movie: “Arthur” (1981)
クリスマスらしい一曲をどうぞ。
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
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